「主人公は無痛でも見ている側は大いに痛い」Mr.ノボカイン 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
主人公は無痛でも見ている側は大いに痛い
生まれつき無痛な男がそれを武器に恋人を救うため悪漢どもに挑んでいく。従って、僕ら観客は彼が大火傷を負ったり、腕を骨折する様子を心で悲鳴を上げながら傍観することになる。ここで大事なのは、主人公が全然痛くないからと言って、見ている側は傍観者とはいえ大いに痛いということ。想像力とはそういうものなのだ。
劇中には頻繁にサバイバルゲームの映像が出てくる。プレーヤーたちはゲーム上でキャラクターが傷を負っても構わずゲームを続けていくわけだが、もしも、ゲームに登場するキャラクターが生身の人間だったら、どうする?どう感じる?というのが、画期的な無痛映画『Mr.ノボカイン』の肝だとも感じた。重ねてこれは想像力にまつわる映画なのだ。
同時に、主人公にとって無痛は唯一無二の武器なのだが、決して無敵ではなく、それを行使して目的を達成する勇気を一種のラブストーリーに落とし込んだところが、本作の魅力。主演のジャック・クエイドはデニス・クエイドとメグ・ライアンを両親に持つ2世俳優。そんな血筋に関係なく、過剰に一生懸命なところがこの役にはぴったりで、さらなる活躍を期待したいところだ。
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