劇場公開日 2025年11月21日

「細田さんの言いたいことはわかるよ」果てしなきスカーレット 紅の猫さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0 細田さんの言いたいことはわかるよ

2025年11月22日
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鑑賞方法:映画館

何度も老婆から劇中で問われる。

人とは?
生きるとは?
死ぬとは?
そして愛とは?

未来を良くしたいなら今を変えなければいけない。
細田監督作品に通底するテーマが本作でも描かれている。

馬鹿みたいに見えるほど単純化されたキャラクター造形は、復讐、友愛、嫉妬、信頼という感情や性質を表す。どの性質も現実世界ではあえなく死んでいく。
復讐心丸出して殺されるスカーレット。
ひたすら他人を助けようとして殺されかける聖。
王になってコンプレックスを解消したいクローディアス。死に方もね。
善政は敷いていたがクーデターに対し無力であったアムレット。

極端さはどの性質であろうと無力であり、死後の世界でも同じように無力である。善は無力で悪に踏みにじられ、悪はより強大な力に踏みにじられる。
阿修羅が住む修羅道のような世界で、ただ一つの解決は許すこと。暴力ではない。どんな感情であれ相手や世界にそれを求める執着。それを捨て相手を自分を許せ。
それが本作の言いたいことだと思う。

前作の「竜とそばかすの姫」もそうだが、作品で構築される架空世界が意味をなしていない。映画の構成の意味としても、映画と現実の橋渡しとしても機能していない。もっと言えば宮崎駿のように一つの世界を構築し切るだけの社会や生活が描けていない。

本作は特に男性陣の声が魅力的だが、役所広司、市村正親、吉田鋼太郎。特にこの3人のシェイクスピアやギリシャ悲劇を思い起こさせる台詞回しは聞かせる。
ストーリー的にも16世紀のデンマークなのでハムレットを意識してると思うし、配役も舞台経験を積んでいる人が配役されている。
だったら、シンプルに細田守演出の「ハムレット」、もしくは明確にハムレット翻案の現代劇で良かくなかったか。
わざわざよくわからない世界を構築する必要がない。
「バケモノの子」までは作品世界の嘘が現実とリンクして細田守独特の世界観を作れていたが、「未来のミライ」からは言いたいことを言うために世界を作っている感じが強くなっていて嘘に乗れない。この世界いる?という状態が続いている。

私は細田守監督はスランプだと思う。

紅の猫
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