劇場公開日 2025年4月18日

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「「達観」した娘と「不完全」な母の二人旅」KIDDO キドー TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 「達観」した娘と「不完全」な母の二人旅

2025年4月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作、鑑賞候補にはしていたものの公開週であった先週は残念ながら都合が合わず、今週は他に観たい作品が目白押しだったこともあって「配信待ち」にしようかと考えていたのですが、ムービーウォッチメン(TBSラジオ『アフター6ジャンクション』)の来週の課題作品となったことで急遽劇場鑑賞することに。ゴールデンウイーク前半の日曜10時40分の回、いつもなら敬遠しがちのヒューマントラストシネマ有楽町「シアター2」は満席か、それに近い状態だったと思います。
映画は一本の電話がきっかけで始まります。「ママがやって来る!」と思いがけない連絡に笑みが込み上げる11歳のルー(ローザ・ファン・レーウェン)。スタントも自分でこなす「ハリウッドスターの母」はルーの自慢であり憧れの人。別れの際、「すぐに戻る」と約束してくれた母の言葉を信じ、児童養護施設で多くの子供と一緒に養母(アイサ・ウィンター)に育てられたルーは、とても利発で真っ当な性格です。一方、ようやく姿を現す母・カリーナ(フリーダ・バーンハード)は奇想天外な言動で早速にルーを戸惑わせますが、そこは幼いながらに多くの他人に囲まれて育ったルーだけあって、すぐにどう接するのが正解なのかを察する能力に長けています。養護施設へ戻る気配を見せない母から話を聞きだせば、「ポーランドの母(ルーの祖母)の元へ向かう」と言い出すカリーナ。ルーは母を幻滅させないよう振舞いつつも、養母へも心配をかけないよう連絡を取りながら、映画にもなった実在の犯罪カップル「ボニー&クライド」になりきって母と二人のロードムービーが始まります。
本作は何と言ってもルー役・ローザ・ファン・レーウェンの可愛らしく繊細な演技が最大の見所です。予想の斜め上を行く言動の母が言い出す「私たちはボニー&クライド」設定に乗っかり、数種類のウィッグとサングラスでプチ変装する姿は微笑ましく、憧れの母との再会に心躍った様子を見れば当然にルーの幸せを願わざるを得ません。ところが、カリーナは幼かったルーを一人置き去りにしてしまうような「不完全な母」。娘をこれ以上ないほど愛してはいても、自分の人生を振り返って「理想と現実のギャップ」に苦しんできた経験から、ついつい浮ついた選択をしがち。そんな母を理解し、赦し、そして愛し続けるルーの「達観」は大人顔負けで神々しさすら感じます。ローザ・ファン・レーウェン、素晴らしい。
そして、星の数ほどある「ロードムービー」というジャンルですが、車内という狭くて代わり映えのしない画を補填するため、カーステレオから流れる音楽が良ければ一気に印象が良くなる重要な要素。本作も要所要所で流れる1960~70年代の楽曲はとても印象的で、帰宅して早速配信サービスで入手です。さらに、ルーのアクションに合わせて鳴らされる「ちょっと間抜けだけど、これだけ徹底されると最早可愛い」SE(サウンド・エフェクト)が癖になります。
と言ことで、必ずしも劇場鑑賞必須なタイプの作品ではありませんが、確実に観られるのは劇場でやっている今。配信待ちにしなくて良かった。そして、宇多丸さんの映画評も楽しみです。

TWDera
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