「名もなき怪物に心を寄せて」フランケンシュタイン spicaMさんの映画レビュー(感想・評価)
名もなき怪物に心を寄せて
フランケンシュタインといえば、モノクロ映像の、継ぎはぎ跡の目立つ四角い顔の大男が思い浮かび、怖がりの私はその映画を見ようと思わなかったし、原作小説も読んだことがなかったのだが、トロ監督によるピノキオ(モーションアニメ)がとても感動的だったので、本作も見てみようと思っていた。ハロウィンシーズンに合わせたのだろうか、配信前に映画館で公開されたので観てきた。
思わず目をふさいだ残虐なシーンもあったが、演技はもちろん造形(皆さんも書いておられるように今までで一番美形のフランケン)、美術、衣装(布地を染めるところから始めたそう‼︎)、音楽を始め、映画全体に心象を反映した重厚な世界観が漂っていて見応えがあった。そしてヴィクターとフランケン、二人の心理を追ったストーリーテリングがエモだった。
ヴィクターは、富と名声を優先し自分と母に辛くあたった父親に復讐するために前代未聞の人間創造の試みを始めた。だが、新しい命を創るということは、人間である自分はその命の生みの親になることだと分かっていなかったことが、神をも畏れぬ倫理の問題以上に問題であり、悲劇のもとだった。「ヴィクター」と名前を連呼して後追いをしてくる姿は、体こそ大きいが、何も知らない赤ん坊そのもの。言語に代表される知性は、エリザベスのように愛情をもって我慢強く接しなければ育たない。でも、憎しみだけで愛情を知らないヴィクターには思いが及ばずフランケンを知性のない怪物だと決めつけ地下に幽閉し、自分が父からされたように虐待し、フランケンの存在も自分がしたことも無かったことにしようとした。
フランケンのほうは痛い目に遭いながらも人間の情愛を知り言葉を覚え人並みに成長するが、自分の出生の経緯を知って絶望する。そして仲間が欲しい一心でヴィクターに会い行っただけなのにヴィクターは逆上し悲劇が始まる。
ヴィクターが逝く前に親子として分かり合えたのは救いだったが、残されたフランケンはこのままずっと一人ぼっちで、人間に見つかったら怪物扱いで攻撃されて痛めつけられて、でも再生してまた、…と神がプロメテウスに与えたような永遠の罰を、罪を犯したのは父親ヴィクターなのに、彼が代わりに受けて生きていくのかな、それとも人間の原罪を背負って生きるイエスのような存在なのかな、どちらにしても辛すぎるなTTと、映画を見終わって思った。でも、いつかまた、ヴィクターとのやり取りを見守ってくれた船長や、色んなことを教えてくれて友達扱いもしてくれたお爺さんのような人達に巡り会えるかもしれないと思って生きてこう!と監督は言っているような気がして、私もそう思うことにした^^
