「生とは死とは、壮大なテーマに挑むスリラーヒューマンドラマ」フランケンシュタイン kozukaさんの映画レビュー(感想・評価)
生とは死とは、壮大なテーマに挑むスリラーヒューマンドラマ
ギレルモ・デル・トロ監督が長年温めてきた「フランケンシュタイン」の映画化。これまでも人間と怪物の関係性を描いてきた監督の集大成的作品でもある。
ただ、原作に敬意を表しているからか、かなり忠実であり改変はされていない。そこがデル・トロらしさが抑えられて道徳的な作品になっているような気もする。
何度も映画化されている作品であるが、構成として新しいところが、第1章は怪物を作ってしまうヴィクター・フランケンシュタイン(オスカー・アイザック)の視点で語られ、第2章は怪物(ジェイコブ・エロルディ)視点で語られるところ。特に第2章は客観的には恐ろしい怪物がヴィクターの身勝手な願望で誕生し、人間から避けられてしまう悲哀を描きスリラーというよりヒューマンドラマとなっておりデル・トロ監督の視点が強く出ている。
人間が身勝手に作った怪物を制御できないところは、現代のAIや変異したウィルスなどの暴走の脅威に置き換えられる。
人間は必ず死があるからこそ生が尊い。しかしこうした「怪物」に死はない。人間はこれからの未来、怪物と共存しなくてはならない。
一方人間ドラマとしてヴィクターと弟の妻エリザベス(ミア・ゴス)への恋心、エリザベスの怪物への愛といったアブノーマルな愛情が描かれるが中途半端。人間の性愛の悍ましさまでつっこんで描けばもっと複雑な人間のエゴを描くドラマになったのでは。
最終的に罪は許される的なキリスト教思想のハリウッド大作映画の印象になってしまったところは残念。
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