「光るハナクソ、ラッキー雷 4900字超え個人的見所」果てしなきスカーレット 弁明発射記録さんの映画レビュー(感想・評価)
光るハナクソ、ラッキー雷 4900字超え個人的見所
個人的な細田作品との出会いは『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』だ。いまだにあれが一番衝撃だったし一番傑作だと思っている。以来、ずっと細田作品を公開初日に観ることを続けているのだが。
東映の演出家から始まり『ハウルの動く城』の監督に選ばれたものの降板になるもやがて新しい会社を立ち上げヒット作が出るようになった。どんどん知名度が上がっていく様をリアルタイムで体験できて。刺激的でもあったが、かなり紆余曲折を経た印象もあったのよ。細田監督という人は。
毎回、新しいことに挑戦する姿勢が見えて、俺はそのチャレンジ精神は素晴らしいとは思ってはいるものの!「ここら辺の展開はツッコまれそうだな」という瞬間がよくあり、実際よくツッコまれていて、知名度上がっていくにつれ観客の厳しい言葉も増えてきた印象があり!やっぱりオリジナルアニメ映画って難しいんだな、と毎回感じてるわけだ。でも俺は色々な人にオリジナルアニメ映画に挑戦してもらいたいんだよね。
そして今回だ。予告の時点で「大丈夫なのか?」感がある。心配だ〜頼む!いい映画であってくれ〜!と祈りながら映画館に向かったよね。
公開初日の新宿19時台にしては半分くらいしか埋まってねえー!今年は鬼滅やチェンソーがかなり埋まってたからどうしても比較されるよな。
内容は。
まあ良かったよ!少なくとも新しい表現に挑戦しようという気概は見えた。
ただ!ツッコミどころという名の面白ポイントは多い!
- 前半の見どころとも言える光るハナクソ爆弾なんなのあれ?謎の老人があれやってくれてスカーレットは逃げることができたけど唐突過ぎない?心の中で笑った。
- ラクダをひく砂漠の民みたいな人達いたけどそもそもラクダがいる世界なの?馬にも当たり前のように乗るけど動物も死後に来るの?
- 唐突なハワイアン姉さんによるフラダンス!しかもこの世界の人、いろんな国の人が集まっていて普通に喋れるのにここだけはわざわざ日本語字幕つけてハワイアンな歌になってる!これ絶対「最新のモーション技術でフラダンスシーンをやりたかったんだ!ダンス下手な聖も観れていいでしょ?」をやりたいだけだろ!
- なんかクレープかブリトーみたいな食べ物をめぐんでもらえる場面があるけど、あの世界の食料事情どうなってるの?料理できなさそうな荒野であんな食事できる?
- あれだけ銃を持った部下がいるのにスカーレットに剣を突きつけられ降参して父の最後の言葉教えてくれる黒ヒゲおじさん!部下も戦意喪失するの早すぎるだろ!
- ローゼンクランツとギルテンスターンが虚無になったら速攻で逃げる部下!この世界の部下、逃げ足早いな!
- 都合よく盗賊の上に落ちる雷!そしてクライマックスにも復讐相手のおじさんに直撃する巨大竜の口から出る雷!あれ何?欲深い奴に落ちる仕組みなの?あれも多分「巨大竜の口から放たれる雷やりてー!」だけだと思うんだよな。
- 聖が焚き火で歌い出したら!まあ、その歌っちまうこと自体も面白いんだけれども。ちょっとスカーレットが、もう謎に聖が住んでた世界っぽいところに精神が飛んで、なんか未来のShibuyaっぽいところで二人で踊ってる場面。あれ、もう笑ったよな。あれも絶対、最新のモーションで2人が踊るシーンを作りたかったんです!だけな気がする。
- もう。あの未来のShibuyaも、本当なんか似たような体格のモブだらけで、似たような踊りを踊ってて、あれはあれで地獄だよなっていう。なんか、なんか店とかもないし、踊ることしかもうできねえし、イメージだとしてもちょっとあれ虚無の世界だよなっていうところが、まあ笑ったよな。本当、最新技術で踊らせたいだけだっていうのが、よく出てた。
- あと、これはもう、本当マジで、心の中でめちゃめちゃ笑った終盤の、あの「生きたいと言え!」「生きたい!」のやり取りね。ここの面白さは語りたい。
まあ、主人公男が女性キャラに「生きたいって言え!」って言って、女性キャラが泣きながら「生きたい!」って言うのって、『ONE PIECE』ですごい有名な場面があるわけよね。で、ちょっと本当に『ONE PIECE』のパロディみたいになってるんだけど、この監督がよりによって『ONE PIECE』パロディ的なことやっちゃうの?ってところがあるのよ。
細田監督は『ONE PIECE』映画で『オマツリ男爵と秘密の島』っていう、すげえやばい映画を作ったことがあって。これ、ハウルの降板の直後だったせいか、なんか明るいノリにみせかけて、実はすげえ暗いっていう映画なのよ。
当時のONE PIECEとしては、すげえ暗い。なんかちょっと変な映画作っちゃったわけよね。
で、俺は、まあ、こういうONE PIECE映画があっても、いいかなって思ったんだけど、あれを許せないONE PIECEファンも結構いたのよ。
それぐらいもうシリーズの中でも結構叩かれてるイメージで。人気シリーズに勝手に作家性を持ち込むんじゃねえ!みたいなこと結構言われてたのよね。
だからさ、これ『ONE PIECE』を彷彿とさせるこのやり取りって、絶対オマツリ男爵を思い出させちゃうところがあるから。これ誰かが「いや、これちょっと変えた方がいいんじゃないですか?」って指摘するはずなんだけど、これそのままなんだよね。
ワンピースで叩かれた監督がワンピースパロディっぽいことやるんか!ってちょっと個人的にめちゃめちゃツボだったのよ。まあ、心の中で笑ったわ。
で、この終盤の聖とスカーレットのやり取りは、ちょっと芦田愛菜の声の演技が、ちょっとアニメ的ではないのよ。で、これ人によっては、ああ、ちょっとやっぱり声優じゃないから、なんか下手だなぁって感じると思う。
「ほら、声優に任せないから、こういうことになっちゃうじゃないか!」って、批判をされそうな雰囲気なのよ。だからそこも、まあ、人によっては許せねえだろうなと思う。個人的にはそんなに気にならないのだけど。
あと、スカーレットが聖に死んで欲しくなくて、いや、なんかもっと長生きしておじいちゃんになってうんぬんと言うんだけど、ここら辺のセリフもね。もうちょっと、なんかそのキャラクターならではだったり、今までの流れに沿っていたりした方が、より良かった感じはするんだよな。
例えば「お前が死んだら誰が包帯を巻いてくれんだよ!」みたいな。「ずっと長生きして、包帯を巻き続けろよ!」みたいな。なんでもいいんだけど、そういうちょっとキャラクターや流れに沿ったようなセリフだと、またもうちょっと印象が変わったと思うんだけど。
終盤でスカーレットはちょっと普通の女の子に戻ったのです!みたいな印象をつけたかったのかもしれないんで。でもセリフはずっと強い口調で良かったと思うのよ。
後半の山を登る所でも、聖に向かって「大丈夫?」ってスカーレットが言うんだけど、「大丈夫か?!」の方が良いのよ。スカーレットのキャラクターをそのまま続けるには。ちょっとね、やっぱりちょっとしたそういうところが惜しい感じがある。と思ったけど意図的にやってそうなんだよね。
あと、戦いが終わった最後!スカーレットが目覚めてからのデンマークの民衆よね。あの、すげえたくさんのモブが、そんなCGでたくさんモブつくれたのが嬉しいんかていうぐらい、めちゃめちゃ城前にたくさん人がいて。
しかも、スカーレットが、これから隣の国と協力します的なこと言ったら、みんな支持します!って。みんな一斉にスカーレットを支持してくれて。ちょっと都合良すぎるだろ、っていう、あの群衆ね。逆に怖いっていうね。
あと極め付けはね。最後エンドロールに流れる芦田愛菜の歌がかなりうまい!っていうね。そこが、またちょっと笑っちゃうんだよね。あの「愛菜ちゃんの歌、うまいでしょう?だからエンディングにしました!」っていうのが、すごい良く出てるのが、まあ、ちょっとうまいが故に笑っちゃったよね。
本当にね、もう監督がこれをやりたいっていう連続なのよね。
多分。前作の、『竜とそばかすの姫』でピンク髪のヒロインを CG でゴリゴリ動かすっていうのに多分はまったんだと思う。
で、今回はピンク髪のヒロインに、ちょっと戦わせたり踊らせたり、とにかく色々やらせてー!っていうのがもうよく出てんのよね。
すげえ服がぼろぼろで顔が汚れても可愛いな!唾吐きかけられても可愛いな!という風に思って多分作ってんだよ。 髪結んでも可愛いな!髪を切ってもボブにしても可愛いな!みたいな。 そういうのがもうよくわかる。
ちなみに汗や汚れはあそこまで表現できるようになったんだなと感心した。CGの不得意な部分だったから。「ここまで汗や汚れを表現できるようになりました!」ってアピールしてると思う。
スカーレットが戦う話だから、スカーレットがやたら苦しそうに「うー」とか「うわー」とか「ギャー」とか叫んだりする場面が多いのね。でね、これもね、多分、そういうピンク髪ヒロインを見たいだけなんだと思う。苦しむピンク髪ヒロインが見たい!みたいなね。多分、あの、そういう情熱から来ている。
あと、本当はね、もっとこの死者の国もね。せっかく色々な時代の色々な国の人がいる世界観なのであれば、もうちょっと何か色々な戦い方の演出とか治療のさせ方のバリエーションとか色々出来たはずなのよ。
なんだけど、まあ、多分そこも、そこまで色々詰め込む余裕がなかったんだろうと思う。
で、なんかもう都合よくそのデンマークの兵隊さんが多いなというところも、なんかもうちょっと理由が欲しかったよね。
例えば、ここの死者の国はデンマークの国の人が中心なんだけど、巨大竜の動きの影響でちょっとまた別の時代、別の国の人も混ざってしまうみたいな。
なんかちょっとした何でも良いんだけど、そういうような説明というか、なんか納得できる世界観の作りとかがあると、より良かった気がするのよ。
都合よく剣はあって、都合よく銃はあって、でも近代兵器はないみたいな。色々もう、とりあえず都合の良い、まあ、やりたい表現だけを込めました感が、まあ、すごいあるのよ。
で、個人的にはこれでいいと思うのよ。細田監督作品ってのは、昔から普通に、そんなに深くはないから。すごい人気の『サマーウォーズ』であっても、あれもそんな深い話ではないし、ツッコミどころもまあまあ色々あるし。ということを考えると、これでいいのよって、十分言えるのよ。
まあ、本当にCMで予想した通りの展開だなあっていうのはもちろんあるんだけれども、まあ、それはそれでいいのよ。うん。
これだけオリジナル作品でヒットを出せる監督って、そもそもそんなにいないから。
スタジオ地図だと名乗るだけあって、こういうオリジナルアニメ映画の監督の地図を示しているぜ、っていうところは、まあ、間違いなくある。
んで、まあ、今回も結構ツッコミどころは多いから、まあ、やいのやいの言われる可能性は高いんだけれども。
少なくとも、個人的には、『オマツリ男爵』ほどのやばさはなかったし。ちょっと擁護できない『未来のミライ』ほどのひどさもなかったし。
綺麗にまとまっている話ではあるので、まあ、良かったよと思うんだよね。これはこれで、こういうの作れること自体やっぱすごいわ、と思うのよ。
なんか、もうちょっと、世界観を突き詰められたり、セリフももうちょっと文学的になったり。結構もっと色々詰めたら、より深い感じになったんじゃないのかなっていう要素はすごいあるんだけど。
まあ、良くも悪くも、この、これくらいのラインの軽さだからいい。というところもある。
個人的に『未来のミライ』の興行収入は超えてほしい。30億ぐらい、とりあえずの目標。勿論60億円くらい行ければいいけど。
こういうオリジナルアニメ映画があるっていいことなのよ。俺もやってみよう!と挑戦する人が増えるから。
11.23追記 ポーランド→デンマークに修正しました。ご指摘いただきありがとうございます。
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