「理想的な友情はいつか虚構からリアルになるのだろうか?」ラブ・イン・ザ・ビッグシティ ふくすけさんの映画レビュー(感想・評価)
理想的な友情はいつか虚構からリアルになるのだろうか?
映画に没入するのに時間ががかった。
ゲイと、集団になじめない女性との同棲。ゲイとレズビアンではない。女性はシスジェンダーだ。
組み合わせとしては面白いが、リアルなものとして納得するのは最後まで難しかった。
理想的な男女間の友情を描くために注意深く両者からセクシュアリティを取り除いているように見えて、ジェヒは平気でフンスの膝を枕にする。
結婚式での主役はフンスとジェヒ、
新郎は本当に二人の関係を受け入れているのか?
あれだけ魅力的なフンスを新郎はライバルとして捉えないでいられるのか?
女性が人前でタバコを吸うだけで白い目で見られるソウル。
このような特殊な設定にしないと男女の親密性を、表現できないのかしらと余計なことを考えてしまう。
フンスの母の「病気は治ると思っていた。」という残酷な台詞。
この台詞がフンスのカミングアウトを導くのが素晴らしい!
誰も傷つかないことなどあり得ない。
母も傷ついた。
しかし息子が傷ついて来たように母を傷つけてもよいのだ、と思う。
あぁ、母が生きていて良かった。
誰かを傷つけること無しに、人は自分自身を受容できないのかもしれない。
それで良いのだ、とこの映画は言ってくれているようにも思える。
皆で少しづつ傷つくことを分かちあおうじゃないか。
「執着が愛じゃないなら、私は愛したことがない。」
「愛は抽象的でわからない。
でも「会いたい」という気持ちは本物だ。」
ジェヒが前半でいう台詞が
後半にフンスの気持ちを深く癒す。
フンスもスホを保身のために失いつつ、いつまでも待ってくれると思っていた。
身勝手なことだ。
我が身の身勝手さとスホの大事さが身にしみて、ジェヒの胸で泣く。
脚本が素晴らしいのだと思う。
今、この二人の、美しい友情は虚構にしか感じられない。
これがリアルなことに思える日が来るとよいと思います。
追記
愛は執着である。だから人を愛してはならない。
とはお釈迦さまの言葉です。