「【総評:ディズニーの描く「人類愛」と「成長」の到達点】」ズートピア2 ameさんの映画レビュー(感想・評価)
【総評:ディズニーの描く「人類愛」と「成長」の到達点】
『ズートピア2』を鑑賞。一言で言えば「さすがディズニー」と唸らされる傑作でした。「人類愛」という壮大なテーマを掲げつつ、それを非常に美しいストーリーテリングで落とし込んでいます。
本作が描いたのは、単なる仲良しごっこではない「本当の意味での相互理解」。子供が楽しめる明快なエンタメでありながら、大人が観れば「対話」や「正義」について深く考えさせられる、多層的な構造が見事でした。
【テーマ考察:一方的な承認欲求 vs 対話による自己受容】
本作の核にあるのは、ヴィラン(敵)と主人公たちの鮮やかな対比です。
敵は「認められたい」という一方的な想いから自分勝手な行動に走り、周囲と同化しようとあがき続けます。
対して主人公のうさぎ(ジュディ)は、「自分は自分で良い(他者と同じでなくて良い)」という境地を持っています。しかし本作の深いところは、ジュディとニックでさえ、当初は「お互いを理解しているつもり」の「良いタッグ」止まりだったと露呈させた点にあります。
「他者と同じでなくても良いとは理解しているが、相棒とはうまくいかない」。そんなジレンマに対し、本作が提示した解決策は徹底した「話し合い(対話)」でした。
自分自身が「自分で良い」と心底理解できているからこそ、他人の「その人らしさ」も理解できる。この「自己受容=他者受容」のプロセスを経て、本当の意味で個を認め合う関係へと成長していく姿は、前作以上の感動を与えてくれました。
【脚本と伏線:計算し尽くされた構成】
ストーリー展開は非常に明快です。「次に何をするか」が常に明示されるため、観ていて迷子になりません。良くも悪くも説明口調に感じる部分はありましたが、それが複雑なテーマを万人に伝えるための「分かりやすさの担保」として機能していました。
細部の伏線回収も鮮やかです。ヘビの「靴下か半ズボンか」というコミカルな描写もしっかり回収され、俳優が市長になっているという設定も、最終的に「作品の中で自分を投影する」という形で全ての辻褄が美しく合わさりました。
【結論:既存の「正義」を疑い、自分の頭で考えること】
本作は「正義とは何か」を強烈に問いかけてきます。その象徴が「蛇」の扱いです。
周囲は「蛇=悪者」と決めつけ、誰も話を聞こうとしません。しかし、ジュディだけは違いました。まず相手の話を聞き、その結果「蛇の言い分が正しい」と判断するや否や、たとえ警察の同僚に追われる身となっても、自分の信じた正義を貫きます。
「今まで信じられていた正義や常識が、必ずしも真実とは限らない」。
既成概念に囚われず、相手の話を聞き、自分の頭で考え判断すること。この教訓こそが、本作が描きたかった真の正義像なのだと感じました。
また、他者理解のプロセスについては、船に乗り込む前に訪れたトド(水生動物)たちの街でのシーンが暗に示唆していました。
ニックが自分の常識で行動して現地のルールと衝突してしまう姿は、「自分と相手の常識は違う」という事実を浮き彫りにします。だからこそ、自分の物差しだけで突っ走るのではなく、まずは「相手を理解しようとする姿勢」を持ち、その上で対話を重ねることが不可欠なのだと痛感させられます。
最後まで「同じになろう、認められよう」とした敵に対し、最後まで「自分を貫き、対話し、考え続けた」主人公たち。
シリアスなテーマを扱いながらも、随所に散りばめられたアメリカンジョーク風のギャグがディズニーらしい楽しさを添え、最後は「踊ろう」という大団円で締めくくる。
「互いに歩み寄り、違いを認め、最後は笑って踊る」。これぞエンターテインメントの鑑だと感じました。
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