JOIKA 美と狂気のバレリーナのレビュー・感想・評価
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華やかな世界の裏の澱み
世界最高峰のバレエ団ボリショイ・バレエを舞台に、プリマになることに取りつかれたアメリカ人バレリーナ、ジョイ・ウーマックの実話を映画化。非ロシア人という事で差別され、アカデミーに残るためには過酷なトレーニングと様々なハラスメント、さらには自身のアイデンティティをも変える選択を受け入れるまで追い詰められていく。しかし、情緒不安定になる反動からか、自ら進んで過酷な状況に追い込んでいくようにも見えるあたりが怖い。
宣伝では『ブラック・スワン』が比較対象作として挙げられているが、ロシアつながりという事もあり個人的にはドキュメンタリー『オーバー・ザ・リミット/新体操の女王マムーンの軌跡』を想起した。ロシアの新体操選手マルガリータ・マムーンと、彼女のコーチを務めるイリーナとアミーナに密着しているが、とにかくイリーナによるマムーンへの指導の厳しさが凄まじい。でもいくら周囲から同情されようと、オリンピックで金メダルを獲れば自分も家族も一生安泰した暮らしを送れる(=プーチンの恩恵を受ける)。それを承知してるからこそマムーンも耐える。
本作でジョイを指導するヴォルコワも、傍目にはパワハラと捉えられても仕方ない。でもその根底には生徒を信頼する絆がある。そこが本作唯一と言ってもいい救い。ただ、それを承知してまで過酷な境遇に耐える価値があると納得できるかは個人差があるだろう。
勝てば官軍負ければ賊軍。華やかな世界だからこそ、その裏には澱みがある。
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もうボリショイじゃなくてよくない?
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