「【”さむがりやのペンギン”韓国での未来を見出せなくなった28歳の女性の生きづらさを感じる様と、様々な葛藤を乗り越えて新天地へ旅立つ姿を描いた作品。】」ケナは韓国が嫌いで NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”さむがりやのペンギン”韓国での未来を見出せなくなった28歳の女性の生きづらさを感じる様と、様々な葛藤を乗り越えて新天地へ旅立つ姿を描いた作品。】
■ソウル郊外で両親と妹と住む28歳のケナ(コ・アソン)片道二時間かけて、金融会社に通う日々。
大学時代からの恋人ジミョン(キム・ウギョム)との関係もナカナカ進展せず、両親からは転居先の家の購入費用をあてにされている。
そんな閉塞感の中、ケナは会社を辞めニュージーランドへの移住を決め、留学する。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・ご存じの通り、韓国は超学歴社会であり、ソウル大に不合格になり自殺する若者を含め、作中でも言われるように自殺率が世界でも高い。
・そんな閉塞感を、序盤からケナの不機嫌そうに会社に行き、理不尽な会社のルールに苛立ち、ジミョンからは”僕の稼ぎで・・”などと、勘違いもいい加減にしろ的な発言をされて、更に苛立っている。
■だが、観ているとケナも頑張っているのだろうが、ちょっとなあ、というシーンが序盤に結構ある。この映画の時系列は韓国シーンとニュージーランドシーンが入れ子で描かれるのだが、冒頭、ケナがニュージーランドに旅立つシーンでのグチャグチャのキャリーケースの中身などを見ると、ちょっと貴女もなあ、と思ってしまったんだよね。で、そこから取り出された絵本が”さむがりやのペンギン”である。
観ていれば分かるが、明らかにペンギンのパブロはケナのことである。
・ケナはニュージーランドに到着し、英会話学校にも通うのだが、明らかに英語の能力が低いのである。”仕事で・・。”などと言っているが、明らかに準備不足であり、彼女が現状から逃げるために、ニュージーランドに来た事が分かるんだよねえ。
そして、ニュージーランドも決してこの世の楽園ではない事が分かる幾つかのシーン。韓国から家族の男の子の家庭教師をケナがしている家の男の姿・・。
■けれども、韓国の大学の同級生で、司法試験に臨んでいた男が自殺した事で彼女は、一度韓国に戻るのである。
そして、死んだ同級生とハンバーガーを食べるシーンなどを含め、ケナは今一度、キチンと全ての状況をリセットするのである。
そこで別の視点で見た、管理人として働く父の姿。そんな父の健康を気遣ってお弁当を作ってあげる母の姿。
そして”さむがりやのペンギン”の絵本をサラッと読んだ時に目に飛び込んできた言葉にハッとするケナの表情。
<そして、再び、ケナはニュージーランドに旅立つのである。
序盤、中盤は”ちょっと、甘いんじゃないの?ケナさん”と思うシーンが結構あったのだが、彼女が30歳になって、背中とお腹にザックを担いで二度目の旅立ちをする時の、覚悟を決めたかのようなキリッとした表情は何かが吹っ切れたんだろうな、と思ったな。>
<2025年4月27日 刈谷日劇にて観賞>