「戦争の悲惨さを後世に残す」ペリリュー 楽園のゲルニカ totocinemaさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争の悲惨さを後世に残す
太平洋戦争末期、南国の楽園ペリリュー島で繰り広げられた凄絶な戦いを、漫画家志望の日本兵青年・田丸の目線で描く。圧倒的な兵力を持つ米軍に対して、日本軍は徹底した持久戦、地下陣地戦術を駆使して必死に抵抗。砂浜や丘陵、洞窟など地形を生かした戦闘シーンはリアルで、味方の凶弾で呆気なく戦死する上官の姿なども生々しい。
敗色濃厚な戦況の中、兵士たちの恐怖や疲労が丁寧に描かれ、極限状態の心理が手に取るように伝わってくる。米軍にとっては小さな島でも、日本軍にとっては死守必達の島であり、上官からの無謀な玉砕命令の重みが胸に刺さる。暗く狭い洞窟の中で飢えや渇きに耐え、望みのない助けをただ待つ孤独と絶望の描写は特に胸を打つ。終戦の知らせが届いている可能性があっても、敵に投降することは許されず、命令や忠誠心の間で苦悩する兵士たちの苦悩が描かれる。
さらに、本作がアニメーションで描かれた意義も大きい。漫画や文章では伝わりにくい砲撃の衝撃、熱帯の蒸し暑さ、洞窟の暗闇や閉塞感、兵士の疲労や恐怖を視覚と音で体感できる。現地取材や生存者証言、写真資料等に基づく描写は臨場感にあふれ、敗戦の現実を改めて考えさせる。アニメの表現力で戦場の圧迫感と心理的緊張を追体験させる事で、戦争の悲惨さを後世に残す意味も強く伝わり、見る者の心に刺さる作品になっている。
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