「人生の終盤において、自分の幸せを選び取ること」秋が来るとき ほりもぐさんの映画レビュー(感想・評価)
人生の終盤において、自分の幸せを選び取ること
さまざまなことを考えた映画でしたが、一晩寝ると、身体の中に染み込んで消えていくような感覚がありました。
主人公ミシェルの秘密が守られ、人生が穏やかに閉じられたせいかもしれません。
今作は、親子や近しい間柄での葛藤や理解、そして人間の多面性を描いたものだと思いました。
真実はわからないし、それぞれに言えないこともあるわけですが、登場人物ひとりひとりが矛盾や後悔を抱えながら生きている姿には、ブルゴーニュの豊かな実りに例えられるような、人の営みのたくましさを感じました。
誰もが多様な面を持ち合わせていること、ひとりの中でもさまざまに気持ちが揺れ動く様子など、繊細に丁寧に描かれていて素敵でした。
この映画は、真実とは何か? 正しさとは何か?と深く追求しませんし(警察でさえ!)、答えも提示しません。
真実がすべてを解決するわけではなく、むしろ真実は大切な誰かを傷つたり、自分自身の豊かな生活を損なう可能性もあるのだ、と表しています。
これは、人生の終盤においても「自分の幸せは自分で収穫するのだ」という能動的なメッセージなのではないでしょうか。
私の心に残ったのは、死んだはずのヴァレリーが幻のように母ミシェルの前に現れる場面。
生前、二人の間で語られた言葉よりも、語られなかった感情…愛、赦し、理解の断片のようなものが、浮き上がってくるのを感じました。
これを和解と受け取れるかどうかはもう少し考えを深めたいところですが、少なくともヴァレリーの中では娘との対話がなされ、穏やかな結末を迎えました。これは幸せなことだと思うのです。
死者との和解というのは私にとっても非常に興味のあることで、そのヒントが得られたような気がしました。
登場人物すべての人生をすくい上げる優しさに満ちていて、悲しみ、後悔、言葉にならなかった感情も、否定されることなくありのままに表現された、素晴らしい作品だったと思います。
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