「ちぐはぐな作品」果てしなきスカーレット アカハナさんの映画レビュー(感想・評価)
ちぐはぐな作品
細田守の最新作だがいろいろと苦戦している作品。どんなものかと興味本位で鑑賞したが、言われているほど酷くはなかった。作品に込められたテーマは感じるし、それなりに感動的なシーンもある。だが、人に勧められるかというとそこまでではない。
この作品、そこかしこでうまく噛み合っていない箇所が目立つ。
復讐が物語の主軸のため、結末が「復讐の成否」と始めから決まるタイプの作品だが、最初から最後までが一直線の作りになっており、代わり映えのない殺伐とした世界観と相まって、単調で淡々とした印象を与える。
ストーリーの進行に伴って随所でイベントが挟まれるが、それもかなりシンプルなものだ。このイベントが後のあのシーンへの伏線になるんだろうなあとか、このシーンをきっかけにあのキャラクターの心情に変化が生まれるんだろうなあとか、そういうのがすぐわかる。
これが細田監督が得意とする青春ものやファミリーものであればそれでいいと思うのだが、本作は終始暗く重い空気が漂う作風で、尺も2時間近くある大作だ。なので、こういった一直線のストーリーにシンプルなイベントだと、作りが浅いというかダイジェスト版を見せられているような気分になる。
また、本作は公開時よりテレビで大々的な宣伝が行われ、非常に多くの館数で上映されるなど、売れっ子監督の最新作として大変な期待を背負って登場した。しかし、ダークでシリアスなストーリーは万人受けするものではなく、これまでの明るい細田作品を期待していた観客には受け入れがたいものとなったのではないか。
製作の日テレとしては、ポスト宮崎駿の一人として細田氏をプッシュしたいのだろうが、今回はそのプロデュースの仕方ではミスマッチである。本作のポスターは公開時より2回ほど変わっており、徐々に明るい雰囲気のものへと変更されているのだが、それも少しでも親しみやすくなるようにというテコ入れのように感じられた。
本作は、シェイクスピアのハムレットを下敷きとして、16世紀のデンマークが舞台となっているが、ストーリーのきっかけはコロナ禍における不安定な社会情勢だったそうだ。争い、生と死、生きる意味など、普遍的だが難しいテーマを扱ったものの、うまく消化できないまま完成を迎えたという印象である。作中で随所に主人公スカーレットの慟哭が挿入されるが、それは苦悩する細田監督自身の叫びであるように思えた。
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