「戦争写真家・記者のリーを語る映画」リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争写真家・記者のリーを語る映画
ケイト・ウィンスレットは出演したどんな映画でも強靭な挑戦をしているように思う。この映画でも同様だ。リーとウィンスレットは重なって見える。モデル時代のリー、錚々たるアーティスト達のミューズとしてのリー、この煌びやかな二つの時代をバッサリと切り捨て報道写真家のリーのみ!としたウィンスレットプロデューサーの決断が潔い。同じくリーもテキパキと意見を言う、人を見る目があり賢く知的、社交的で親友を大事にし、自分の体型に無頓着。自分は一体何者か、何をしたらいいのか常に考えていた20代から30代。悩んで決めたら一直線、戦後は別の道を歩む自由と前を見る生き方に共感し憧れる。
戦場カメラマンになってからの前半は、女性ゆえの枷があり撮影対象は女性パイロットや女性の宿舎や病院内などに限られてしまう。でも彼女の視線と被写体への共感は彼女自身の痛みと優しさから来ることが撮影するときの表情と写真から伝わる。下着を手で洗い室内に干すしかない宿舎。病院では手術中に停電し持っていた手持ちランプでドクターの手元を灯し、顔中が包帯の若い傷病兵の目を美しいと誉め頼まれて撮影する。市内では兵士が女性をレイプしようとしている。ナイフを突きつけ男を追い出し女性にナイフを渡す。恐ろしいがまだ目に見える戦争の現実。それがやつれきった親友のソランジュ(マリオン・コティヤール)に彼女のパリの邸宅(見るも無残な状態)で再会して話を聞き、リーは変わった。「みんなが消えてしまう」「列車はどこかへ行くが戻ってこない」「そんなに沢山の人間が行方不明とはどういうことか」見えない、報道されない、知らされていないことがある、これがリーをまた動かす。
カメラマン同士として知り合ったLIFE誌のディヴィッド・シャーマンと共に戦場で多くの写真をものにした彼女はドイツへ向かう。ミュンヒェン近郊のダッハウ強制収容所や線路に止まったままの列車の中で彼らが見たもの。それは暴力そのもの、見えなくされていた、ないものとされていた暴力の事実。リーは自分が蓋をしてきた過去と同一のことを感じたに違いない。ミュンヒェン市内一等地のプリンツレゲンテン通りに車で来た二人はヒトラーのアパートに入る。ヒトラーは愛人のエヴァ・ブラウンと共に「本部」のベルリンに居る。名前の頭文字A.H.を彫らせたトレーなどが置いてある客間を通り奥のバスルームへ。そこでバスタブに入った自分をディヴィッドに撮らせた写真がかの有名な写真だ。
戦争終結、連合軍勝利に終わった戦争。ほっとして浮かれた空気の中だからこそ、見えなくされていた暴力の記録を雑誌に載せて見てもらわなければ意味がない、自分が受けた傷と同じことになる。過去に受けた暴力に沈黙を強いられてきた自分が、戦争の暴力を写真で明らかにしなければ自分は一体何をしてきたのか?
リーにインタビューするジャーナリスト(ジョシュ・オコナー)とのシーンを最初、途中で何度か、そして最後と置いた構成と脚本は非常に良かった。個人的にジョシュが大好きなので嬉しかったし、ラストはショックと驚きと共に愛と赦しを感じた。
今も世界中で戦争が続いている。壁を作り土地を奪い昔からその地に住んでいた人々を追い出し殺すことしか頭にない。力あると見える側が実は常に負けてきた歴史を私たちはなぜ忘れるのだろう?
記者との対話の場面はすっかり騙されていました。
亡き母の写真との対話だったんですね。
ふと気づけば今日は母の日。最後の場面で息子さんの想いを感じることができました。
おはようございます!
昨晩、コメントを頂いており有難うございます。(スイマセン、スマホに通知が来なかったのです。あ、言い訳です。)
今作は、イロイロと考えさせられつつ、ケイト・ウィンスレット姉さんの心意気が、私は沁みました。勿論、リーさんも。
私、本日、苦手な列車に乗って(人混みが大嫌い)名古屋のミニシアターの殿堂で「クイア」を見て来ます。ムッチャ、楽しみです。音楽も良さそうだし。ではでは。
talismanさん
私も初日、映画解説トーク付きの夜の部を観てきました。普段はここまでしないのですが、テーマにとても興味があったので、深堀りしたくて…
彼女のキャラクターもパワフルでしたし、ストーリーも一瞬たりとも緩む時間がなく惹き込まれ、またラストのオチも意外の最上級!
この映画がアメリカ公開時にはかなり冷遇されたという解説を聞き、ハリウッドですらまだ女性が撮る映画に対する差別的扱いがまかり通っているのだなと知らされました
自分のレビューを書きたくても情報量が多くて、後々になりそうです
とにかくWWⅡを新たな視点で描いた傑作だと思いました
共感&コメントありがとうございます。
シビルウォーでは無かった女性兵士の洗濯の様子とかも興味深いですね。ドイツ兵士と情を通じた女性への虐待やパリ解放の裏のレイプとか、女性の受難描写もきめ細かいと思いました。
クィアは気になってるんですが近くの劇場やってないのよね。Vogueってこんな歴史ある雑誌なのには驚いた!
リー・ミラーさん本人キレイだから検索してみて!
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