「認知症と向き合うには、患者の中にある古き良き思い出を探すことなのかなと思った」父と僕の終わらない歌 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
認知症と向き合うには、患者の中にある古き良き思い出を探すことなのかなと思った
2025.5.23 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(93分、 G)
原案はサイモン・マクダーモットのエッセイ『The Songminute Man: How Music brought my father home again』
認知症になった音楽好きの父と向き合う家族を描いたヒューマンドラマ
監督は小泉徳宏
脚本は三嶋龍朗&小泉徳宏
物語の舞台は、神奈川県横須賀市
楽器店を営む間宮哲太(寺尾聰)は、根っからの音楽好きで、若い頃にはミュージシャンを目指していた
ある理由からそれを断念することになったが、高齢になった今でも、知り合いの結婚式で歌ったり、老人ホームでパフォーマンスを披露していた
幼馴染の聡美(佐藤栞里)の結婚式のために帰省した雄太だったが、その帰りに父の異変に気づいてしまう
それは、帰り道がわからないというもので、家族一緒に病院で検査をしてもらったところ、「初期型のアルツハイマー」と診断された
雄太は東京に戻ることをやめ、パートナーの亮二(ディーン・フジオカ)にその旨を伝える
そして、父に免許の返上をさせ、生活の支援をしていくことになったのである
物語は、施設の職員・田所(大島美幸)から、「本人のルーティンを続けさせれば」というアドバイスを受けて、父の好きな音楽を一緒になって歌う様子が描かれていく
そして、その時だけは父に戻ることがわかり、雄太はその様子を動画に取り留めていく
その動画は聡美によってネット上に拡散され、やがてはファンを獲得していき、レコード会社も動き始める、という流れになっていた
それと並行して、雄太の本業の様子が描かれ、そして、バズり倒した挙句に、その広告のステマだったのでは?と炎上案件へと発展してしまうのである
アルツハイマーにどう向かっていくかとか、その病気の実態をリアルに描くというテイストよりは、地元に愛されて支えられた家族が描かれていて、この部分が原案の骨子なのかな、と感じた
原案の中の人がどのようにレコードを出すに至ったのかはわからないが、この映画の延長線上で父がレコードを出せるとは思えない
どのような環境を用意して、どのような過程で実現させたのか、というところが気になってしまうのだが、そもそも音楽の風土が違うので、詳細に描いても意味はないのかな、と感じた
いずれにせよ、認知症によって起こる家族との断裂という部分がクローズアップされていく作品で、息子がどのように父の忘却を受け入れていくか、が描かれていたのだと思う
認知症患者の言動に右往左往するのが家族だと思うし、そこで傷つくのは家族側だけというところがキツくて、それをどのようにして落とし込めるのかは、それぞれの関係性に依ると言える
雄太と父の場合は、音楽という絆があって、それが最後の橋渡し的な役割を果たしていた
父が高齢で過去の接点を続けているかはわからないが、そう言ったものがある人なら、この映画は理解への一歩になるのかもしれない
認知症患者が最後まで覚えているのは、もっとも深いところにある良い記憶だと思うので、哲太にとっては「雄太の音楽の先生になった瞬間」というものが、一番大事なものだったのかな、と感じた
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