「共生のその先にある景色」ズートピア2 Akiさんの映画レビュー(感想・評価)
共生のその先にある景色
1. 哺乳類の枠を超えた!世界観の作り込みが凄まじい
前作で私たちは、熱帯雨林や極地など、多様な動物たちが暮らす「ズートピア」の緻密な設計に驚かされました。しかし、今作の「作り込み」はその比ではありません。
最大のトピックは、物語の鍵を握る新キャラクター、ヘビの「ゲイリー」の登場によって明らかになる**「哺乳類以外の世界」**の描写です。これまで「動物の楽園」と思われていたズートピアが、実はより広大な生態系の一部でしかなかったことが示唆されます。
特に、爬虫類たちが集う新エリア(「マーシュ・マーケット」周辺など)のビジュアルは圧巻です。毛並みのフワフワ感が売りだった前作とは対照的に、ウロコの質感、湿度を感じさせる空気感、哺乳類エリアとは全く異なる建築様式など、画面の隅々まで情報量が詰まっています。「この世界の地図はどうなっているんだ?」と、大人が思わず設定資料集を欲しくなるような、奥行きのある世界構築(ワールドビルディング)は、ディズニー・アニメーションの底力を見せつけられる出来栄えです。
2. 理屈抜きで笑える!子どもが喜ぶ直感的な面白さ
テーマは深遠ですが、映画としてのエンターテインメント性は前作以上にパワーアップしています。
ジュディとニックの凸凹バディによる漫才のような掛け合いは健在。今回はさらに、アクションシーンのスピード感が格段に増しています。複雑な伏線や社会風刺がわからなくても、画面の中でキャラクターが転がり、飛び跳ね、変顔をするだけで、劇場の子どもたちは大爆笑していました。
特に「ヘビ」という手足のないキャラクターをどうアニメーションで動かすか、という点における視覚的なギャグのセンスは秀逸です。スピーディーな展開と、カラフルで楽しい画面作りは、約2時間の上映時間を一瞬に感じさせるでしょう。「難しいことはいいから、とにかく楽しい!」という直感的な喜びが、本作の根底をしっかりと支えています。
3. 「わかり合えなくても、そこにいていい」――“違いを埋めなくていい”という救い
前作『ズートピア』は、「偏見を乗り越え、肉食動物と草食動物が手を取り合う」という、ある種理想的な統合を描きました。しかし、『2』が提示したメッセージは、さらに一歩踏み込んだ、より成熟したものでした。
それは、**「違いを無理に埋める必要はない」**という視点です。
今作で描かれる哺乳類と爬虫類(あるいはその他の生き物)の間には、前作の肉食・草食以上の、埋めがたい生物学的な断絶があります。言葉が通じにくい、生活習慣が全く違う、そもそも「わかり合う」ことが困難な存在。
しかし本作は、それを「努力して同じになる」ことや「無理に理解して統合する」ことで解決しようとはしませんでした。「理解できなくても、隣に住んでいていい」「違うままで、ただ共にある」という、**“断絶を認めた上での共存”**を描き出しています。
「みんな仲良く、ひとつになろう」というメッセージは時として、同調圧力のような息苦しさを生むことがあります。しかし『ズートピア2』は、「君は君、私は私。全然違うし、わかり合えない部分もあるけれど、この街で一緒に生きよう」という、適度な距離感を肯定してくれます。
このメッセージは、多様性が叫ばれる現代において、前作以上にリアルで、そして多くの人の肩の荷を下ろす優しい救いとして響くはずです。
総評:今観るべき、最高峰のアニメーション映画
映像美、コメディとしての質の高さ、そして現代社会に投げかける深いテーマ。『ズートピア2』はその全てが高い次元で融合した傑作です。
子どもたちは目の前のアクションに目を輝かせ、大人はその奥にある「他者との距離感」の哲学に静かに心を揺さぶられるでしょう。前作ファンはもちろん、今の時代を生きる全ての人におすすめしたい一作です。
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