劇場公開日 2025年11月14日

「見逃すなんて、もったいない」石炭の値打ち スターンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 見逃すなんて、もったいない

2025年11月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

淡いカラーの炭鉱夫の映像を見てちょっと興味が出た方、ちょっと調べてみて社会派ケン・ローチ監督、1部・2部構成の168分。。。ちょっと面倒くさい映画かも。。。
と躊躇しているあなた、渋谷ル・シネマで2週間の限定上映、時間と心に余裕があれば大大推奨いたします。
時は1997年イギリス・ヨークシャーの炭鉱町。そこでの炭鉱夫、家族、管理職の職員など様々なひとびとが描かれます。
ドキュメンタリー(もちろん、そうではない)をみているように、あたかもその場で彼らの暮らしに入り込んでいるような錯覚すら覚えます。それでいて、まったく退屈させないディテイルのリアリティは流石と唸る仕上がりです。
第一部は炭鉱に皇太子(チャールズ)が視察に訪れることになり、そのてんやわんやをユーモアたっぷりに描きます。皇族―労働者に象徴される階級社会を対立構造ではなく、所与のものとして、当たり前に生きている庶民の暮らしが清々しい。
会話のなかで交わされる皮肉やユーモアは気が利いていて、労働者階級の矜持も感じられます。
第二部は炭鉱での爆発事故を描きます。ここでも様々な立場の人々が描かれますが、脇役に至るまでおざなりではない人物描写が素晴らしいです。
決して思い描くような予定調和ではないところも心に沁みます。

原題のThe Price of coal は「石炭の値打ち」と邦題がつけられていますが、
Price に込められた 価格、代償、犠牲 の意味を噛み締めたい。
炭鉱の子供達が履いているベルボトムのジーンズもかわいらしく、若者のロングヘアなど時代っぽさも素敵です。

スターン