「豊潤な映像表現」その花は夜に咲く HKさんの映画レビュー(感想・評価)
豊潤な映像表現
たくましく生きる人たちが住んでいるサイゴン市中。
生活感に溢れていて、日本が失いつつある原風景のようで
不思議と郷愁を誘い、その背景だけで画面に引き込まれる。
サンと恋人のナンのラブストーリーの経過や行く末については、
映像による暗示表現が多く、モヤっと、もどかしい部分もあるが、
逆にそれが鑑賞後に長く続く余韻を残すことに繋がっていると感じた。
死と隣り合わせで格闘するナンと、ナイトクラブで美しく踊るサンの対比シーン、
足先、手先のクローズアップ、美しい水辺の風物を含めた引きのシーン、
花や静物を切り取ったり、ピントをぼかした象徴的、詩的な表現など
主人公サンの望まぬ性に生まれたことによる複雑な事情、展開における切ない心情を
余すところなく全編映像の力で語りあげている素晴らしい映画だと思う。
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