「タイトルは「最弱狩猟者が死の惑星でアンドロイドと出会って最強になるまで」が適切」プレデター バッドランド Takashiさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルは「最弱狩猟者が死の惑星でアンドロイドと出会って最強になるまで」が適切
恐らく多くの人が感じているだろうが、第一作を至上としているファンにとっては受け入れ難く、そうでない人には受け入れ易い、この二つに分けられる作品だろう。私は前者の立場であるため、正直プレデターとしては失敗作だと思っている。主役をプレデターとし人類を一切登場させないという挑戦そのものは悪くないと思う。出来上がったものが駄目だっただけで。しかし、予告編の段階で私が期待するプレデターは観られないとほぼ分かっていたので、頭を切り替えて鑑賞した。結果普通のSFアクションとして観れば良作の部類に入るだろうと感じた。そこを加味しての星評価である。が、特に褒める点は思いつかないので、以降は駄目な点を書き綴るのみとなる。ご了承を。
まず大きな過ちとしてはプレデターに現代社会の人類と同じ価値観を求めた事だ。明らかに家族愛をテーマにしている。プレデターは高度なテクノロジーを持ちながら、狩猟を存在意義としている我々からすると異質な存在。そりゃそうだ異星人だし。なのに何故、そこに我々の価値観をぶち込もうとするのか意味が分からない。主人公のデクは一族の中でも小さく弱い。なら淘汰されて当たり前。家族の情の前に強さが先立つ、それがプレデターの価値観。それでいいじゃない。兄思いの弟や弟思いの兄が普通で弱いからと息子でも殺そうとする父が異常、というのはあくまで人間の価値観。むしろ成長しきる前、これ以上体がデカくならないだろうと見切りを付けられてとっくに殺されててもおかしくないとすら思う。体のデカさは強さに直結するからだ。「ザ・プレデター」で他種のDNAを取り入れる異種交配による進化が示唆されたが、その設定が生きているなら生まれた段階でコイツは駄目だと間引かれてても不思議はない。それほどのテクノロジーを持っているならそのくらい分からんものかね。
人類が一切登場しない今作、我々は誰にも感情移入することなく傍観者として観るしかない。どれほど人間らしく振舞おうとプレデターやアンドロイドの目線になって観ることは不可能だ。それを無理やり兄思いなデクくんと都合よく感情をもったティアちゃんを主人公にすることで、我々の目線に近づけようとした。これが崩壊の序曲だろう。一方で異星人とアンドロイドなので、ある程度ひどい目にあっても人間の場合ほど目を背けることもない。方や緑、方や白。赤い血が出ないのでお子様でも安心してご覧頂けますってか。
これまでプレデターと戦う人間は、それ相手に恐怖した。次々と仲間が無残なかたちで殺されていき・・・それでも立ち向かう。この流れが重要なのだ。今回のプレデターには恐怖というものが一切無い。ここが最も失敗作たる所以だ。異星人とアンドロイドのバディムービーが作りたいなら他でどうぞと言いたくなるのだ。プレデターは普通に楽しめるポップコーンムービーにしたら駄目なのだ。見えない敵にいつ襲われるか分からない恐怖、こんな死に方はしたくないと思わせる描写、奇策・奇襲に運が重ならない限りほとんど歯が立たない絶望、このように感情が揺さぶられるから第一作や「ザ・プレイ」は傑作なのだ。え?これプレイと同じ監督?ハハご冗談を。
そのうえで、妊婦や非武装者は襲わず敵対した者でも勇敢に戦った者には敬意を表する点など、プレデター側にも人類に理解できる側面もある。これで十分なのにプレデターをヒーローにしてしまってはもはや別物。ディズニーのものになってしまったから、それも当然なのが悲しい現実だ。めでたく(怒)シーズン2が決まったペットゼノモーフと一緒にそのうちランドのアトラクションに登場するのかな?
まだまだ主張したいことはあるが、このへんにしておこう・・・。この私の無念さがこれまでのプレデターを愛する諸兄に少しでも伝われば幸いだ。冒頭でも書いたが、特にこだわりが無ければ普通に観る事ができるSFアクション映画。上映時間も長くなく、内容もテンポが良いのでオススメはできる。だが私のように凝り固まった主張を抱えている人間には決して勧められない。頭を切り替えるか、血の涙を流しながら「こんなのプレデターじゃない!」と心の中のみで叫ぶ修行に耐えられる猛者は是非観に行ってほしい。
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