平場の月のレビュー・感想・評価
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いきどまり
50代という年齢を重ねてからの同級生との再会、そして恋に落ちるという、大人も大人なラブストーリーというところに惹かれて鑑賞。
学生の頃に出会った2人が時を越えて50代で出会うという斬新な展開とは裏腹に、王道ど直球のピュアな恋愛というところに不意打ちされて結構面白かったです。
年齢も年齢なだけに哀愁漂う雰囲気が良かったですし、恥ずかしいくらいの遅れた青春の体現のような描写は心がムズムズしてしまいました。
たまたま地元で出会うというシチュエーションも偶然中の偶然だと思いますし、もし自分が50代になってかつての想い人と出会っても認識できるのかな、そもそも会えるのかなと考えてしまい、そんな中で出会えた今作の奇跡はフィクションならではだけど現実にもあり得るものだから良いバランスだなと思いました。
一緒に焼き鳥屋で食事をするってのがめちゃめちゃ最高で、他愛のない話を歳を重ねてするとまた違う感情が出てくるんだろうな〜と思いましたし、宅飲みは50代でもどこかドキドキするんだろうなーとニヤニヤしながら観てしまいました。
初恋を思い出したかのように須藤に尽くしまくる青砥はちょっとキモいなと思いつつも、自分もそういえばそんな事したことあるなって懐かしくもなるのが不思議でした。
友情を越えて男女の関係になるところでファンタジーという言葉が出てくるのがとってもしっくり来て、歳をとってからこんなに性に奔放になってしまう未来は想像できないですし、本当に新体験なんだろうなとキスシーンを観ながらポップコーンを貪っていました。
おそらくだけど病気が絡んでくるよなーとは思っていましたが、ガッツリ癌に加え、人工肛門という体の悪さ以外にも臭いにも気を遣わないといけないという苦しみに襲われる展開は自分だと思うと本当に辛いなと思いました。
自分では予期せぬところ、対策していてもどうしても気になってしまうという症状はずっと背負っていくと思うと中々にきついです。
どうしても青砥目線の方で観てしまったので、病気の経過を報告してくれなかったのはなぜか、とも思ってしまいましたが、恋人からもう一歩進んで後が引けなくなったからこそ報告できなかったのかなと思ってしまいました。
終盤の堺雅人さんの熱演が個人的にはオーバーすぎひん?となってしまってうまいこと感動に乗れなかったのが惜しかったです。
目ん玉飛び出るんじゃ?ってくらい大きく目を見開いて、展開を受け入れるシーンだったり、居酒屋での号泣シーンもちょっとやりすぎかなぁって思いましたし、泣かせたいんだろうなーと冷静になってしまいました。
何気ない日常が彩られ、その日常は失ってしまったけれど、また何気ない日常を生きるために日々を続ける終わり方は長い人生を体現しているようでじんわり沁みましたし、「いきどまり」が包み込んでくれるような楽曲だったのもあって良かったです。
もう恋愛自体自分にとってはファンタジーなのかなとしみじみしてしまいました。
鑑賞日 11/14
鑑賞時間 16:40〜18:50
焼き鳥屋
泣けたし、考えるよな。
50ちょっとで余生をどう生きるか。
最後の号泣がやりすぎと言う意見をみましたが、1年間温泉を楽しみにしてて、それ以降の展開も夢みてて、でも告げられずに亡くなってて。
あれぐらい泣かないとやってられない。
焼き鳥屋のマスターがいてくれるあの空間で、グッと来てしまったんだと。
あぁ、切ない
ラブストーリーというより、人生のドラマだな。
恋愛映画、だけじゃない
分類上は恋愛映画になるんだと思う。
それは正しいんだけど、私の中ではそれだけではない思いがあります。
登場人物と世代が近いからだと思う。原作を読んでいたのもあるかもしれない。
もし私が若かったら
「なんて切ないラブストーリー!」と感涙したと思います。
または「まーた病気で死んじゃって泣かせる系ね」と突き放したか。
今は病気も死も、若い頃よりは現実的になりつつありでも高齢者よりはまだ想像の範疇。
そんな近すぎず遠すぎずの立ち位置から「もし私に同じことが起こったら、差し出された手を振りほどいて一人で立ち向かえるだろうか」とか考えてしまった。
井川遥さんが良かった。きれいなんだけど人生の雨風を被ってきたアラフィフらしかった。
私の中で須藤は「太くて孤高の猫」のイメージで(猫は死期を悟ると飼い主の前からいなくなる、の言い伝えの影響)そうそうきっと須藤ってこんな感じ、と思いながら見ていました。井川さんってもともと私の中では猫っぽくて、月夜を眺めているのが似合ってた。
対して、堺雅人のラブシーンはあまり見たくなかったかな。どうも日曜劇場のイメージにひっぱられてしまい「おいおい半沢、何やってんだよ」と心の中でツッコんでしまった。
でも、原作を読んだ時は平面に感じていた物語がすごく立体感をもって描かれていて、ジワッと染み入る映画でした。結果的には悲恋なんだけど、人生も後半になった人の心を月明りでポッとを照らすような、映画っていいなぁ~と思った。
原作は最初から最後まで青砥目線で書かれているのだけど、映画を観ることで伝わった須藤側の心情もありました。
そして今は、薬師丸ひろ子の「メインテーマ」が頭をぐるぐるしながらこのレビューを書いています。この映画に合ってたなあ。どうせなら「50年も生きてきたのにね~」と2人で歌ってほしかった。
しかし、須藤は青砥をあんな断ち切り方をしたら、もしかして青砥は一生須藤の影に囚われたままになってしまうかもね・・・。
五十路の恋
最年長の大森南朋が53歳、椿鬼奴も53歳、以下堺雅人52歳、井川遥と安藤玉恵49歳、一番若いのが宇野祥平47歳ってことで、なかなかアダルトな面々です。どういう世代がこの映画を見に来るのかなと想像するのも面白いです。現状の映画館利用者は60歳以上の人が多くを占め・・・要するに1400円で観られる世代がもっとも映画館に通っていますね。しかも6回見れば1回タダなわけで、60歳以上になれば実質1200円です。
それは私がここであえて言わなくともこのサイトに記事をアップしているみなさんなら御存知の通り。50年以上映画館に通っている私にとっては映画鑑賞代って本当に値上がりしていないと思うわけです。実は1960年代から70年代にかけての10年間でバク上がりしたのですが(笑)
とまぁ、作品とは全く違う話となりましたが、ようするに「五十路」の恋愛映画ってお金を払ってまで誰が観るのかな?というのが素朴な疑問です。「五十路」を過ぎたとはいえ、やはりある程度は枯れていない部分も見せたいでしょうし。
五十路を過ぎた世代なら自分の過去を振り返って色々思うところもあるでしょうが。
原作があるものなので仕方ないのですが、物語半ばで重大事件が起き、私の希望とすれば紆余曲折を経ながらも最後はとりあえず解決してくれることを望みますが、どうやらそういうわけには行かないようです。
それにしてもヒロインは「親の因果が子に報い」って感じもします。中学生の時あんなに清廉だった彼女が、確かに最初の結婚で夫に先立たれたとはいえ、その恋も略奪婚でしたし、次は「若いツバメ」にボロボロにされたし、やっと身の丈にあった相手と巡り会えたのにね。
「平場の月」を眺められる人生ってなかなか難しいのかもしれません。
好きだから一緒にとは限らない!甘えられない自分を押し通す寂しさを感じた。
夜空の月や星を眺めながら物事を考えるなんて~
人生幾度在ることだろうか。
今日は そんな人生の終焉を悟る時、
誰と迎えたいのか、
そして 何を優先しどう生きたいのか。
「平場の月」の鑑賞です。
率直に言って、若い人向けの恋愛映画ではありません。
よって、そこには憧れも華やかさもありません。
真っ直ぐな想いと純粋な生き方だけが ただ在るのだと感じました。
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・青砥健将 (役:堺雅人さん): 50歳、地元の印刷会社で働く。母親の介護をしながら一人暮らしをしている。
・須藤葉子(役:井川遥さん): 青砥の中学時代の同級生(初恋)。病院の売店で働き、夫を亡くした後、一人で生きてきた。
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病院の精密検査を受けに行ったときに 偶然昔の思い出の彼女に出逢う青砥。
50代に成ってから 彼女との交際が始まるのだが
彼女もまた悩みを抱えた人生を送ってきた人だった。
そして彼女には癌が見つかる。お互いを支え合って生きて行く中で彼は彼女へこの先を一緒に生きようと告白するのだが・・・
彼女は 全てを断ち切って行く選択をしてしまう。どうしてそうするのか。
最後に迎える二人の心を 夜空に欠けた月だけが知っていたのだった。
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(感じた事)
・まぁまぁ50代過ぎの生活感などはリアルな描写であったと思います。
価値観なども上手く合わせてあって その辺り演出的には違和感は強いては感じませんでした。ただ、目立たない大腸ガンを表に出してきたのですが 女性なら乳ガンの方が共感得たかなとは思います。
あと、やっぱり幾度の抗がん剤治療で髪の毛は抜けるかと。転移後2度目治療ははそんな描写でしたが、最初の段階でも 綺麗な長い髪は抜けるだろうと思います。
・男性から視点で、昔告白した彼女が晩年 こんな感じで再会出来たら良いな~っていう 都合の良い表現に成ってると思います。
女性側を綺麗に見せようとしていて、最終 死の病気別れにも成るし。
ちょっと狙い過ぎかなと感じました。
よって 終盤展開は共感しませんが、違和感なくすべて読めてました。
・幾つに成っても男は常に馬鹿者で、装飾品的な物をあげようとしたり、何処かへ一緒に旅行に行こうと誘ったり。彼女の大病を気遣うなら 無理強いは出来ないだろうと思いますね。
彼の本気度が伝わった時、彼女は迷惑を掛けられない決心をしてしまうのです。
1年も全く気づかない青砥は大馬鹿者そのもの。
普通はこの状況なら相手の病の具合を悟りますね。
気付かないのは それだけ完全な相思相愛では無かった事が伺えます。
・表現が面白かったのは、母の葬儀場で 元妻(役:吉瀬さん)へ須藤がハンカチをワザと渡して、一瞬視線がバチバチする所ですね。
この女が次の人か~ な想いと、この人が捨てた前の女か~ な想いの所ですね。
ここは一番 面白かったです。
・須藤が亡くなった事を告げられた 青砥の表情がダサい。
もっと上手くなくて良いから、 心の奥底に残念でならない想いが届く様な表情にして欲しかった。演出が感動に至って無いのが惜しいと思います。
・青砥の中学生を演じた坂元 愛登さん、イイ感じでした。
そして須藤の妹役の中村ゆりさんですね。次回作も応援です!
中年代の恋の話ですが、人は幾つに成ってもドキドキはしたいもの。
人生後悔しない最良な想いに成るのなら、それならそれで良いかと思います。
ご興味ある方は
劇場へどうぞ!!
メイン・テーマで掴まれて、トイレの後がウンのつき(月)
薬師丸ひろ子さんが歌った数々の名曲の中でも、一番好きなのが「メイン・テーマ」(映画の方は決して一番ではないんですが主題歌に関しては「Woman」と双璧)なので、冒頭から心を掴まれてしまいます。
原作未読で映画鑑賞後に調べたら、原作の主役たちは2018年か少し前で50歳のようで、ほぼ同世代。原作にもこの曲が出てくるなら大納得なのです(出てくるのか、そこは調べてもわからずでした)
同級生たちとの会話が自然で、かつて恋心を抱いていた同級生女子との再会後の会話も、でき過ぎと思いながらも嘘くささは感じない。
中学生時代に好きだった子と50歳で再会した会話を想像したとき、あんな風に距離を測りながら、徐々にバリアが剥がれていったらなんていいだろうって思ってしまう。
そんな会話を重ねて、お互いが独り身になっていて、何年も一人で暮らしていることがわかったら、そりゃー期待しちゃいますわなー。恋心が戻ってきちゃいますわなー。若い男の影も登場して、この大人の恋がどっちに進んでいくのかわからずに楽しみが増します(なんせ原作未読なので)。
でも、須藤(井川遥さん)が健診を受けるって言ったときには、そっち方向かーって察してしまって、期待値下げちゃった。
とは言え、2回目の術後検診までは良かったのよ。あんなに2人の仲が深まっていたのに、あのタイミングであんな感じで別れを切り出されて、トイレに行ったら気持ちを抑えきって「お前は約束は破らないよな?」で、ずーーーっと会わずに済ませられるもの?
てか、大病した彼女のその後の様子を誰に訊くこともなく1年も未読のLINE見て過ごす?地元で、同級生もたくさんいて、妹さんとも顔を合わせていたのに? あんなに繊細に積み上げて、この一番大事なところで急に雑じゃない?
気になり始めると、気にしないようにしていた月のことも気になり始めます。「平場の月」というタイトルからか、作中何度も出てくるお月さん。その月の形と見上げる方向や高さから、凡その時間がわかるのに、その月の映像に続く話が時間的に相応しくない場面が何度も(下弦の月が上ってきているのに夕食準備してなかった? 満月がそれほど高くないのに商店街で中学生が見咎められる? など)
死を知ったあとの何も理解できないような様子、ラストのあの曲(居酒屋のおやじ、わざと有線リクエストでもしたかい?のタイミング!ではあるけど)を聴いての慟哭など、堺雅人さんのクライマックスの演技は大げさではなく、青砥の気持ちがよく表現された泣かせるものだったと拍手を送るけど、やっぱりあのトイレの後がどうしても納得できなくて、それまでのわくわくした気持ちもトイレに流れてしまったのです。残念です。
<以下、レビューに入れ込めなかった感想>
・50歳のベッドシーン良かったなー
・女の人のあり方を「太い」って形容する感じ好き
・同級生男子たち、楽ちんそうな役を楽しそうに演じてたねー
・がん検診啓蒙映画?
・え、中学時代に2人乗りするくらいのことはしてたんですか!
・「俺が高卒だからか?」は急すぎない?そんなコンプレックスどこかで匂ってた?
大人の恋愛にどうしてこんなにも心が揺さぶられるのか。
予告編を見た時から、「お前、あの時何考えてた?」「夢みたいな事だよ。夢みたいな事を。ちょっとね。」というやり取りと、星野源の主題歌「いきどまり」に妙に惹かれたので映画館に足を運んだ。結論から述べると、とても良い映画だった。
中学の同級生である、青砥と須藤が病院で再会し、「励まし会」という名目で定期的にふたりで飲むようになっていき、地元に戻ってくるまでのお互いの人生を打ち明けていく。
時々、中学時代の二人のシーンが挿し込まれ、徐々にどういった関係性だったのか明らかになっていく構成であった。50代という年齢は、離婚や子供の結婚、人生の大きな節目のようなイベントを終え、どこか疲れと安堵が見える年代なのかもしれない。そんな二人が心を通わし、距離が近くなっていく様に目が離せなかった。須藤は「芯がふとい」と中学生時代からの印象は大人になっても変わらず、手術の決断もスパスパ決めてしまう。死ぬかもしれないことを青砥に打ち明けなかったのも、最後までふとく生きたんだなと。また一度離婚を経験して、アルコール中毒になってしまった青砥を気遣ったからなのかも知れない。風のうわさで須藤の死を知り、須藤の妹と喋る時の、青砥は驚きが強く、挙動の落ち着きになさが目立ち涙は流さなかったが、会社の飲み会で、須藤と励まし会をしていた居酒屋で、いつもいるマスターの前で、須藤と聞いた薬師丸ひろ子の「メインテーマ」が流れ、今は横にいない須藤を思ったのか、泣き出してしまうシーンは本当に切なかった。その人がいた場所や、その人と一緒にやったことで、その人の死を実感する。
二人乗りのシーンがなにより良かったですね。最初は「あまりにも青春すぎる」と断った須藤が乗る意味。ラストシーンは中学生時代の彼らが。星野源さん主題歌の「いきどまり」、役者陣の素晴らしい演技、全てが素晴らしかったです。
月夜みたいな恋をした
今年初旬の『ファーストキス 1ST KISS』と同じく。恋愛物はほとんど劇場で観ないが、キャスト(堺雅人&井川遥)×監督(『花束みたいな恋をした』土井裕泰)×脚本(『ある男』向井康介)に惹かれた。
また、大人の恋愛映画という点にも。邦画の恋愛物は少女漫画や泣ける小説の若者向けばかり。中には良作や創意工夫もあるが、似たり寄ったり。
そんなキャピキャピキュンキュンじゃない、しっとりした大人の恋愛模様に浸りたい…。
陽光のようなキラキラは無いが、月夜のようなしみじみと穏やかさと美しさ。
ドラマチックな展開も無いが、しっかり地に足付いた物語。
設定もあるあるだが、誰の身にも起こり得るし、置き換えられる。
離婚後地元に戻り、認知症で施設預けの母を見舞いながら印刷工場で働く青砥。
夫と死別後やはり地元に戻り、病院の売店でパートしながら暮らす須藤。
中学時代、青砥にとって須藤は初恋の相手だった。共に訳ありの独り身、50歳。そんな2人が再会し…。
今作で堺雅人は工場の不正を暴いたり、潰れかけの工場の為に奮闘したりしない。悪徳圧力から須藤を守ろうと闘ったりもしない。熱血イメージの堺雅人を期待すると物足りないかもしれない。
だからこそ、堺雅人の巧さが光る。外に出ればそんじょそこらに居るごくごくありふれた何の取り柄も無い平凡過ぎる中年男を、人柄の良さも含めてナチュラルに演じている。半沢や乃木は当然役のイメージ、バラエティーなんかで見る素の雰囲気に非常に近く、人懐っこい親近感も沸いてくる。
井川遥は2005年の『樹の海』から女優として飛躍したと感じた。同作では駅の売店でパートしていたが、本作では病院の売店で。そんは日常に溶け込む役柄が実はどんなに難しいか。それを井川遥もまたナチュラルに演じている。
徐々に分かってくるが、苦労の多い人生。化粧っ気も無く、何処となく疲れた雰囲気を滲ませる。それでいて、美しさやほんのり大人の女性の色気は隠せない。特筆すべきは性格の“太さ”。ぶっきらぼうながらもハンサムウーマンなカッコ良さすらある。
2人の織り成すやり取り、会話の抑圧や間、息遣いまで、それらがひしひしと伝わってくる。
再会して間もない時の絶妙な距離感。近況を伝え合う“互助会”と題した月一間隔の居酒屋飲み食いきっかけで次第に距離を縮める。自然と惹かれ合うようになって、大人同士なら…。ぎこちないキスにドキドキ。
中学時代と同じくお互いを「青砥」「須藤」と名字で呼ぶ。青砥は須藤を「お前」とも呼ぶ。女性は男性にお前呼ばわりされるのを嫌うと聞いたが、須藤も最初は嫌がっていたが、青砥のそれは気心知れた親しみ込めて。
それくらい、意気投合した。お互いにとっても“ちょうどいい”。
中年独り身。気が合えばこの先一緒にどうだ?…と思うのは自然で、青砥はその思いを強くする。
が、須藤は…。今更男に頼りたくない須藤の性格もあるだろうが、展開で何となく察した。
予定調和でもあるが、それがまた染み入る。
良作。始まって数分で確信した。見終わって心満たされた。
星野源によるED主題歌がその余韻を一際格別のものにしてくれる。
『花束みたいな恋をした』ではカルチャー含めた若者ラブストーリーを共感たっぷりに描いた土井監督。テイストが違う情感溢れる大人の恋愛を魅せてくれる。ヒューマン・ミステリー『罪の声』なども手掛ける巧い人なのだ。
ユーモアや中年のリアル滲む会話、丁寧なストーリー展開。向井康介の脚本も巧い。
THE旧友な大森南朋や宇野祥平、職場にそのまま居そうなでんでんや椿鬼奴、フレンドリーだがちとウザい安藤玉恵、姉思いな中村ゆり、クールビューティーな元嫁・吉瀬美智子…。実力派キャストが脇を固めるが、ほとんど2人芝居。
2人の恋路を盛り上げたのが、中学時代の2人を演じた坂元愛登と一色香澄。青砥少年の普通っぽさもさることながら、須藤少女の昔から変わらぬ“太さ”。告白されての「嫌です」には直球過ぎてぐうの音も出ない…。
初々しい頬合わせにドキドキ。このシーンがあったからこそ、大人になっての頬合わせに再びドキドキする。
似た境遇に思えるが、その実は違う。
青砥は言うなればごく平凡な人生だが、須藤は苦難の連続。
中学時代、家族を捨て男に走った母が戻ってきて、父は激怒。最悪な家族の関係を目の当たりにし、軽蔑。
30で子持ちの男性と結婚。時々相手はDVを振るってもそれでも好きで別れなかったが、死別。
若い年下青年に夢中になる。気付けば大金の浪費。夫と住んでいた家を売り払って帳消し。後腐れなく別れる。この年下相手の成田凌の人懐っこさも憎めない。
その後地元に戻り、青砥と出会い…。人生折り返しになってささやかな幸せを見つけたかに思えたが…。
大腸がんが発覚。手術で人工肛門に…。
もし自分やあなたがこんな人生を送ったら嘆くかもしれない。
若者だったらこれからの明るい未来に輝くが、中年ともなるとそうはいかない。
折り返し。これから先に思い悩む。
その道中に、重い病や死すら浮かぶ。
凛としていた須藤もさすがに術後は覇気が無くなり、抗がん剤で体調思わしくなく、やつれる。人工肛門で周囲を気にするようになる。
何事もネガティブに。
一人だったら、そのまま塞ぎ込んでいたかもしれない。
傍にいてくれたから。
どんなに支えられたか。
どんなに勇気付けられたか。
どんなに好きだったか。
性格柄顔には出さない須藤だが、内心は叫びたいくらいだったろう。
周りも自分自身も軽蔑してきた。こんな私でもまた人を好きになっていいんだ。
旅行の約束もする。待ち遠しい。
しかしある日突然、須藤は別れを告げる。
一時は幸せを夢見たが、人に甘えて優しくして貰ってばかりで、そんな自分をやはり軽蔑する。…と、須藤は言う。
納得出来ない青砥だが、その日から一年後の旅行だけは約束し、2人は暫く距離を置く。
突然別れを告げた須藤、一年という期間…。もう何があったか察した。
分かってから開幕すぐのカレンダーの丸印を思い出すと、切なく胸が痛くなってくる…。
青砥をそれを知ったのは約束日の直前。突然の事だった。
あまりにも突然過ぎて泣く事も忘れたかのように、ただただ呆然…。
職場の後輩の出世祝い。奇しくも2人でよく訪れた居酒屋。
祝いの席を離れ、カウンターのいつもの席に座った時、改めて気付く。いつも隣に座っていたお前が居ない。
そこに、あの時流れた曲が流れる。
胸か喉元で塞き止めていた思いが一気に溢れ出る。止めどなく。
青砥が涙を流したのはこのシーンだけ。堺雅人の泣きの名演にまた目頭が熱くなってくる。
初めて訪れた時からよくしてくれて、思い出せなかった曲名(薬師丸ひろ子『メイン・テーマ』)も教えてくれて、大腸がん発覚しても酒を飲もうとする須藤を案じてくれて…。厨房隅の席に座ったままだが、店内を見るのは怠らず的確に指示。
青砥が嗚咽した時も事情を察し、何も言わず音楽のボリュームを上げる…。
店主役の塩見三省氏は本作の陰のMVP。ご自身も死を覚悟するほどの大病を患ったからこそ、病を抱えた須藤への眼差しが暖かい。
この居酒屋“酔いしょ”に行きたい…。
須藤は青砥の初恋相手だったが、須藤にとっても青砥は実は初恋の相手だった。
あの頃から憧れの君。
そんな君と、穏やかで心を満たす、月夜みたいな恋をした。
だけど俺は、これから先、お前と2人乗りして生きて行きたかったよ。
突然すぎて…泣けるのに泣けない作品
自分も癌の手術した経験があり、現在も定期通院しているので、須藤(井川遥さん演)の心情には共感できました
最初に医師から告知された時に死にたいする不安よりも、周りになるべく迷惑かけたくないなって先に思ったので…
で結果、青砥(堺雅人さん演)は1人この世に残されてしまったわけですが、この後事あるたびに須藤の事を思い出すと思うんですよね
そう考えるなら須藤(性格的に無理だったのかも知れませんけど)はきっちり感謝の言葉を残してから他界すべきだったと感じました
自分の経験上もっと何かしてあげれば良かってずっと後悔する形になりそうなので…
言葉や表情の裏にある心情
前情報なしで、井川遥さんと堺雅人さんの二人乗り自転車シーンのコマーシャルを観て観ることを決めました。
ちょうど、物語の設定と同年代の私にとって、身近な日常のリアルで、自分の生き方、家族の愛し方を考えさせられました。
井川遥さんの演技、とても素晴らしかったです。言葉や表情の裏にある心情を首筋や背中や指先を使って表現されていました。演技っぽい演技ではなく、本当の日常会話のような自然な表現に、プロの役者さんの凄さを感じました。居酒屋の声の小さいおじさんもとても良かったです。
悪くはないけど
曲が流れた途端、
薬師丸ひろ子の『メインテーマ』だと
わかる世代です
大好きだった男の子と二人乗りした
思い出もあります
だけど。。。
申し訳ないことに、どうしても
堺雅人さんが無理
半沢直樹も、『VIVANT』も観てますけど
ご本人のせいではなく
私自身の好みとして、坂本愛登に、
初恋しても、堺雅人に、ここまでの「太い」
最後の恋は、出来ない
決まったとおりの想像通りの展開と結末で
作品によっては、それでも号泣することが
あるのだけれど
今回は、そうでもなかった
中学生の時に、あれほど強く
一人で生きていくと決めたのに
案外、男に流されてるやん
離婚した理由は、知らんけど
嫁と別れて、持ち家で
昔、好きだった人とよろしく生きていこう
なんて、ムシが良すぎませんか
まぁ、人生いろいろあった末
再び、めぐりあった二人
ということなんだろうけど
イマイチ、二人の人生に
共感できなかったことも
作品に、可もなし不可もなし
と、感じた理由です
50代の恋愛が平場にもあるかも
原作本の方で、『平場』という言葉が気になり購入し、映画が決まるまで、積ん読してて、キャストが決まってから、その雰囲気で読んで、そして映画を観た。読んでる時からキャストは絶妙だなぁと思いつつ、やっぱり素敵でした。ウミちゃんも最高。自分と同年代であり、もしも一人身だったらあるかも?という設定が平場なのかもしれない。出会、別れ、たわいもない日常、そして小さな幸せや喜び。とても素敵でした。キスシーンはドキドキしましたね。そして、ラストの主人公に涙が溢れるまでの数分間は堺さんの演技良かったなぁ、泣けました。吉瀬さんもピッタリでしたね
一人で生きていく
…ほんのり甘いスイートなチョコでなく
切なさが残るちょっとビターなチョコ
ほろ苦さが効いている大人な恋愛
中学生の頃からお互い好意を
抱いていたふたり。
青砥と須藤
お互い一人身になって地元に帰り
偶然に出会う
そこから二人の関係が
話し相手から結婚を考える関係となる
しかし…
須藤は青砥のプロポーズを断る
そこには訳が…あった
須藤は
一生一人で生きていくと決めていた
家庭環境や母親の影響も大きかった
のかもしれない
心根が太い須藤は今さら青砥に
病気で迷惑かける事は考えられない
素直に甘えることが出来なかった
本音を話すことなく別れ
須藤の
特別なことはなくていい
普通でいい…という
須藤の生き方
自分の生き方が好きではなかった
と後悔するが…
楽しかったこともあったはず
青砥と出会って暮らせたことも
そして病気が再発してなかったら
青砥と結婚していたと思うが…
最後まで自分の人生を生きた
彼に会いたい気持ちはあったと思う
どんな気持ちで最期を迎えたのか
わたしには想像もつかない
少し重い作品でした
いくつになっても恋している時は
…青春。ですね
良い意味での素敵な擬似夫婦
原作未読。青砥役の堺雅人さんと須藤役の井川遥さんコンビが良かったです。初恋同志の2人が50代になって出会ってから、擬似夫婦(←良い意味での)になるまでの流れが、違和感がなかったですね。自転車の2人乗りシーンは、シニアの私がみていてもほのぼのしました。
脇を固める須藤の妹さん役の中村ゆりさん、同級生の大森南朋さん、宇野祥平さん、吉岡睦雄さん、安藤玉恵さんなどもいい味出してました。特に居酒屋の大将役の塩見三省さんは、渋かったです。(←でもなんか老けましたね)
吉瀬美智子さんは、相変わらず綺麗でした。
須藤の気持ちや考えを尊重して、青砥は暫くは連絡を取りませんでしたが、私だったら出来ませんね。やきもきしていると思います😅。2人には一緒に温泉行って欲しかったです😭。
大人の恋愛映画
本作は過度な演出や派手な恋愛要素は
余り無く、身近に存在する様な市井の
大人の恋愛
まるで文学作品を読んでいるかの如く
主人公達の日常が描かれているが
ある年代以上の鑑賞者にとって
そのひとコマひとコマが何故か
切なくエモい
商店街の居酒屋、夕暮れの鉄橋
古めのアパート
よく映画の中に登場する
海辺の綺麗な風景や自然ではなく
私達の身近な都会でも田舎でもない
町並み、人々の営みが
愛しく切ない
2人の出会い、再会、別れは
最低限の映像説明しか無いが
その映像の奥を読み取る小説的な
深みのある映画で
派手な悲恋を期待すると
肩透かしとなるかもしれない
空振りばかりでヒットがない
大人の恋愛映画と宣伝するより、闘病との葛藤を支える恋愛映画と有った方がしっくり来るなと思った。
花束みたいなもそうだが土井監督の恋愛映画は多幸感を押さえている作品が多いので例えるなら病院食のような映画だ、それだけに現実に生きることの厳しさをまざまざと感じることが出きる。
やはり恋愛映画は多幸感を存分に感じれる学生ものがいいなと浮かんだ。
あのあとは様々な憶測が飛び交いそうだ。
大人のラブストーリー
青春ラブストーリーでは無いが、大人の切ない恋愛が描かれており、どこか大人の青春という感じがした。
お互い過去に色々抱えながら、再び出会ったことで距離を縮めていくが、昔のように簡単に一歩を踏み出せい、この切なさが凄く刺さった。
ラストに色々あるが、須藤と青砥は上手くいくとあまい考えで見てしまっていた自分がすごく恥ずかしい💦
ラストでの、居酒屋の店主が青砥の動きから悟り、音楽の音量を上げるところがすごく切なく、これまでにない体験だった。
王道のラブストーリー
王道のラブストーリー
焼け木杭に火がついた大人の男と女の物語
偶然の再会がなければこんなに傷つくこともなかったのに
でも、傷つくことを恐れることなく、いくつになっても恋をすべき
居酒屋の大将がさりげなくボリュームを上げるシーンなど結構ベタな演出
面白かったけどね
全150件中、101~120件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。








