「ありがとう、スーパーマン!」スーパーマン マルホランドさんの映画レビュー(感想・評価)
ありがとう、スーパーマン!
スーパーマンは目の前に困っている人がいればどんな人でも助ける。それがどんな悪人でもきっと殺さずに警察に引き渡すだろう。
スーパーマンは人間を100%信じている。ちょっとエラそうな言い方をすれば善意の象徴だと思う。
スーパーマンは目の前で困っている人がいれば戦うことをあきらめない。その救うべき存在がたとえスーパーマンを目の敵にしたり、こちらを裏切るような行為を行ったとしてもだ。
そして今作のスーパーマンの内容は、昨今の世界情勢を表したいんだろうなということは分かる。
大国による「大義名分」を掲げて他国に侵攻したり、どこの誰が打ったかも知らない「噂」や「陰謀論」を、自分の目で見てもいないのに安易に信用する人々。
そして別の惑星から地球に来た彼を恐れる人々。これは生まれた国や人種の違いによるディスコミュニケーションを表していると思う。
などなど、なかなか社会的なメッセージを入れているなと思ったが、そこまで際どくなく、見ていて飽きさせないように丁寧に脚本に織り込んでいくところがとても見事だと思った。
スーパーマンはいわば移民。別の惑星からきて本来なら恐れられる存在だけれど、一組のとても優しい老夫婦に拾われて大事に育てられた。
よくよく考えれば、到底できることではない。しかし夫婦はスーパーマンを偏見の目で見ず、一人の人間として彼を見て接した。
だからこそ、彼は人間を信じ続けることができるのだと思う。
ここ数年のSNSの台頭により、人と人がつながりやすくなってしまったが、デマや噂が広まりやすくなって人を貶めやすくなる時代になった。目の前のことが簡単に信じられなくなる。
しかし、それが正しいか正しくないかはSNSなんか使わなくても分る人にはわかる。
相手を恐れてしまったら打ち解けられない。しかし、大事なのは自分から歩み寄ること。
人と関わることは時に誤解が生じてしまいトラブルになるが、それでも恐れず、お互いの考えを打ち出して対話をすること。
考えが違ったとしても、そこで話し合いを辞めるのではなく、「なぜそういう考えなのか?」とあきらめず相手の考えを理解しようとすること。
テクノロジーの力によってつながりやすい時代だからこそ、ちょっと泥臭いけれどアナログな手法が求められるんじゃないかな。
それにしても、ジェームズ監督は動物の使い方がうまい。
例えばSNSにデマを打っていた存在が、人間ではなくてサルがキーボードを使って興奮しながら入力しているところなど、滑稽だがコミカルで面白い。クリプトも腕白で、元気だからちょっと凶暴な面はあるけれど、ちゃんと愛嬌が感じられる。
こうした動物を的確に出演することにより、作品の楽しさを数段階レベルアップしていることに成功していると思う。
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