「とりあえず自分の目で見てみてと言いたい」果てしなきスカーレット しつじさんの映画レビュー(感想・評価)
とりあえず自分の目で見てみてと言いたい
私はとても好きでした。声優の声も気にならなかったし、芦田さんの歌は素晴らしかったです。映像も素晴らしい。
皆さんがここまで低く評価する理由が逆にわかりません。社会的メッセージ性や哲学的なテーマが根底にあるので、ただのエンタメとしてみてしまうと、ポカン、となってしまうのかもと私なりに分析しています。
ネット上で匿名で、集団で誰かを傷つけたり、戦争のように他人を傷めつけてまでも自らの利益を追い続けたり、自分とは異質なものを悪として排除したりする傾向のある今の殺伐とした世の中において、この映画の持つメッセージは壮大だと思います。ある意味、鬼滅くらい劇的にシンプルな構図でないと映画が楽しめないというのは悲しいです。
この映画は、時間や文化、場所を超えた人間としての永遠のテーマ(愛と生死、そして正義)を扱っています。過去と未来、生と死が入り混じった世界だと冒頭で言われているように、特殊な世界なのです。そういう世界を使わないと表現できなかったのだと思います。だから、なんでデンマーク、なんで渋谷とか、なんで中世と現代、とか言っても始まらないし、そういう視点だとこの映画のメッセージは全く入ってこないと思います。
ダンスのところについていろいろ意見があるかもしれませんが、スカーレットが復讐を背負って生きる中で全く別の時間空間を体験することで、もし別の時代、場所で生まれていたら普通の女の子らしく生きられたのかなと彼女が感じたのです。それにより運命の無情さを表しているものだと解釈しました。
あとは、盗賊たちと親しくなる場面などは、自分とは異質な人や文化に遭遇した時にどのように分かり合えるかをシンプルに表したものです。音楽や食事、ダンス等は言葉が通じなくても通じ合えたりします。あとは歩み寄ること。日本と大きく文化が異なる国で生活等したことがある方は経験があると思いますが、相手を理解できない、嫌いだ、怖い、と思っても対話を重ねるうちに何かのきっかけで相手の優しさや自分との共通点を知ることがあります。
さらに、あれだけ平和主義の聖が最後に敵をやってしまうのが違和感、という方もいらっしゃるでしょうが、これも、愛と憎しみによりそれまでの価値観が一瞬にして変わり行動できてしまうという、人間の強さや脆弱さを表しているのかなと考えました。
自分の正義ってなんなんだろうって、愛とか、生きるとか死ぬとか。そういうことについて見る人を揺さぶって考えさせる映画なんだと思います。そしてそれらの問いにはいつも唯一の答えがあるとは限らないないから、だから、見終わった後に「なんだったんだろう?」ってモヤモヤするんだと思いました。
この映画には大きなテーマに関連したメッセージや問いかけがいろいろな場面に散りばめられていますが、それに気づけるかどうかは人によるのかもしれません。酷いレビューをしている方々は、気づけなかったのだなと思います。見るか迷っている方には、まずぜひ自分の目で見て考えてほしいです。
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