劇場公開日 2025年4月4日

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「鳥ファンも必見」終わりの鳥 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0鳥ファンも必見

2025年4月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

さて、A24と独占パートナーシップ契約締結から約1年半、ハピネットファントム・スタジオさんがここに来てA24作品を公開ラッシュです。取り敢えず、先週から上映が始まっている『ベイビーガール』は今のところ劇場鑑賞未定ですが、まずは今週公開の本作『終わりの鳥(原題:Tuesday)』を鑑賞することに。元々は鳥に興味なんて持っていなかった私も、気づけば散歩中に野鳥に目を向ける機会が多くなり、また、ラジオ番組で作家/イラストレーターのぬまがさワタリさんの話を聞いて、最近は最早無視できない存在になりつつあります。と言うことで、公開初日のTOHOシネマズ日本橋へ。やはりA24ファン(或いは鳥ファン?)が多いのか9時20分からの回はそこそこの客入りです。
今回は劇場で数回トレーラーを観て何となくどんな映画か想像しておりましたが、いやいやナメちゃいけません。恐らく多くの人にとって「想像の斜め上を行く展開」は大げさでなく奇想天外。死生観というデリケートなテーマを、奇抜ながらどこか愛嬌を感じる架空のキャラクターを介し、アイロニカルでオフビートなユーモアを交じえて語られるストーリー。そして最後、遺された者への言葉にみる「ユニークな解釈」に救われ、観終わればじんわりと心に沁みます。
まず冒頭から、正にその名の通り「死神(Death)」の役割を司るコンゴウインコ(アリンゼ・ケニ)デス/Deathの登場に気味の悪さを覚えます。そして、いよいよ「その時」が目の前に迫る15歳の少女チューズデー/Tuesday(ローラ・ペティクルー)のもとに現れたデスですが、やや焦りながらも意外な話をし始めるチューズデーについつい耳を傾け、そしてその皮肉のきいたパンチラインを気に入り、チューズデーの「最後のお願い」を承諾します。まだ15歳とは言え他者との関わりよりもむしろ、自分にがっつり面と向かわざるを得ない人生を過ごしてきたチューズデー。会話の端々に悲哀を越えたそのアイロニーがデスの琴線をくすぐり、いつしかデスの中に渦巻く「人々の声」を静めます。そしてその夜、ようやく帰宅してきたチューズデーの母・ゾラ(ジュリア・ルイス=ドレイファス)。弱りゆく娘という「現実」を受け入れられず、ついつい逃げたり胡麻化したりしてしまうゾラ。チューズデーがデスとの交わした「最後のお願い」を切り出そうにも話を逸らそうとするゾラに、とうとうチューズデーがデスの存在を明かすのですが…。
本作の監督、脚本はクロアチア出身の新鋭ダイナ・O・プスィッチ。「死生観」という普遍的なテーマに古臭さ、説教臭さを一切感じさせない斬新なアイディアでアプローチするテクニックは「ユニーク」。劇中において、デスがチューズデーを評して「ユニーク」と表現しますが、これだけ個性的な表現方法を駆使しつつ、ちゃんと傑作に仕上げる力量のダイナ・O・プスィッチ監督こそ「ユニーク」な存在と感じます。今後が楽しみで勿論チェックインしましたが、私が一人目。。次作も期待しています!

TWDera