劇場公開日 2025年4月4日

「かなり設定に無理がある。役者はいずれも熱演。」陽が落ちる あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5かなり設定に無理がある。役者はいずれも熱演。

2025年5月14日
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鑑賞方法:映画館

柿崎ゆうじ監督が脚本も書いている。エンドクレジットを観た限り時代考証担当は立てておらず柿崎自身が調べた範囲内で映画まで進めたようだ。
時代設定は文政12年ということになっている。文化・文政時代である。徳川将軍は11代家斉。大河ドラマ「べらぼう」の50年ぐらい後で江戸時代もかなり後期の方となる。
続いて「切腹」について。負の記憶であるために多分、聞きにくい、隠されている。だから切腹の事例の系統(時代、背景、作法)だった収集は国内でもあまりなくて考察も意外とまとまったものがない。柿崎監督自身も幕末のドイツ人医師のレポを参考にしたと言っていた。ただ一つ言えるのは切腹はあくまで自裁であり(介錯はあるにしても)、刑罰として成立するためには、武士としてあるまじきことをした人間に所属組織が「恥じ入らせて」自裁を促すというメカニズムであることを理解する必要がある。つまり万事武張っていた江戸初期ならともかくこの時代になって官僚化された直参旗本に対して、将軍の弓を傷つけたいう微罪かつ過失でもって、幕閣が切腹を申し付けるということはまずなかったと言い切って良い。不条理を印象づけるためにこのような設定にしたのだろうがそもそも無理がある。
他にも、上使を迎えるのに当人が月代を剃っていないとか、扇子腹のやりとりであるとかあり得ない設定が多い。
切腹が室内で行われるのもそう。大名家などで事例はないことはないのだが、旗本の拝借屋敷程度ては介錯の刀が天井につかえるでしょう?あり得ないですよ。
細かいところは私もわからないし、少しぐらい違っていても構わないのだけどストーリーの骨格になる部分が滅茶苦茶だとちょっとね。
役者は真面目に熱演しているんだから気の毒ですよ。

あんちゃん