「知りたかった答えにたどり着けず」ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男 椿六十郎さんの映画レビュー(感想・評価)
知りたかった答えにたどり着けず
作品自体は、現実の映像をいくつも差し込み、ナチスの非道さをこれでもかと見せつけてくる 生身の人間が、次の瞬間ただの肉の塊になるシーンが数々差し込まれるのには思わず声が出た
映画はそんなシーンをふんだんに使いながらゲッベルスが情報を統制しながら話術、演説、映像を巧みに持ち寄りながらナチス党はもちろんドイツ国民総動員でユダヤ人の虐殺とイギリス、ソ連の絶対に勝てない2局面戦争を継続していく
映画に期待していたのは、そのゲッべルスの情報戦や戦争を美化したりユダヤ人やソ連を鬼畜生に描いて、国民や兵士の戦意高揚やナチス評価を上げていく姿だったのだが
映画はなぜ全ドイツ国民が非道な殺人を罪悪感なく行えるようになっていったのかを描く方向よりも、ゲッべルスの栄枯盛衰に焦点が当たり過ぎて彼の「技法」による具体的な効果に説得力をもたせてくれるところまでは至っていなかったのが残念だった
ラストでホロコーストを生き残った女性が語る疑問「なぜ普通の人があんなにもたくさんの普通の人たちが、あんなにもたくさんの人たちを平気で殺せるようになったのか」という疑問の答えに、この映画はたどり着いていないように感じた ちょっと残念
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