劇場公開日 2025年7月11日

「マーベル追従の経営戦略が完全裏目の幼稚な作品」スーパーマン クニオさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5 マーベル追従の経営戦略が完全裏目の幼稚な作品

2025年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

カワイイ

 失望の一言。DCコミック古参の最大ヒーローをワーナーがリブートしたのが1978年。リチャード・ドナー監督渾身の一作で、当時人気絶頂のジョン・ウィリアムス作曲の堂々たるテーマ曲に乗って、クレジットが空を滑空する高揚する品格から早約50年ですか。再び新たなフランチャイズを目指して再生された本作は、同じジョン・ウィリアムスのテーマ曲をそのまま使用、亡きクリストファー・リーヴに代わって、堂々の体躯と端正なルックスを備えたデビッド・コレンスウェットを主演に据え、大いに期待を煽られた。

 しかし、なんと言うことでしょう、マーベルの後塵を拝す安っぽさにがっかりです。冒頭、雪原に墜落したスーパーマンを助けに、雪氷を盛大に押しのけ派手に音楽が高鳴り、何が登場?と思いきや、登場したのがクリプトなるテリア犬とは、呆れました。さらにこの犬が全編をかき回す馬鹿馬鹿しさ。何ですかこの犬は? 続くバットマン並みの立派な基地に呆れ、安っぽいロボットが「黄色い太陽」をスーパーマンに浴びさせ、あっという間に瀕死から回復するチープ。スーパーマンの実の両親のテレポート映像と言うから、マーロン・ブランドが再現かと思いきや、ブラッドリー・クーパーなのね。母親に至ってはスザンナ・ヨークに代わってアンジェラさん? 著しく格落ちなのは確か。で。続くクラーク・ケントとロイス・レーンのアパートでの遣り取りの酷さで、本作のレベルの低さが露呈する。

 要するにジェームズ・ガンなる監督に、ドラマの演出なんぞ到底無理ってこと。無駄に長く、要点を絞り切れず、カット割りもいい加減。この口論シーンが本作の要のはずで、主人公2人の微妙な関係性で全編を引っ張るはずなのに。CGてんこ盛りの派手な映像に長けた方なのかもしれませんがね。そしてなによりマーベルに寄せすぎなのが大失敗の原因なのです。やたら登場するキャラの混線に、明らかにアベンジャーズに似せたフランチャイズにしたい、志向が明々白々。ワーナーのコントロールを超えたDCコミックサイドの商売っ気が勝ってしまった挙句の落とし穴って訳。マーベルに遠く及ばない焦りが、よりによってマーベルで成功したジェームズ・ガンを会社の重役に据え、任せてしまった、もう完全に経営判断ミスのレベル。

 kaijuなるウルトラマンに登場するような巨大怪獣が総てを物語ってますでしょう。まさか着ぐるみではないでしょうが、それを目の玉チクチクなんて、見るに堪えません。そしてロイス・レーンですよ、華がないですねぇ、コレンスウェットに全然相応しくないですよ。マーゴット・キダーのお転婆ぶりが懐かしい。その他もろもろの新聞社側、超人側もどうすればこんなに安っぽく出来るのかしらのレベル。

 褒めるところはクラーク役のデビッド・コレンスウェットで、193cmの長身が冴え、威風堂々のクリストファー・リーヴよりは遥かに人間的に甘いところが魅力です。だから「本当は地球を侵略に来た」という重大発言を貫いて彼を悩ませればリブートに相応しかったのにね。対するレックス・ルーサー役にニコラス・ホルトと言う、本作で一番の有名スターが、まさかのスキンヘッドで大熱演、スリムな190cmながら、結構な迫力が本作の数少ないポイントなんですね。もっとも生身の人間も限られ、感情丸出しってのも彼くらいのせいでもありますが。

 「スパイダーマン」同様に、公式の生身と秘密にすべきスーパーヒーローの使い分けの狭間がドラマの骨子なのに、早々にロイスは知っているのは新生第1作何ですから、嫌ですね、拍子抜けもいいところ。約300億円の製作費、回収までに相当時間を要しましょうね。

クニオ
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