「字幕が方々に出るのと、信頼できない語り手ばかり登場するので解読が難しい」コメント部隊 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
字幕が方々に出るのと、信頼できない語り手ばかり登場するので解読が難しい
2025.2.20 字幕 アップリンク京都
2023年の韓国映画(109分、G)
実際に起きた事件をモチーフに大企業の世論調査に巻き込まれた記者を描いたミステリー映画
監督&脚本はアン・グクジン
原作はチャン・カンミョンの小説『The Comments Army』
原題は『댓글부대』で「コメント部隊」、英題は『Troll Factory』で「迷惑行為増産工場」という意味
物語は、唱更新報の記者イム・サンジン(ソン・ソック)が、インタネットカフェにてあるパソコンを使用しているシーンが描かれて始まる
そして、彼のモノローグにて、これまでの「企業とメディアの関係」と言うものが語られ、大企業が中学生にしてやられた「ローソク会事件」の概要を語っていく
ローソク会はインターネットを駆使して同志を募ったと言うもので、ハンドルネーム「悪魔(イ・チャンユ、成人期:イ・ムニョン)を使用していた少年」が起こし、中学生当時は失敗に終わっていた
だが、彼が成人となった時、弟(マ・ユンウ、成人期:ソン・ムンヨン)と一緒に立ち上げたローソク会は、瞬く間に拡散され、1600万人以上を動かして、大企業が謝罪する展開を迎えることになった
サンジンはその活動を引用し、自身が巻き込まれた「ある事件」について語り出す
それは、ETCテスト試験による中小企業ウソンデータにおける顛末で、社長のパク・ウソン(イ・ソファン)は、技術を持っていない万全がテストに合格したのはおかしい、と主張する
ウソンデータのテスト時には何者かによる妨害があったと主張し、サンジンはそれを飛ばし記事として発信してしまう
だが、芸能人大麻問題で有耶無耶になったにも関わらず、その記事は拡散されまくり、さらに誤報とわかったことで大炎上してしまう
そして、サンジンは休職を余儀なくされてしまうのである
映画は、半年の休職を経て職場復帰を果たそうとするものの、約束をしてくれた局長は移動になり、新局長のピョ・ハジョン(イ・ソンヒ)に変わっていたところから動き出す
彼女は頑なに復職を認めず、そんな彼の元にある人物から接触が起こる
その人物はメディア専門の大学教授で、サンジンは彼の指定するカフェへと足を運んだ
だが、そこにいたのは大学生ぐらいの若い男で、作業用の名前はチャッタッカッ(キム・ドンフィ)と言う
彼は、一連の誤報拡散は自分たちがやったと言い、仲間にはチン・フォッキング(キム・ソンチョル)、ペクテク(ホン・ギョン)がいると言う
彼らは、あるインフルエンサーの投稿画像に目をつけて印象操作をし、それを認められて映画監督のイ・ソンウ(キム・ヒウォン)から話が持ち上がったとも言う
そして、ある筋の男(キム・ジュンハン)から接触があり、彼は万全の世論調査をするチームの長であり、彼らは世論操作を行なっている、と言う
チャッタッカッは、自分たちがしたことを記事にしてほしいと言うのだが、その理由までは明かさない
映画は、インターネットの掲示板を通じてSNSなどの画像などを拡散する様子が描かれ、いわゆるステルスマーケティングの走りのようなことを行なっていたことが示される
当初は一個人の遊びだったものが、今では企業がそれを利用して、関連部署を作っていると言う
サンジンは万全に報復をしたいと考えていて、一連のネタを手に局長へと復職を打診する
そして、見事に一面を飾ることになるのだが、それもステルスマーケティングの一環で、サンジンが再び利用されていたことが示されるのである
どこまでが本当かわからない内容で、映画のラストでは「フィクションです」と言う字幕が出てさらにややこしさを増している
ラストのクレジットはどの映画にも描かれているもので、ハングルだったので強調しているだけだったりする
物語は、告発者X(キム・ギュペク)の登場によって、一連のチャッタッカッの話は作り話だと言われるのだが、彼自身の言葉も素直には受け取れない部分がある
基本的には、サンジンが直接体験したものだけが本当で、チャッタッカッと告発者Xが話す内容にも「真実の中に嘘を混ぜている」と思う
だが、真実かどうかよりも「真実味を感じるかどうか」と言うところが重要で、映画もその構造の上に成り立っている
なので、それぞれの話には真実の部分とそれを信じ込ませるための嘘が混じっていて、それを見極めるのが非常に難しいかもしれない
個人的には「サンジンの体験が真実」「告発者二人の語りは嘘まじりの真実」であると考えている
そして、告発者たちは「本当に万全に雇われている情報操作チームの一員」であり、煙となっているものを記者の誤報と言う手段を用いて消そうとしていたのだろう
それが告発者Xが掲示板に書き込んだ一文であり、「疑念が陰謀論に変わることで得する誰かがいる」と言うことを示唆しているのである
いずれにせよ、この映画も告発者が語るものと同等で、サンジンが真実味を持たせるために嘘を混じらせていることが示される
わかりやすいのは万全に事業を潰されたウソンデータの社長の件で、ネット掲示板では「中小企業の社長は自殺した」となっているが、サンジンの物語では「サンジンを売ることで自分は万全に入っている」と言うものにすり替わっていた
万全を悪だと規定するために被害者を作り、自分が被害者になった時には加害者をでっち上げると言う手法が使われていて、それらの真贋をどのようにして見極めるかと言う映画になっている
火のないところに煙は立たないのだが、それを悪き方向に炎上させると言うところがこのマーケティングの手法であり、万全が行なっていることをサンジンも行なっている、と言う展開になっていた
言葉数が多く、字幕が画面の色んなところに飛んでしまうのでかなり見づらいのだが、配信が始まったらじっくり観るのが良いと思う
ハングルの全てを訳してはくれないので、気になるところは画面を止めて、グーグルレンズで翻訳すれば補完できると思うが、そこまでしなくても必要なところは訳されていたのではないか、と思った