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無題
良い映画
多面的に捉えないと真実の実態は見えない
日本における新型コロナウイルス感染の起点となった豪華客船ダイアモンドプリンセス号で発生した集団感染を医療従事者にフォーカスして描いた重厚な作品である。当時はマスコミ報道でしか知り得なかった集団感染の実態に医療従事者役の演技派俳優達の迫真の演技で迫っていく。当時、マスコミ報道だけで集団感染の実態を判断した自分の未熟さが身に染みる。多面的に捉えなければ真実の実態は見えない。当時の真実を知る為に日本人として観るべき作品である。
2020年。船内で新型コロナウイルス感染が発生したダイアモンドプリンセス号が横浜港に入港する。当時、日本には新型ウイルス感染対策組織はなく災害医療のボランティア的医療チーム・DMATが急遽対応することになる。彼らは満身創痍になりながらも未知のウイルスに敢然と立ち向かっていく・・・。
劇的展開はないが、その方が作品をリアルに感じることができる。DMATのリーダー・結城秀晴(小栗旬)と医師・仙道行義(窪塚洋介)、隊員・真田春人(池松壮亮)、厚生労働省の役人・立松信高(松坂桃李)らが、コロナ患者を救うため、感染拡大を防ぐため次々に発生する難題を反発、衝突しながらも愚直に諦めずに乗り越えていく。船内のクルーも同様である。乗客の願いを叶えるために懸命に奔走する。集団感染の最前線にいる彼らは己の任務を愚直に全うしていく。揺るぎない使命感を貫く姿に自然に涙が溢れてくる。当時、我々が知らなかった真実を描くことで、集団感染の多面的な真実が浮き彫りになっていく。
コロナウイルス感染終息後に本作が公開された意義は大きい。今だからこそ、当時を客観的に捉え、冷静に振り返り多くを学ぶことができる。今後、更に強力な新型ウイルスが発生するだろう。今回の教訓を活かしたい。過去の災難の教訓を知力に変えて更に大きな災難を乗り越えてきたのが人類の歴史なのだから。
本作は、真実は多面的であり、一面だけでは真実の実態は分からないことを我々に強く示唆している秀作である。
当時の不安感を前提として作られたことの是非は?
本作で取り上げた、ダイヤモンドプリンセス号でのコロナ発症とその後コロナ禍の出来事は、極めて政治的出来事であった。政治的とは当事者が多数いるという意味だ。患者、医者、看護師、政府(官僚)、政治家、日本国民そして世界国々と当事者は多い。本作では、船の患者、その家族、医師らを当事者として焦点を当てている。
外国人の演者が割とまともだった。邦画での外国人役は演技がアマチュア劇団レベルというのが多いのだが、今回のは割と堂に入った演技をしている。夫が発症し1人船に残された女性を演じた方は、夫を旅に誘った後悔をよく演じていた。
マスコミを「マスゴミ」として描いているが、やや類型的である。マスコミの人間も様々であり、「マスゴミ」として描くにしても背景などもっと深みが必要ではないか。人はそう単純な生き物ではないのだから。
この映画は、あの時の多くの人々が持っていた不安感をベース(前提)にしている。なにかとてつもない事が起こりつつある。得体の知れぬモノが迫っているという、ホラー映画が持つ出来事への不安感である。
そう、本作はホラー映画として作られるべき作品のはずだったと思う。
しかし人々の不安感をあまり上手く演出できたようには思えない。あの時、船の中ではこんな事が起きてましたという報告感が強い。それが制作目的だとはいえ、何か物足りない。
政府内でも相当の暗闘があったはずだが、抜けている気がする。
ほんの五年前の出来事なので、あの不安感を多くの人々は肌感覚で覚えているから描く必要はないという判断もあるかしれない。が、五十年後の人々がこの映画を観た時、どう感じるだろうか。
状況はわかるとしても、身に迫る気持ちは起きないだろう。名作と言われる作品は時代を越えるというが、それは作り手の用意周到な計算があるからだが、本作にその計算はあったのだろうか?
船が給排水のために外洋に出る場面は印象的だった。鮮やかなライトをつけながら、漆黒の闇の海を行く様は、その後の世界を暗示しているかのようだった。
窪塚さんと池松さんに味つけされた真面目でドキュメンタリーな作品
評判が良いので映画館で鑑賞。当時報じられていたダイヤモンド・プリンセス号のニュースを改めて思い起こした。
現場で抱えていた想像もしなかった実体を、本作を通して初めて知ることとなった。
当時は、感染力の高い恐ろしい未知のウイルスが国内でまん延するかも知れない水際で、治療法もワクチンも存在せず、医療現場の体制も整っていなかった。
このような緊急事態において、有志の医療関係者に「依存」するしかない極限状態だった。
本作では、結城医師をはじめ医療従事者は心を正常に保つために「人命を最優先」「人道的な正しさ」をその行動原理としていた。
自己や家族を犠牲にしながらも、世間から謂われのない批判に晒されなければならない悔しさや憤りは計り知れない。
それでも、自分たちが最前線に立たなければ、事態は立ち行かなくなるという恐怖と責任感が、彼らを突き動かしていたのだ。
このような状況の中で戦う医療従事者を「善」として、彼らの視点から当事者の覚悟や苦悩が画かれているが、そこがまさに見どころになっている。
矢面に立ち、甚大なリスクを背負いながら即断即行動を下すことの重みを目の当たりにし、医療従事者の方々への心からの感謝と敬意を抱かずにはいられない。
一方で、陽性の可能性がある者と自分の子供が接触するのを避けたいと考えるのは、至極当然な人間の感情である。
自分と自分の身近な者を守るという行為は、人間にとって最優先されるべき本能的なものであり、それが脅かされることは恐怖であり「悪」と認識される。
そうした世間の恐怖をマスコミが煽り、医療現場との対立構造を作り出すことで、医療従事者の善性を際立たせている側面も感じられた。
本作は、スター性のある小栗旬を起用しているにもかかわらず、エンタメ要素を極力排し、様々な立場の感情に配慮していると感じる。
ドキュメンタリーまではいかないものの、感情の起伏を抑制している点も、この作品の良さになっている。
窪塚扮する医師の強い覚悟と、池松扮するの医者の芯の強さが本作を際立たせていて、作品に味がついている。窪塚洋介がかなりカッコ良かった!
感動して涙が止まらない作りにはしていない。
エンタメ的ヒューマンドラマを期待されている方には向かないかも。
1番ムカつくのは、自国語で喚き散らす外国人旅行者だった。
広く浅く
感染症が広がる船内。必死に治療にあたる医師たちや、乗客一人ひとりに真摯に向き合う乗務員の姿に心を打たれた。
その様子を見て、「あの時、自分にできることは本当に何もなかったのか」と自問自答し、悔しさと感謝の入り混じった思いで涙が溢れた。
ただ、主人公は対策本部に駐在し、現場の最前線には立たない立場。船内で指揮を執るのは別の医師で、下船後の搬送手配なども厚労省の職員が担っていたため、彼自身の苦悩はややぼんやりと描かれていた印象。
一方で、マスコミの描写はあまりにも“ペラい”。ペラすぎる(笑)。
ただただ世論をかき回して報道に注目させようとする姿勢が不快なのに、その後すぐ、誠実に働く医師や乗務員のシーンが続くことで、彼らとの対比がより鮮明になってしまっていた。
マスコミにも、彼らなりの信念や仕事への矜持があったはず。そこをもう少し丁寧に描いていれば、作品全体に深みとバランスが出たのではないかと思う。
そして窪塚洋介。はじめは誰だかわからなかったが、エンドロールを見て驚いた。落ち着いた渋い演技で、作品を引き締めるような存在感を放っていた。
今だからこそ、たくさんの人に見てほしい
映画にして頂きあの時の反省点など整理できた
ありがとうDMAT
医療従事者
どこまでが真実なのかは分からないし、綺麗事の理念だけで成し遂げたとも思えない。
が、実際あの船で感染は起こり、未知のウィルスは猛威をふるい、そのウィルスに立ち向かった人達がいるのは事実だ。
結びとしては、船の問題が片付いたになってはいるが、未曾有のパニックとしてはほんの入り口なので、ハッピーエンドになるわけもない。
僕らはその後の時代を生きている。
振り返るには早いタイミングだとは思う。
が、当時、何が正解かも有効かも、どんな脅威なのかも分からない中で、その渦中に飛び込んだ人達がいる。医療従事者の方々にはホントに頭が下がる。
自分の命どころか、家族の人生をも賭けてる。
目の前の命に向き合い、最善を尽くした人達。
そんな人達の物語だった。
皆様、熱演だった。
ただ、ホントにコレは想像なのだけれど、あんなに整然としてたのだろうかと思う。
阿鼻叫喚とまではいかないが、もっと壮絶だったんじゃなかろうかと思う。勝手にオブラートを想像してモヤモヤしてる。
人の善意はいっぱい映っていたけれど、人の悪意は限定的だったように思う。
下衆なマスコミと無責任な政治家とか。
光石さんとかハマってたなぁ。
よく出来た脚本だなぁと思えた。
立松さんは偉くなってくれたのかなぁー
…ああいう人がああいう人のまま偉くなれないから、この国の将来が不安でしかないんだがな。
気持ちは分からなくはないんだが、風評被害ってシャレになんないなぁ。
そういう誤解を解いてあげるのもマスコミだと思うのだけれど、元より信頼が失墜してるからそんな役割も今更担えんだろうなぁ。
そうなんだよな…。
なんか食い足りなかったのは混乱がそこまで描かれてなかったような気がしてて、何に立ち向かってじゃなくて、どう立ち向かったかにフォーカスされてたから「感謝」みたいな感想になったんだろうなぁ。
13名が亡くなったという事実
あの当時は新型コロナウイルスの感染者が少しずつ増え始めていたものの、後にあそこまで猛威を振るうウイルスとは知らなかった頃です。ダイヤモンドプリンセス号のニュースはよく見ていましたが、中の様子は分からなかったから、感染者を中に閉じ込めたままなのはどうなんだろうかと思っていました。本作では描かれてなかったようですが、アメリカの助言だったんですね。
確かに、患者の受け入れを拒否する医療機関が多かったから、そうするしか無かったんだなと思います。
日本ではそれまでウイルスの爆発的な感染なんて無かったから、感染症対策のシステムが構築されてなかったのも仕方ないことですが、そういう事態を予測することも無く、医療に関する国の予算もどんどん削られていましたから。
そんな中でも戦ってくれた医療従事者、関係者の皆さんには、頭が下がります。それなのにD-MATの方々が差別され、酷い言葉を浴びせられたり、その家族までが職を失ったり、同じ医療関係者からも中傷されるような目に遭っているというのは、報道番組でも新聞でも度々取り上げられていましたよ。
戦争中やもっと前からあった迷信的な偏見や村八分的な思考と何ら変わらないです。
本作は当時の緊迫した状況を伝えてくれますが、まだ描き切れていない事が多いと感じました。
クルーが頑張ってくれたこととは別に、アメリカの運航会社の対応は色々まずかったと思います。隔離が始まって食事を各部屋に運んでくれるようになっても、パンを素手で配膳しているのを不安に思ったという日本人客の証言あり(テレビより)
検疫の様子も見たかったです。
アリッサ他2名のクルーはその後どうなったんでしょうか。
感染症専門の教授が乗船し、ゾーニングが正しく出来ていない事や、役人の認識の甘さを批判していたのはテレビでも中継しました。その指摘はもっともで、なぜ教授が船を降ろされることになったのかは知りたいですね。(お役人が降ろしたんだろうと思ってます)
「面白いことになりそうですよ」と言った架空のテレビ局の記者のセリフは事実ではないですよね。でも主人公は面白がられていると感じたかもしれません。船内はまるで野戦病院のような状態だったのに、まわりはただ見ていただけでしたから。
最終的に、3711名中、感染者712名、死亡者13名、医療機関への搬送者769名、搬送先16都府県、150病院でした。ウイルス以外の原因で亡くなる事案をも含めて被害を最小に食い止めようとしてくれました。
最初に2名が亡くなった時、「でも、船の上ではない」というセリフは、D-MATを擁護する為に敢えて言わせたんでしょうか。震災の時に関連死を気に病んでいた方々が、まるで責任を押し付け合うかのようなお役所的発言をしたとは信じたくないです。
本作では、窪塚洋介さんがカッコ良かったです。池松壮亮さんも良かったです。森七菜さんが船内を走り回って奮闘する姿、ふくらはぎが生命力に溢れていて魅力的でした。
池松壮亮さんのリアル
やはり見ておくべきだと思い上映館へ。人も疎らなレイトショウで助かったが、どうしても泣けてきたのは当時の閉塞感が蘇ってきたからか、そんな事態にあっても美しい人間性が見られたことに改めて胸打たれたからか。
最も印象深かったのは池松壮亮さん。医者の仕事は単調な検証と対応とを地道に繰返し積み重ねていくことがほとんどで、地味で人の汚い部分にやむを得ず踏み込んでいく、かっこいい劇判なんてつきようもない局面が大半。それを体現されていたようで、事前に読んでいた監督・脚本の意図に最も忠実だったように思う。窪塚さんはかっこよすぎ、とは思ったけれど、こういう医者、いるいる(笑)と思った。これ程無骨で渋い役をされるのだとIWGP以来しっかり拝見することがなかった(すみません)ので驚かされた。
そして光石研さん。今回の下衆(ある意味では自分の職業に忠実なわけだけれど)なテレビマンも、他の作品での温厚な父親も、同じ顔貌と風体なのにきちんと”わかる”。改めて凄いと思った。
そのラインを踏めるか?
「えっ、○○さんコロナ? あらあら…」そんな感じになった現在、薄れ...
「えっ、○○さんコロナ? あらあら…」そんな感じになった現在、薄れだしているあの頃の世の中を改めて思い出させてもらうに良いタイミングだったと思います。当時、生死をかけてコロナに対峙してくれた医療従事者や関係各方々の、我々が目にすることができなかった姿、事実(多少の演出はあるかと思いますが)をこうして伝えてくれた企画・制作者に感謝です。
冒頭からもう胸アツのセリフが行き交って小泣きの連続。また、頑張ってきた方たちからの思い、メッセージがセリフ一つひとつに込められていることをしっかり受け止めなくてはいけないでしょう。そして邦画においては大抵、エキストラ役か問題起こし役(悪役含)で使われやすい外国人客(役)にスポットを当て、ひとつひとつのサブストーリーの主役としてしっかり見せ場を作った脚本にも拍手。一番泣きました。
一点、気になったのは厚労省役人・立松 信貴(演:松坂 桃李)はどこら辺まで実在の方に似せたのかなと。あの融通の利かせ具合、年上とはいえ結城(小栗 旬)からの呼び捨ても官僚のわりに普通に受け止め、現場にも立ち入り、そこで自分がしたことに反省する好人物像。「厚労省も頑張った」は受けとめますが、エンディング間際の電話シーンは蛇足でアピールし過ぎ。せっかくのこの物語が、そういう意図・コンセプトで作られたのかと邪推してしまいます。
とはいえ、多くの方がコロナ禍の時代を共にしたわけで、振り返り、今後同様の事が起きた時に今度はどのように考え、行動するのか、その心構えを持ち続けるためにも観に行く価値のある映画だと思いました。
未知に困惑する現場の大変さを知る映画
人間だからこその愚と徳
人間の愚かさ
覚えてますか?
初期のコロナで感染防止の為に
隔離した豪華客船。
それを題材にした物語。
とにかく怖い。
感染も怖いけど一番は
マスコミとそれに乗せられる民衆。
自分の子供が何も悪い事してないのに
クラスで「バイ菌」と呼ばれる理由が
父親の自分が医者だから……って何?
心に刺さる辛い涙。
でも、
ヤバいネタほど人は集る。
倫理もなく数字を追うだけのマスコミと
他人の不幸が大好きな人間達の愚かさ。
自分も人のこと言えないよ。
そして現場は現場で
みんなの言い分が全然違うプロジェクトを纏める。
しかも世間ではバッシングされながら。
そして、失敗するとそこには死。
地獄だよ、本当に。
映画だから見てられるが
仕事であの現場に行ってたら
鬱になってる気がする。
このスタッフに
心の底から敬意を表する。
そして、映画としてもみんなに観て欲しい名作。
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