劇場公開日 2025年11月21日

「生きてこそ…人生」TOKYOタクシー 町谷東光さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 生きてこそ…人生

2025年12月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

単純

癒される

山田洋次作品である。はずれであるはずがない。
ぼくが20代、30代のころなら、この映画を見て「けっ」と思ったかもしれない。
しかし、、六十路も半ば近くのいま、そんな気持ちにはならない。
人生いろいろあるけれど、生きてこそ―である。
そう感じさせる作品なのだ。
山田洋次作品のほぼすべてに言えることかもしれないが、有り体にいえば、人間賛歌。人生、人が生きてゆくことを肯定的にとらえたうえでの映画なのである。
生きていれば、悪いことばかりじゃない、ということだ。
BSテレビ東京4Kで、「男はつらいよ」が週に1度放送されていたのを録画し、それを見たのをきっかけに、山田洋次という監督の偉大さを再認識した。ほかの山田作品も改めて何本か見ているが、ヒューマニズムというか、彼の描く世界には大いに共感ができる。
自分は、後ろ向き、ネガティブ思考の人間だけれど、少しでも気分を軽くし、前向きにさせてくれるようなこういう映画は大切だと思う。
エンターテインメントには、それは必要な要素なのである。

タクシー運転手役を木村拓哉ではない、もっと芝居ができる俳優が演じれば★を5つつけたかもしれない。
木村が下手だ、とは言わない。十分に水準に達してはいるが、何をやってもキムタクなのだから仕方ない。どうにも、軽いのである。
もう彼も50を超えて久しい。もうちょっと、人生の重み、渋みを表現できてもよさそうだが。そんなことは無理な要求だろう。
山田監督も、そんなことは承知の上で使っているのだろう。
芝居達者で、監督の要求以上に存在感を発揮する役者はいくらでもいるだろう。そんな役者を使わなかったところに、この映画の狙い、山田監督の意図があったように思う。

千葉の並以下の新設公立高校から専門学校にでも進み、いくつかの職業をへて個人タクシーの運転手になった―、もう一人の木村拓哉がそこにいるのだ。
作品中、一人娘がクラリネット奏者を目指して音大付属の中学に行こうとしている…なんてセルフパロディーもちゃんと受け入れて演じた木村を評価してもよいだろう。
11月に葛飾柴又であった「寅さんサミット」で山田監督のトークショーを見たが、木村のことを真面目な人だ、と評価していた。そう、木村拓哉ってまじめなんだろうな。きっとそうだと思う。つまり、人間的にはつまらないってことよ。
東京・城南地区のシネコン、封切りから1カ月近くたつ土曜の昼間に行ったが、そこそこ高齢者を中心に観客は来ていた。映画としては興行的に成功したのはご同慶の至りである。

町谷東光
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