劇場公開日 2025年4月11日

「非業の死をとげた伝説のジャズ•ピアニスト テノーリオ•ジュニオル その音楽、その人となり、その最期を関係者の証言によって綴る アニメーション•ドキュメンタリー」ボサノヴァ 撃たれたピアニスト Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0非業の死をとげた伝説のジャズ•ピアニスト テノーリオ•ジュニオル その音楽、その人となり、その最期を関係者の証言によって綴る アニメーション•ドキュメンタリー

2025年4月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

実はテノーリオ•ジュニオルて誰? の状態で本篇を見ました。見終わってすぐしたことは彼の唯一のリーダー•アルバム “Embalo”(1964年リリース)を音楽サイトで探し出して聴くことでした。本篇鑑賞中に感じていた既視感ならぬ「既聴感」はホンモノだったようで、これ絶対にどこかで聴いたことがある、となりました。昔よく聴いてたジャズのコンピレーション•アルバムからか、それともラジオからか、そんなところでしょう。

そして、Wiki を始めとするネット検索。どれどれ、テノーリオ•ジュニオル 1941年7月4日〜1976年3月27日 とな。ビートルズでいうとジョンが1940年生まれ、ポールが1942年生まれなので、彼の生年はふたりの生年の間の年になります。ジョンが暗殺されて大騒ぎになったのが1980年ですので、彼はジョンに先行すること4年、ひっそりとこの世を去っていたことになります。

ポップス寄りのボサノヴァをやってたセルジオ•メンデス(2024年83歳にて病没)は彼と同い年なんですね。本篇に出てきた名前をあげてゆくとーー エラ•フィッツジェラルドは彼より24歳年上で1996年に79歳没。チェット•ベイカーは12歳年上で1988年58歳でアムステルダムのホテルの窓から謎の転落死。彼のあこがれのピアニストだったビル•エヴァンスは12歳年上で1980年51歳没。ブラジルのボサノヴァ関係だと、ヴィニシウス•ヂ•モライスは彼より28歳年上で1980年66歳没。アントニオ•カルロス•ジョビンは14歳年上で1994年67歳没。ジョアン•ジルベルトは10歳年上で2019年88歳没…… と「夏草や兵どもが夢の跡」と芭蕉の句でも唱えながら合掌したくなります。1960-70年代のフィルム状況も考えると、チェット•ベイカーにウインクさせることに成功したアニメーションというのはかなりいいアイデアだったと思います。

それにしても、1976年34歳没とわずかな文字で片付けられかねない彼の死の裏にはこんな悲劇があったのですね。行方が分からなくなってから10年後に軍人の証言で真相らしきことがわかる、遺体は依然として行方不明というのは悲しすぎます。

さて、また “Embalo”を聴くとしますか。

合掌。

Freddie3v