劇場公開日 2025年10月31日

「日本版ジョーカー。傑作になりそこねた怪作」爆弾 たこつぼさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 日本版ジョーカー。傑作になりそこねた怪作

2025年12月23日
PCから投稿

興奮

知的

斬新

取調室に捕らわれた無敵の人とエリート警察達の対決モノ。
無敵の人とエリート官僚、無差別テロの非対称性と国家権力の非対称性が面白い。
佐藤二朗の無敵の人の演技が本当に凄い。社会に排斥された疎外感、嫉妬、恨み、諦観が非常によく伝わってくる。
彼は日本版ジョーカーである。社会に拒絶され排斥されたハミダシモノが道化を演じながら社会に対して牙を向く様はまさにジョーカーである。
ただ良くも悪くも米国的アンチヒーローのヴィランであるジョーカーと異なり、ホームレスのような薄汚く低姿勢な中年の無敵の人であるのが非常に日本的で素晴らしいと思った。
刑事・警察サイドもなかなか多種多様で面白かった。個々の人々に違ったキャラがあってとても良かった。特に山田裕貴の他人を見下す天才肌のキャラが良かった。
最初はこいつナニモンなんだ?から始まり、だんだん狂気的テロリストだということが明らかになっていき、無敵の人の怨念が普通の組織人つまり我々の分身である警察の心を抉る命の選別シーンは本当に心をえぐられた見事としかいいようがない。
最初の1時間半はほぼ完璧だった。

しかし佐藤二朗と山田裕貴が直接対決するところからはパワーダウンしたと思う。
特に駅の避難が勝手に解除される所はあまりに不自然だし、あそこは駅一つは守ったけど他は守れなかったという方が演出的にも良かったと思う。後半の山田裕貴はただ無敵の人を煽って返り討ちにあっただけの存在になってしまった。
ラストの推理もあまりにご都合主義だったと思う。石川啄木というワードだけであそこまでつなげてしまうのは流石に置いていかれた。
ただラストのラスト、彼女の真意を無敵の人に打ち返したのは良かった。無敵の人であった彼の諦観に文字通り一矢報いたと思う。

最初の1時間半までは本当に完璧であったと思うあの勢いのまま描いてくれれば100点の傑作だった。しかし、後半の失速がちょっと残念だったので80点くらいの怪作かなと思った。

たこつぼ
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