「原作よりある意味普通、ある意味ドラマティック」ラブ・イン・ザ・ビッグシティ 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
原作よりある意味普通、ある意味ドラマティック
原題「대도시의 사랑법」は「大都市の愛し方」。
原作本(パク・サンヨン著)の邦訳タイトルは「大都会の愛し方」。
4本の短編のうち最初の一編「ジェヒ」が、この映画の原作。
冒頭10ページくらい試し読みしてから映画を観て、
そのあと残りを読んだ。
原作は、乾いた文体の独白が面白い。
映画でその語り口を表現するのは難しいが、
逆に原作では客体でしかなかったジェヒが、
映画では二分の一の主体になって、キャラが際立ってた。
「セックス」という語が約50ページに15回出てくる赤裸々な原作と比べて、
映画は「ふつう」寄りにシフトしている。
エピソードも結構加えられていて、ドラマチックな度合いを強めている。
そして、
「怒るべき状況で笑う俺」と「肝心な瞬間になると無駄に正直なジェヒ」が、
「ジェヒは俺を通してゲイとして生きるのは時にマジでクソだってことを学び、俺はジェヒを通じて女として生きるのも同じくらい楽じゃないってことを知」り、
「永遠だと思っていたジェヒと俺の季節が永久に終わってしまったことを悟った」
という筋は揺るがないものの、
原作は結末が切ないのに対し、映画は希望を残して終わっている気がする。
ちなみに「あんたらしさが、何で弱みなの?」という名台詞は、原作にはない。
* * *
なお原作では「俺」の名はほとんど出てこない。
短編「ジェヒ」の中では、結婚式の前の晩に初めてジェヒが名を呼ぶ1回だけ(本全体では9回)。
その名は「ヨン」――だが、著者あとがきによると、パク・サンヨンのことではないらしい。
(映画では、その名はフンス)
なぜ「大都会」なのか、というと、訳者あとがきによれば、
>マイノリティー的要素をもっている人にとっては、大都会は匿名のまま隠れられる空間であり、限りなく自分らしく生きていける場所である。また裏を返せば、簡単に一人になれるぶん、孤独に陥りやすい面もある。
>パク・サンヨンはその中で繰り広げられるさまざまな愛の形を描きたかったと語る。
その他、韓国現代文学の潮流が解説されていて、とっても興味深い。
>ノーキッキングさん
映画では、カミュが好きとか、意味づけしようとしてましたね。あと、ジェヒもフランス留学してたり。
原作は、どっちもなくって、そもそも「意味づけ」をしようとしてない感じです。
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