「リメイク作品なのですが、作品の舞台を東京に変えただけではない、監督の味付けがしっかりと付いていました。高齢世代の心にはサクサクと刺さりそうな作品です。良作。」TOKYOタクシー もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
リメイク作品なのですが、作品の舞台を東京に変えただけではない、監督の味付けがしっかりと付いていました。高齢世代の心にはサクサクと刺さりそうな作品です。良作。
「パリタクシー」みたいなタイトルだなぁ と思ったら
もろにリメイク作品でした。しかも「パリ」の監督さんが
この作品のスタッフとして参加しているという。へー。
で、監督が山田洋次監督です。
寅さんや光男出てこないかな。無理かな。
※なんてことを考えながら始まったお話の、スタート地点が
「葛飾 柴又 帝釈天前」 @∇@ あれま びっくり
山田洋次監督風の味付けへの期待感が膨らみました。
鑑賞スタートです。
◇
主人公は大きく二人。
高級老人ホームに引っ越す女性 高野すみれ(=倍賞千恵子)
彼女を乗せたタクシーの運転手 宇佐美浩二(=木村拓也)
当初の配送予定運転手がぎっくり腰で、急遽代役で迎えに行く
事になった。それだけのご縁の筈でした。
葉山までの道中、すみれが過去を振り返りながら、あちこちと
立ち寄ってほしいとリクエストを出すリクエストに応えて
あちらこちらと車を走らせる運転手の浩二。
最初は、すみれの話を聞き流し気味の浩二だったのですが
次第に、すみれに自分の家族のことも話すように。
タクシー車中での会話を交わす内に距離感が近づいていく、
すみれと浩二なのですが…。
◇
お話の骨格としてはリメイク元の展開を踏まえていました。
舞台となる都市が違うので、訪ねて回る先々は当然違います。
また、回想する過去のエピソードについても、変更されている
ものがありました。
※ 犯罪行為 火炎地獄 → 熱油地獄 (?)
息子の死 朝鮮戦争死 → バイク事故死
オリジナル版のエピソードは、日本版にはそぐわないものもあっ
たと思うので、不自然な変更とは感じなかった気がします。
◇
過去に起きた事、やってしまった事はややマイルドに。
運転手一家の家庭事情についての描写をより具体的に描写する
ことで、「TOKYO」での「戦争の傷跡」と「人の絆」を描いた
作品だったかと思います。
単にパリから東京に舞台を移しただけのリメークでは無かった
ことが、良く理解できました。
山田洋次風の味付けでした。
正直、鑑賞するか迷ったのも事実ですが
観逃さなくて良かった。鑑賞して良かった。
満足です。
◇少しの違和感と、増した納得感
ストーリーの終盤近く、バリ版には無いエピソードが追加されて
いました。(記憶違いだったらどうしましょ…)
あちらこちらと一日中東京を走り回り、最終目的地の葉山に近づく
につれ、表情が曇り始めるすみれ。
" 以前来たときは、もっと明るい場所に感じたのに… "
到着予定時刻を過ぎてから施設に到着。あとはタクシーを降りて
施設に入るだけ。…なのだが
なかなかタクシーを降りようとしない、すみれ。
" もう一晩、夕食を取ったホテルに泊まりたい "
" 明日、明るい時間になってから出直したいわ "
一日中すみれの言うままに東京を走らせ、疲れも溜まっていた浩二。
つい強い口調で咎めてしまう。あー
" 子どもみたいな我が儘を言わないで ! "
★↑このような強い口調のセリフは、パリタク版には無かった気が…
しょんぼりと、” その通りだわ " とタクシーを降り、施設の入り口に歩き
始めるすみれ。タクシー代を払っていない事に気付いて浩二に話しかけ
ルのだが、" また後日で良いから " と、浩二。
再会を約束してその日を終える。
また次の機会がある事を疑わずに、その日を終えて帰宅した浩二。
翌週、約束のとおりに妻を伴って施設を尋ねてみたのだが、
すみれは既に故人となっていて…。@△@;;
# きつい事を言われた際のすみれの心情
# 亡くなった事を知った時の浩二の心情
どちらも、想像するととてもやるせない気持ちになってしまい
この場面を観た時点では 「ここまでのやり取り必要なのか?」
との思いが拭えなかったのですが…
場面が変って、葬儀場。
行政書士の阿部(笹野高史)から帰りがけに呼び止められる浩二。
名前を確認され、預かった手紙があると言われて、事務所まで。
手渡されたのは高野すみれが生前に認めた手紙。
手紙の内容は、ほぼ「遺言書」と言えるもの。
同封されていたのは、感謝を綴った手紙と、小切手。一億円…。
# 娘さんの進学の費用に充てて欲しい
# ご家族でヨーロッパ旅行も楽しんできて
# タクシー代もここから取ってね (釣りはいらないわ~)
別れた際のゴタゴタを引きずることなく、心地よい一日を共に
過ごしてくれたタクシー運転手一家へ示した、最大の感謝。
やるせない別れをした分だけ、すみれからの好意が何倍にも
なって返ってきたような気がして、せつなさも倍増でした…。
山田洋次監督らしい演出だったような気がします。
◇そういえば
倍賞千恵子と木村拓也
組み合わせとしてピンと来るような来ないような。
何か過去の出演作で共演してたかな? などと考えている内に
「あっ」 と思い出しました。
良く良く考えたら「ハウルの動く城」で共演してましたね。
声の共演でしたけど。
※当時、60代のヒロインとして話題になりましたね。今回更新☆
◇最後に
「葛飾 柴又 帝釈天」から始まるこの作品
鑑賞中そして鑑賞後すぐには、山田洋次監督らしい着想だなぁと
シンプルに感心していたのですが、鑑賞後時間が経過してみると
" もしかして " と思う事が浮かんできました。
この作品の" 高野すみれ " の人生を通して、山田洋次監督が自身の
人生を振り返る作品にしたかったのではないかなぁ という事。
あ、もちろん的外れかも知れませんし、山田洋次監督を語れる
ほど作品を沢山観ている訳でもないので、そんな気がした
という程度の思いでしかないのですが。
作中でタクシーが通った道のりを、パンフレットで追体験して
みようと思います。どこに立ち寄ったのか、走った箇所のマップ
とか載っているといいなぁ。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
もりのいぶきさん
共感、フォロー、コメントありがとうございます!
本当に心に沁みる名作でした!
とても心温まる映画で、朝イチに行ったのに、自分より年配のご夫婦が多数仲良く鑑賞されているのをみて、さらに嬉しくなりました。
映画って、とても良いですね!
今後もよろしくお願い申し上げます。
共感ありがとうございます!
スタート地点が柴又帝釈天っていうのが山田洋次節炸裂で良かったですよね。自分的にはゴール地点は釣りバカ日誌の太田屋付近にして、老人ホームの外観は高級ホテルみたいな関東学院大学のキャンパスを使って、室内は本物の施設を使えば良かったのに・・・なんて妄想して楽しく鑑賞出来ました。
共感ありがとうございます。
元ネタもあんまり丁寧な造りには思えなかったのですが・・この作品も作り手が本当に撮りたかった題材だったのか、微妙に感じました。双方望外のお金を貰う所がやはり引っかかるのかもしれません。
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