「作品に下駄を履かせることの罪深さ」フロントライン 狐色さんの映画レビュー(感想・評価)
作品に下駄を履かせることの罪深さ
まず奇妙だなと思ったのが他の方のレビューを見ると映画の感想ではなくコロナ禍の自分の境遇をアレコレ語ってたり全ての医療従事者の方々に感謝ですぅ〜と急に医療者を拝み倒したりきちんと作品の評価をしてる人が極端に少ない。その時点で嫌な予感はしていたが……
エモーショナルな演出を避け淡々と描こうとしてるのは伝わるしその狙い自体はいい。しかしそれをエンタメとして成立させるのは至難の業でこの映画も残念ながらつまらなさの一因になってしまっている。
またそうした演出と役者のチョイスが合ってない。何故エモ演技一本槍で頑張ってる小栗旬を主役に据えたのか。(その点では池松壮亮はいい仕事をしてたと思う)
でもこの演出の方向性ならストーリーはあの船上での出来事を淡々と冷徹に、清濁併せ呑みでリアルに描いてくれるのでは?と期待したがそこはそうでもなく所々分かりやすいご都合主義、お仕事ドラマ的なヒーロー譚めいた話が展開する。
演出はリアルで抑えめに、でもストーリーはファンタジックでコミックじみたご都合主義。この映画は何処を目指してるんだろう?と困惑する。
この内容なら登場人物がキスするレベルで顔を近づけながら「俺達は絶対この国にウイルスを入れるわけにはいかないんだ!!」とか怒鳴る歌舞伎演技をやってたほうがまだ様になったと思う。
でもそれだとソーシャルディスタンスが取れないか笑
演出と脚本が違う方向を向いている、どちらにも振り切らない気持ち悪さ。それゆえ単純に映画として「面白くない」
他のSNSで見たレビューでこのような言葉があった。
『フロントラインはあのコロナ禍の事を映画にした事自体に価値がある。面白さは二の次でいい。全ての医療従事者に感謝します』
これがこの映画を端的に表しているように感じる。
コロナ禍の始まりを描いた。という下駄の上に存在してしまったが故にいち映画作品としての評価もしてもらえない。
金出して見るもんじゃなかったな…という憤りとともにある意味なんと可哀想な映画だろう。と思ってしまった。
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