「鋭い針で皮膚をチクチクと刺される様な痛み。」JOIKA 美と狂気のバレリーナ Sueさんの映画レビュー(感想・評価)
鋭い針で皮膚をチクチクと刺される様な痛み。
幼く愛らしい女の子が、パパとママの前でくるりと回って見せて、ハイにっこり。思わず頬摺りしたくなるような可愛いジョイは、ボリショイバレエ団のプリマバレリーナ、憧れのオシポワのようになりたいだけの夢見る少女だった。しかしボリショイの城壁は灰色に厚く重く、現実は非情冷酷で悪意の蔓延する世界だった。
狂気や執念と結論付けてしまうには、余りにも痛々しく繊細なジョイの姿。自己の肉体の限界を越えて鞭打ち血を流し、尚トゥシューズで舞い続ける。恋愛も結婚もバレエへの愛の深さには及ばない。彼女がロシア国籍を得る為に夫となったニコライは少々不憫だったが、役を得る為に身を売る寸前に思い留まった彼女には安堵させられた。
ダイアン・クルーガー演じる、ボリショイアカデミー校の教師ヴォルコワは氷のような女だが、彼女もまたボリショイの犠牲者だったのだ。今作に、身体も感情も絞って役作りをしている。因みに私は、“敬愛なるベートーヴェン”の彼女に最も心を奪われている。
如何にしても二人の女優、タリア·ライダーとダイアン・クルーガーがこのバレエ作品を美しく魅惑的にしている事に間違いは無い。
コメントする
