「期待を裏切らないどころか遥かに上回った完成度」ズートピア2 satoさんの映画レビュー(感想・評価)
期待を裏切らないどころか遥かに上回った完成度
まず最初に言っておくと、私は前作の「ズートピア」が大好きだ。
そしてあえて言うと、ニックとジュディのコンビが好きである。更に言うとバディでありカップルであって欲しいと思っている。
そんな私の私情はさておき、我々一部のズートピアファンは続編に怯えていた。
何故ならば前作の終わりが良すぎたからだ。
それ故に二人の関係が変化する事を恐れていた。
特に昨今のディズニー映画ではしばしば「お互いを思い合うが離れ離れになる」展開が見られる。
もし二人が離れてしまったら──そんな恐怖心を抱きながら鑑賞したが、すべて杞憂でありそして前作を上回るほどの感動と興奮と、期待を残してくれるラストだった。
前作同様のテンポの良さで進んで行く導入部分の流れは完璧で、あれよあれよと言う間に異色バディは事件に巻き込まれて行く。
若さと持ち合わせた正義感ゆえにすぐに飛び込もうとするジュディと、全てを斜に構えた態度で見ながら、本当は臆病さを隠しているニック。
その「本質の違い」が浮き彫りになり、ニックの不器用さのせいですれ違うシーンは胸が痛くなった。
種族の違いはこの作品の最大のテーマで、その違いを受け入れるのか、それとも違うからと言って離れてしまうのか。
これは何もズートピアだけに起こることではない。
この現代においても「区別」と「差別」と言う問題は日々起こり続けているのだ。
恐らくニック・ワイルドと言うキャラクターは、過去に詐欺師をやっていた事から「命の危険」に直面した経験があるのだろう(実際氷漬けにされかけていた)
だからこそ彼は「何よりも命が大事」なのである。
それに対してジュディ・ホップスは本人も自覚している通り「ヒーロー願望を拗らせている」
つまり、自分は死なない、自分だけは何とかなると思い込んでいるところがあるのだ。
だからこそ、ニックの言う「命を掛ける必要があるのか」と言う問いが二人の中で全く違う意味を持ってしまう。
すれ違いながら離れてしまった二人はお互いを思いながらも捜査を続け、お互いへの思いを再確認する形で再会する。
ニックが、あの“自分の本音を冗談で隠す事で自分を守っていた”ニック・ワイルドが伝えた「君が何より大切なんだ」と言う言葉。
あれこそ全てを包み込む程の愛情なのではないだろうか。
自身を「孤独な狐」だと称していたニックはずっと仲間が欲しかったと語る。
そしてそれは他でもないウサギのジュディなのだ。
だから、だからこそ「無茶をして欲しくない」
地位も、名声も、事件の真相も、生きているからこそ意味がある。
命を落としてまで事件を解決して何になるのか。
それでも、誰かが声を上げなければ、行動を起こさなければ、今でも辛い思いをする誰かが、泣いている誰かがいるかも知れない。
それならば、自分が立ち上がるしかない。
自分が解決するしかない。
何故ならば、貴方が私を信じてくれるから。
種族を超えて、同じウサギだとすら思える程大切な貴方が信じてくれるから。
二人の思いはどちらも正しく、そしてどちらも大切だ。
だからこそ、二人はバディなのだ。
前作と同じく脇を固めるキャラクター達の何と愛すべき事か。
ジュディに対して「一人で背負い過ぎだ」と教えてくれるゲイリー。
ニックに対して「思いは伝えなければ意味がない」と教えてくれる二ブルズ。
種族を超えて、本当に大切なものを教えてくれる。
パウバート青年のキャラクターもとても良かった。
優秀な兄や姉と違い上手く立ち回れず、家族との違いに気付きつつも、それを「個性」だとは認められない。
一緒でなければ嫌だ。ありのままではなく、兄や姉のようにかっこいい自分になりたい。
その為なら何でもする勇気だって出せる。
彼はジュディに憧れてる描写があったが「ジュディ・ホップス」が好きなのではなく、「ウサギと言う弱い種族ながら活躍した女性」としてしか見ていなかったのではないだろうか。
一族の中で立場の弱い自分を重ね合わせ、その彼女を利用する事で優越感を得ていたのではないか。
彼はただ、認めてもらいたかっただけなのだろう。でも、自分を貫き通す勇気も自信もない。だから隠れ家に逃げるしかなかった。
そのアンバランスさがひどくリアルな青年だと思った。
各所に散りばめられた名作映画のオマージュ(シャイニングネタは興奮した!)や、前作のキャラクターが顔を出す度に頬が緩むのを感じた。
続編への期待も膨らむような最後もファンには嬉しい展開だった。
そして何よりもズートピアらしい、明るく楽しいラスト。
ガゼルのライブを観ながら「ああ、私がずっと待っていたズートピアの続編なんだ」と涙が止まらなかった。
どれだけ努力しても、立ち向かっても、世界は大して変わらないかも知れない。
それでも、待っている誰かの為に活躍する二人を、私達は見続けたい、そう思える映画だった。
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