劇場公開日 2025年6月20日

「美しい画角、陰鬱とした雰囲気」ルノワール ゑゐさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 美しい画角、陰鬱とした雰囲気

2025年6月26日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

斬新

好奇心に満ちた子供視点の大人の世界の陰鬱さを描いている作品。案外気付く子は気付くし見てるし聞いているし、簡単に一線なんていつでも越えられる。

作中にずっと漂う淡い陰鬱さと何かが起こってもおかしくないぼんやりとした物々しさが時折、下手なホラーよりもよっぽど怖かった。
子供の好奇心とは恐ろしいものである。けれども自分の幼少期を顧みてみると、実家の親戚の集まりでは、確かに寝静まった後大人たちが話す会話が気になったりしたものだったし、成長してみると親戚の叔母さんからしたらあの時の自分の言動なんて溜まったもんじゃなかっただろうな、などとの回想をすることが難くはない。
しかし映像で観ると余りにもグロテスクでなんだか虚しくなった。腹の裏にどす黒いものを抱えた大人たちの情けない姿、あまりに虚しすぎる。だけども、決して大人の世界も悪いことばっかりじゃ無いんだけどな。
物語性を求めすぎかもしれないが、もう少し何らかの救いよう、落とし所があって欲しかった。
まあ、それはフキが成長しながらいずれ知っていくということだろうか。

印象派の画家ルノワールの名がタイトルに使われている。作中で出てくる代表的な肖像画「イレーヌ」。美しき絵画であるが、このモデルとなった家族も本人もこの作品を気に入らず、往年彼女の手元に来るも競売に掛けたという皮肉なエピソードが過る。あんなに美しい絵なのに、切ない。皮肉オブ皮肉。この世は皮肉だらけだよ。

画角や写し方は好みだった。光と影の使い方が美しく、少女フキの朴訥とした雰囲気と相まって記憶に残る絵が多く、印象的だった。

ゑゐ