「そこは差別対象、そこは差別すらなく食われる対象」ズートピア2 弁明発射記録さんの映画レビュー(感想・評価)
そこは差別対象、そこは差別すらなく食われる対象
これはすごいわ。ズートピアはこのあと10年のディズニーを救う救世主になった感まである。
大前提、俺は1作目の『ズートピア』が嫌いではないが、そこまでいいとは思えない人間。近年のディズニーアニメ映画なら『ラーヤと龍の王国』の方がはるかにオリジナリティも高く良かったと思うのだが残念ながらラーヤはコロナ禍での超短期上映になり、そもそも存在すら知らない人が多く、世の不条理を感じる。
そして『ズートピア2』が2025年に公開されるのは俺にとってはまた別の意味が追加される。鬼滅の世界興収順位を引きずり下ろす存在としてだ。そもそも鬼滅がそこまでヒットしたのが予想外ではあるものの「鬼滅を引きずり下ろすほどの魅力がズートピア続編にあるんだろうな!」という視点にならざるをえない。
だからちょっとマイナスな印象からの鑑賞なんだよ。
そもそも『ズートピア』1作目が個人的にイマイチだと感じた点は以下のポイント。
- 動物の特徴を使ったアクションが予想よりは少ない。
- あの世界、動物のユートピア世界の構造に迫る話ではなかった。実写で普通の俳優がやっても成り立ちそうな筋書きに感じた。もっとあの都市がどうできたのか示して欲しかった。
『ズートピア2』はどうだったか。
俺が感じた1作目の弱点を克服してきたように感じた。おそらく作り手もそこを弱点に感じていて埋めてきたんだと思う。
- ヘビのアクションがすごかった。特に水面をすごい速さで泳いでいく場面。あれはヘビだから説得力があったと思う。
- ヘビのハグが巻きつくことであるという点。ヘビはアニメにおいて悪役にされることが多いイメージで巻きつきはそれこそヘビならではの攻撃方法なイメージ。なのだがおそらく作り手はそのイメージを逆手にとってわざわざヘビのハグシーン、ヘビがうさぎに巻きつく場面を入れている。
- ヘビが熱の感知能力があることもはじめて知った。ただ、金属を透視するような描写は映画ならではのフィクションらしい。
- 冒頭のカーチェイスでハリネズミを転がして進路に針の山を作り逃げる車両をとらえようとするのもいい。
- カバ警官の泳ぎがうまいこと、鼻がきく動物イノシシの探知能力が高い描写もいい。というか映画を観た後に調べたらイノシシの嗅覚がすごいことを知り勉強になった。
ー ビーバーが木をかじって牢屋のカギを作り脱獄する展開も良かった。
- ジュディが後半、ヤマネコのパウバートを追う場面で「うさぎは穴を掘るの!」という発言と共に雪と地面を掘って先回りしたのも良かった。動物に詳しくない人間にとってはああいうわずかな一言でも助かるんだよ。映画を観た後に調べてうさぎが穴掘り得意なのもはじめて知った。
- 元々ズートピアはヘビのおばあさんのアイデアだったがヤマネコがこの特許を捨てて自分のものにした、という世界観の根底に迫る種明かしは良かった。1作目で「このズートピアに住める、選ばれる動物の基準は何よ?擬人化させやすい奴らってこと?」と個人的に疑問に思っていたので。爬虫類は差別されて追放された、という歴史が示されたのはすごく良かった。
- まあでも魚もミミズもモノ言わず食われるだけの存在だったがな!ズートピアの住人にとっては「差別される動物ですらない食われるだけの存在」と何の疑問も持たれていないのもいさぎよかった。そこの線引きをしっかりしてくれたのは個人的に嬉しかった。
- 終盤にヘビが住んでいた町を発見して。ヘビの家のテーブルが割と低めでいい。あと壁にヘビの子供身長成長記録があり、人間だと縦にマーキングしていくところを横にマーキングしていたのもすごく良かった。あれがあることで「この家にはヘビの家族が住んでいた」ということが分かる。ここはすごくすごく良かった。世界観を作るとはああいうことだ。
- 日比谷のクリスマスツリーはこの映画のシャキーラのズーズーズーの曲が流れるのだが実際に映画を観ると作り手が「やったぜ!いい曲きた!そう思うだろ?」と思ってるのが伝わる豪華な歌唱場面演出だった。
- 最初の潜入捜査でジュディとニックが夫婦のふりしてベビーカーを押している描写があり。今シリーズが好きな観客は「ええ2人は結婚したの?子供はうさぎと狐のキメラになる?」みたいにドキドキしてくれたと思う。実際にベビーカーに座っていたのは赤ん坊のふりしたうさぎのおっさんだったわけだが。
- 最後の人参録音機にニックの「好きだ」を録音して窓辺で何度も再生するジュディ。このシリーズのファンは多分あの場面もすごく好きだと思う。悶えまくりグッズ買い占めて経済回して欲しい。
ということで日本公開2日目で日本橋のかなりの席が埋まる立派なヒット具合を感じ。ああ、これは今後10年のディズニーを助ける特大ヒットコンテンツになったんだな、と確信した。
個人的にはそれでも『ラーヤ』の方が好みではあるもののここ最近不調だったディズニーにリメイクではない完全新作で良作が出たのはいいことではあると思う。
前作のあらすじもほんの少しだけ見せてくれて羊おばさんと人参録音機の意味を補完する親切設計。これならさすがに不得意多数にすすめやすいし、今年の世界興収として『ナタ2』には及ばずとも2位にはなるだろう。
始まる前の映画泥棒CMまでズートピア仕様でわざわざ作っていて。いやこれできるなら今後あるマリオ映画や鬼滅映画でもやって欲しい。
TOHOシネマズのスタッフがうさぎ耳と狐耳を頭に装着させられる羞恥プレイをやらされていて、あらためてディズニーの凄まじい権力を感じた。
いや、これやらせるなら今後の鬼滅映画でも隊士っぽい格好させてやって欲しい。と言われる映画館スタッフの皆様、お疲れ様でございます。
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