「イカれた熱意をぜひ渋谷ドリカムシアターで!」Page30 somebukiさんの映画レビュー(感想・評価)
イカれた熱意をぜひ渋谷ドリカムシアターで!
まず、本作は単なる映画ではなく、かなりイカれたプロジェクトによって作られた作品。
エグゼクティブプロデューサーにドリカムの中村正人さんが担当されており、本作を届けるために、普通の映画館だけではなく、「Page30」専用の映画館を作ろう!ってことで、2025年4月より2ヶ月間の期間限定で渋谷にテントシアターを建てるという。
シアター内は普通の映画館とはことなり、
地べたにYogiboが置いてあり、それに座って作品を見る。
音響もこだわっており、ドリカムのレコーディングに使う機材も持ち込みで使っているそう。
普段の映画館では味わえない、臨場感と一体感が新しい映画体験を与えてくれた。
監督は「SPEC」「トリック」「20世紀少年」などのヒット作を撮られ、最近では「SINGULA」「ゲネプロ☆7」など舞台に関する映像作品を接客的に取られている堤幸彦監督。
脚本は堤幸彦監督とはイニシエーションラブでタッグを組まれていた井上テテさん。
ストーリーは・・・
突然、稽古場に集められた4人の女優。
30ページの台本を3日間練習し、4日目に舞台公演すると告られる。
しかも、演出家おらず、当日まで配役は未定。
劇場から出ることも許されない環境の中、4人はやりたい訳をつかむために全力で稽古に挑む。
話の構成自体は非常にシンプル。
とにかく3日感ひたすら練習して、公演するという話だが、このストーリーから想像できない面白さが詰まっている。
4人のキャスト陣の個性が爆発している。
・映像作品に出れてはいるが主役は取れず、2流の役者扱いされている琴異をスキャンダルがきっかけで一皮剥けた唐田えりなが演じる。
・舞台を軸に出演するものの、映像作品に出れておらず今回の舞台に人一倍思いを込める咲良を過去いろんな現場を経験され、野心あふれる広山詞葉。
・元アーティストだが、演劇経験はない樹利亜を元ハイカラ(HIGH and MIGHTY COLOR)のボーカルで、中村正人さんの奥さんでもあるマーキー。
・舞台経験が長く、演じることに疲れ果てた遙を舞台演技の個人賞を受賞されているベテラン林田麻里が演じている。
キャスト自身と強くリンクしているためか、演技の重みが乗っかってる。4人の個性が対極的に異なる中、当日まで配役が未定という設定により、全員がそれぞれの役を全て演じるシーンの面白さが爆発していた。
同じ話なのに、これほど違うのかって感心させられる。さらに同じまで話を単純に繰り返すと先の展開が読めて飽きそうなところ、本作はあえて1.6.12みたいなページを飛ばし飛ばし見せることですぐに物語がわからないように、逆に繰り返し見せることの良さを映し出していた。
そして、4人の熱意ある演技にさらに勢いをつけていたBGMとなるジャズピアノの存在。
セリフに合わせるかのような、テンポや音の強さ、勢いなどまるでセッションやんって思っていたら、実際ジャズピアノはシーンに合わせてアドリブでかつ1発取で撮ったらしい。
グラミー賞の上原ひとみだからこそ、生み出された技だと思う。
映画を届けるためにシアターを作り出すという常識にとらわれない「やりたいこと全力でやる」と姿はPage30で描かれているテーマ「周りに気にせず、演じることに全力に注ぐ」とも非常にリンクしている。
できればこのPage30を届けるために作った渋谷ドリカムシアターで4人のもがき抜く姿を見てほしい。