「違いを乗り越えて共存するために」ズートピア2 Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
違いを乗り越えて共存するために
肉食動物と草食動物(作中ではpredator(捕食動物)とprey(餌食、獲物)という表現が用いられていた)が共存するズートピアで分断を煽る登場人物とどのように対峙するのかが主題だった2016年の前作は、詐欺師だったキツネのニックが警察官になるところで終わっていた--という辺りは今回の冒頭でも振り返られるので、前作を観ていない人でも置いていかれることはない。
で、続編である本作は、警官どうしのバディとしてウサギのジュディとニックがある事件をきっかけにズートピアの始まりの秘密に迫っていく物語。
「共存」とはいえ、前作で登場する動物たちは基本的に哺乳類だったが、今回はズートピアになぜ爬虫類が登場しなかったのか、ということが鍵になる。その意味では10年前と比べて、よりインクルーシブな観点が強まってきたと言えるのかもしれない。
しかし、実際の人間社会で「みんな平等」のようなことを言う際の「みんな」つって一体誰なのだろう?多数派の人間ばかりに目がいっていて、例えば障がいを持つ人や外国籍の人々がなどの少数派が無意識のうちに除外されていることはないだろうか?それは見落とされているだけなのか、その存在を見ようとしていないからなのか?
一方、DEI&Bの考え方がようやく浸透しかけてきたかと思っていた矢先にそれを否定するような為政者が登場して、結局、社会の分断が広がっている時代。前作の2016年の米大統領選挙でトランプが勝利し、本作が今年公開されているのも決してただの偶然だとは言えないのではないだろうか?
互いの違いに着目して相手を恐れ、反目し合い、排除するのではなく、異なるからこそ、むしろ差異を乗り越え互いをし合うために話し合う。権力や武力を行使して相手を黙らせるのではなく、対話を重ねることでのみ互いの尊厳が保たれ、誰にとっても生きやすい世界が生み出されるのであろう。
ディズニー作品の映像や音響のクオリティを云々するのは野暮。良いに決まっているのだから。でも、前回とは曲調が異なるが、シャキーラのテーマソングも健在。やっぱり最後にみんなで盛り上がってこそのズートピアだ。
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