「もう全部吹き飛ばしてしまえ!」爆弾 猿田猿太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
もう全部吹き飛ばしてしまえ!
最高に面白かった。下手すると犯人?スズキに共感してしまう。そのスズキの指をへし折った年配刑事(名前なんだっけ)の気持ちも判る。如何に妙な性癖があったとはいえ、それを変態呼ばわりして取り囲むマスコミ、安易に動画を拡散、そして「俺シラネ」といって逃げを決め込む。警察の聞き込みにカメラを向けて嫌味をつける。世の中、良い奴なんて居やしない。アニメにしたら、さぞかし黒インクが足りなくなるだろうという、最初っから最後まで薄暗い映画のイメージ。とことん視聴者にストレスをかけ、むしろ犯人に共感してしまう。スズキから「あなたもそう思ったんじゃないですか」という問いかけは、まさに視聴者へのメッセージ。
でも、ちゃんと釘を刺すのはいいですね。「お前は悪だ」と言い切る年配刑事のセリフのお陰で踏みとどまった気分。露骨に爆弾で傷つく警察官を含めた被害者達の姿に、「悪いことをするとこういうことになるんだ」と目を覚まさせてくれる。そのへんが、この映画の良識だったと思う。面白さ半分、やっぱり見終えて鬱屈した気分にもなったけど、「高い焼き肉おごれ」というメッセージで少し上向き気分になれます。あのメガネの切れ者、類家くんもポーク(なんだっけ)が喰いたいというセリフ。そういえば「じゃりン子チエ」でも言ってました。「まずはお腹いっぱい食べること。お腹が減っていると、ついつい変なことを考えてしまう」ということなのでしょう。国民に飢えさせる国では駄目なんでしょうね。日本の豊かさもまた、治安維持の否決かもしれません。
あと、雑感というかなんというか。こういう事件、一人の犯人が知恵をふるって警察全てを翻弄するなど、本当に有り得るものかどうか。こういうフィクションって本当にファンタジーだと思う。ファンタジーというと語弊が悪ければ、現実味の無い夢物語。懲りに凝った計画犯罪って、なんの経験も無しにプランを組んで実行して、それがどこまで上手くいくものか。ようするに「手練れ」でなければ、「未経験」では駄目だと思う。常習犯で無ければ、成功率なんてかなり低いのでは無いか。
加えて、警察署の取調室で、強面の刑事の取り調べを受けて、どこまで踊りきることが出来るものか。あのスズキも若くないし、どんな経験を積んできたかは知らないけど、出世争いで殴り合ってきた警察相手に面と向かってからかうなんて、どれほど海千山千の経験を詰めば出来るものなのか。映画を見ていて、「そんな人間がいきなり登場するなんて有り得ないよな」という気分に終始囚われてしまいました。でも、だからこそ、「邪悪な怪物」ぶりが面白いんですけどね。
その怪物ぶりを演じきった佐藤二朗さんでしたか。凄まじい名演でした。役者陣が実に魅力的な凄い人達、類家くんが出演者の筆頭に上がってるけど、まさに怪物スズキこそ、この映画の主役だったのではないかと思います。
そういえば、類家くんの名乗りの連呼。あれがなければ、見ていて名前が認識できませんでしたね。役割がハッキリしていれば登場人物に名付ける必要はないと思っていますが。
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