「人間とは葛藤と矛盾を抱える生物」FEMME フェム regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
人間とは葛藤と矛盾を抱える生物
ゲイフォビアのプレストンに暴行されPTSDに陥ったドラァグクイーンのジュールズ。ところがハッテン場で存在するはずのないプレストンを発見。最初は復讐の為に近づくジュールズだったが…
やがて内に秘めたセクシャリティを持つ者同士として別の目的で近しくなっていく2人。ゲイである事をオープンにしているジュールズとクローズにしていたプレストンの、両者のパワーバランスが時折逆転する展開も巧み。「ドラァグは単なるフェミニン表現ではなく、ジェンダーと権力のパフォーマンスそのものを象徴」とする監督のコメントが腑に落ちる。ゲイであるか否かという以前に、人は葛藤と矛盾を抱える生物なのだ。
当然ながら2人に待ち受ける顛末は悲しすぎるし、特に2人をつなぐあるアイテムが余計切なさを煽る…でも目が離せない。
プレストン役のジョージ・マッケイは『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』では実在した荒ぶるギャングを演じ、奇しくも日本で本作とほぼ同時期公開の『けものがいる』でも複雑な役どころをこなすなど(作品自体も結構クセあり)、出演作選びに芯が通った俳優だと思う。
コメントする