「てっぺん取ったるぞ精神のSF版ワンピース」プレデター バッドランド 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
てっぺん取ったるぞ精神のSF版ワンピース
プレデターがもはや宇宙の謎の生物ではなく、家族にコンプレックスを描く人間の若者になったことについて、反感が湧く人の気持ちはわからなくはない。とはいえプレデターは後付けで膨らまされてきたキャラクターであり、認めた相手とは正々堂々一対一で戦うという設定なのに「機械を使って透明になる」のは卑怯千万だし、正直矛盾に満ちている。
その性質も一様じゃないし、今回のデクのような「人間っぽい変わり種」がいてもいんじゃないか、まあ面白けりゃいいです、といういささか乱暴なスタンスでおります。そして面白いという点において、これは予想をはるかに超えて面白かった。「やんちゃな若造が仲間を作って学んでいく」というほぼ「ワンピース」な話なんだけど、まさかプレデターを主人公にこんな王道エンタメを観る日がくるとは思ってもみなかった。
正直、予告編でプレデター語に字幕が付いていた時点でもう笑ってしまって、それ以上に本編ではよく喋るプレデターであり、さらに『シュレック』のドンキーなみにエル・ファニングが喋る喋る。その2人を、凶暴さにかけては引けを取らない動物植物がひしめき合う星に放り込むというアイデアはムチャクチャだけど慧眼というほかない。
で、エル・ファニングが演じるアンドロイド、ティアが上半身と下半身でコンビファイトを繰り広げる。「確かにこんなアクション見たことない!」と盛り上がり、ハイタッチにも一緒に拍手したくなったが、これが凡庸な企画であれば、ギリギリのピンチにデクが駆けつけて助けてくれるみたいな展開にしたんじゃないか。しかしティアはちゃんと自分で解決する。バドも復讐は自分の責任でやる。仲間だけど互いに依存はしない、いい塩梅のチームができていて嬉しい。
仲間の大切さは学んだとしても、彼らはそれぞれに自分のケツは自分で持てる存在として描いていることは案外重要なポイントだと思う。デクがいつのまにか手なづけて肩に乗せていたアイツが戦いの犠牲にな描写も、共に戦う相手ができれば誰かを失う辛さもあるという学びであり、アノ珍獣はかわいそうだが物語の上で必要だったのではないか。つまりベタではあってもちゃんと考えられた脚本で、決してバカげているだけではない。いや、相当にバカげてはいるのは間違いないですが。
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