「中途半端」ルノワール TSアラヨットさんの映画レビュー(感想・評価)
中途半端
期待し過ぎたわけではない。カンヌ出品だけど賞を取ってはいない時点で、「まあ、だいたいこんな映画やろな」と、ある程度出来の良し悪しは想像していた。何より、今誰より注目している河合優実が出演して、リリーさんも出ているということで、めちゃ良いということはなくても料金の価値はあるやろうと判断して鑑賞。
観た感想はまさにその通りという感じ。他の方も投稿しているように、何が描きたいのかイマイチ焦点が絞れておらず、いろんなエピソードを次から次から流して、数うちゃ当たる的なショートフィルムの連打みたい。1本の映画としてはなんとも中途半端。主役の女の子の演技は悪くないが、いかんせん脚本が弱く、観ている方が感情移入できるだけの魅力に欠ける。明確な個性がなく、メインテーマ(?)である(と思ってた)「父親が亡くなることを経験して大人へ成長すること」もあまり描かれていない印象で、80年代にこだわる理由も不明。結局すべて雰囲気だけ、そこそこきれいな映像だけで乗り切っただけみたいな。いかにもカンヌでは好まれそうな題材とは思うが、やはりそれだけで賞を取れるほど甘くない。
ただ、ショートフィルム連打の中で白眉だったのは河合優実演じる未亡人のエピソード。ほぼひとり語りしているだけなのに映像が浮かんで、ここだけ別の作品みたいな感じで強烈に印象に残り、演者の格の違いを感じた。そもそもこのエピソードは丸ごとカットしてもストーリーに影響ないのだが、これがなかったら星ひとつ減ってると思う。
深堀りや考察好きの映画ファンなら好意的に、「あのシーンにはこういう意味がある」とか「このシーンが良かった」といろんな感想を出すと思うし、それは映画の楽しみ方のひとつですが、まずその前に「ああ、いい映画だった。見ごたえがあった」と思えることが第一かなと。

