「予想を裏切る快作コメディ!」遠井さんは青春したい!「バカとスマホとロマンスと」 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
予想を裏切る快作コメディ!
■作品情報
監督はまんきゅう、原作・製作総指揮はジェル。主要キャストにジェル、豊崎愛生、内田雄馬、佐倉綾音ら。2025年7月18日公開のアニメ映画。
■あらすじ
ごく普通の女子高校生、遠井あかね、通称“遠井さん”は、平穏な青春を送ることを夢見ていた。しかし、入学早々、個性的すぎるイケメン同級生のジェルに目をつけられ、謎多き「青春ロマンス部」に強制入部させられることとなる。部の活動は「青春っぽいこと」「ロマンっぽいこと」を探すという漠然としたものだが、ジェルの奇抜な行動とツッコミどころ満載の仲間たちによって、毎日がコントのような爆笑展開の連続となる。やがて、その日常はまさかの動画配信へと発展し、カオスな学園生活はさらに加速していく。しかし、そんなおバカな日々の中で、ある事件が発生。陸上部の生徒の不登校をきっかけに、物語は前半のコメディ路線から一転、後半はシリアスな展開へと舵を切り、ジェルたちの活動にも暗雲が漂い始める。
■感想
今週末、公開作が少ない中で何気なく鑑賞した本作。事前の予備知識が全くなかったので理解できるか不安でしたが、その心配は杞憂に終わりました。まさかこれほどまでに心を掴まれるとは!
冒頭から繰り広げられるおバカキャラと、それに対するキレのよいツッコミの応酬は、心地よいテンポで物語を牽引していきます。頭を空っぽにして純粋に笑える学園コメディだとばかり思っていたのですが、物語は徐々に真剣な様相を呈し、そのギャップに驚かされます。特に、陸上部の白川はるかの不登校を巡る展開では、現代社会が抱えるネット上の誹謗中傷やフェイクニュースといった社会問題に真正面から切り込んでいく姿勢に、胸が熱くなります。
はるかの浮かない表情、彼女を取り巻く陸上部の仲間たち、そして青春ロマンス部の型破りな活動、さらには暗躍するパソコン部など、散りばめられたさまざまな伏線が見事に回収されていく過程は圧巻の一言。ジェルの奇策によって導かれる一発逆転劇の痛快さには、思わず拍手を送りたくなります。まさに彼は“最強のエンターテイナー”であり、彼をはじめとする青春ロマンス部のメンバー全員が、清々しいほどに魅力的に描かれているのが印象的です。
唯一、遠井さんの声が女性ではなかった点だけが、個人的には少し残念に感じます。何か理由があるのかもしれませんが、予備知識なしに観た自分には、その意図を完全に理解することはできません。しかし、その一点を除けば、爆笑と感動、そして社会への鋭い問題提起が凝縮された、まさに予想を裏切る快作です。観終わった後には、きっと爽やかな感動と、明日への活力が湧いてくることでしょう。