「感情の結末だけを提示する物語は、なぜ深みに届かないのか」フランケンシュタイン deep1さんの映画レビュー(感想・評価)
感情の結末だけを提示する物語は、なぜ深みに届かないのか
映像は驚くほど美しく、撮影・美術・照明のクオリティは高い。しかし、その完成度に釣り合うだけの内容・演出・構成が用意されていない。
物語は浅く、キャラクターの心の変化に伴う因果の積み上げが感じられず、展開にも整合性が欠ける。何故いまその行動に至るのか、直前の描写は何の意味があったのかという疑問が何度も残る。
本作が描こうとしているキャラクター像や物語の方向性自体は理解できる。しかし、それを“演出で観客に気づかせる”のではなく、役者の表情やセリフで露骨に説明してしまうため、受け手が感情を掬い取る余白がない。
さらに、善と悪、正しさと過ちをあまりにも明確に提示しすぎており、その根拠となる心理描写や積み上げが伴っていない。結果として、情緒の深みが生まれていない。
加えて、本作が伝えたいメッセージや展開が平凡であったこと自体は問題ではない。平凡なテーマであっても、演出と構成次第でいくらでも魅力的に昇華できるし、むしろその「見せ方」に映画の力量が表れる。しかし本作は、そこを掘り下げる前に感情の結論だけを急いで提示してしまった印象が強い。
視覚的な美しさとは裏腹に、物語の厚みを生むための“積み重ね”が欠けている。
総じて、映像面は非常に洗練されている一方、内容面では極めて粗く平板に感じた。
本作を観れば、私が何を指して「駄作」と言っているのかは理解してもらえると思う。
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