「無知だった自分への懺悔と、未来への教訓を得られた映画」フロントライン かにかまさんの映画レビュー(感想・評価)
無知だった自分への懺悔と、未来への教訓を得られた映画
まず初めに、この映画に携わったすべての関係者の方々、そしてコロナ禍で最前線に立ち続けた医療従事者、政府関係者をはじめ、社会を支えてくださったすべての人へ、心から感謝を伝えたい。
これまで映画を、ストーリー性や映像美といったエンタメとして楽しんできた。
しかし『フロントライン』はその軸とは異なる、未来に残すべき社会の記憶としての財産だと強く感じた。
何が真実かは簡単には語れない。それでも、この作品がこれまで持てなかった視点を与えてくれたことに、深い価値があると感じる。
真実を伝えるとは何か、を徹底して問い続けた制作の姿勢に、ただ敬意しかない。
正直、当時の自分を振り返ると、劇中のマスコミと同じように、どこか他人事として面白がり、本質から目を背けていた。それを今、とても恥ずかしく思う。
この映画を通して最も感じたのは、人はそれぞれ信念や感情を持ち、自分の視点でしか世界を見られないということ。日常の中でその視点は自動化され、当たり前になってしまう。
だからこそ、自分の信念や感情のとなりに、ほんの少しだけ他者の思いを想像して置いてみることが大切なのだと思った。
その信念や感情が善か悪かは、受け取り手によって変わる。
でも、自分が想像して寄り添ったその思いが、どこかで誰かと重なり、目が合う瞬間があるなら、その人は救われる。そう信じたいし、だから私はこれからも、想像することを忘れない人でありたい。
最後に。
コロナ禍で理不尽さや不条理、行き場のない感情に苦しんだすべての人へ。
その気持ちに当時気づかず、傷つけた無関心な世論の1人として、心から謝罪申し上げます。
この映画が一人でも多くの人に届き、その声が風化されませんように。そして未来にもし同じような状況が訪れたとき、今度こそ一人でも多くの人を救える日本でありますように。
