平場の月のレビュー・感想・評価
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ラストの堺雅人に心を持っていかれた。『平場の月』圧巻。
本作は、50代前半のバツイチ男女の恋愛を描いた静かなドラマ。
印刷会社で働く青砥を堺雅人、病院の売店でパートをする須藤を井川遥が演じ、彼らの周囲にいる人物たちも、どこか身近に感じられるような描写で丁寧に作り込まれている。
須藤の住む昭和の雰囲気漂う木造アパート、青砥の一戸建て、2人が訪れる商店街の焼鳥屋など、舞台設定は「ごく普通の日常」をリアルに切り取ったもの。
登場人物たちも魅力的で、須藤の同僚・海ちゃん(安藤玉惠)は噂好きで「人の不幸は蜜の味」タイプの典型的なキャラとして存在感を放つ。
焼鳥屋の寡黙だが心遣いの深い大将を演じる塩見三省、中学時代の同級生役の大森南朋・宇野祥平、印刷会社の年配の同僚を演じるでんでんなど、脇役も多いが、その一人ひとりがしっかりと輪郭をもって心に残る。土井監督の演出力の高さを改めて感じた。
土井監督は「いま、会いにゆきます」「花束みたいな恋をした」「片思い世界」などでも、“幸せな時間の喪失”“大切な人は永遠ではない”といったテーマを繰り返し描いている。本作もその流れを継いでおり、ある程度ストーリーの方向性が読めてしまったのはやや残念だった。
物語は終始静かに、淡々と進む。
偶然の再会から始まり、2人の穏やかで幸せな時間。
その中で、青砥が須藤にプレゼントを贈ろうとアクセサリー売り場を訪れるシーンがある。高価な品に思わず「高っ!」と驚き、青砥が選んだのは〈月のシルエットにダイヤがきらめくミニマルで洗練されたネックレス〉。
その後に指輪まで買おうとする青砥に、須藤が優しく言う。
「これがいいんだよ。これ一つがいいんだよ」
50代という人生経験を重ねた2人が、どこか10代の恋の延長のように心を通わせていく姿が微笑ましい。
そして、須藤のがんが発覚してからも、物語は派手に煽ることなく静かに進んでいく。感情がじわりと滲み出るような作りだ。
そして迎えるラスト(ネタバレなので言えない)――詳細は伏せるが、堺雅人の渾身の演技が一気に炸裂し、胸に迫る場面だった。こういうのも土井監督の特徴。
鑑賞後は、日々の中にある小さな「良いこと」も「悪いこと」も、すべてが少し愛おしく思える作品だった。
物語の展開がある程度予測できてしまう点は惜しかった。
しかし、多くの人物が登場しながらもキャスティングと俳優陣の演技力によって、一人ひとりの個性がしっかり際立ち、物語に厚みを与えていた。また、舞台設定が「地元感」に満ちており、日常に寄り添うようなリアリティを生み出しているので、多くの人々が共感できる作品だと感じる。
鑑賞後には、日々を丁寧に生きたくなるような、静かで温かい余韻が残る映画だった。
以上
井川遥の魅力!!
予告編の堺雅人・井川遥の2人と星野源の主題歌の醸す空気が何とも切なく、この2~3か月予告編を観るたびに期待を大きく膨らませて来た作品だった。
【物語】
青砥健将(堺雅人)は、離婚後に地元へ戻り、印刷会社に再就職して一人で淡々と暮らしていた。あるとき検査で行った病院で、売店で働く中学時代の初恋相手須藤葉子(井川遥)と再会する。須藤もまた夫との死別などの過去を抱えながらも、今は地元に戻り一人で暮らしているという。
互いに苦い人生経験を重ね、今は独り身の二人は、何度か会って話すうちに何十年もの時間を取り戻すかのように、心を寄り添わせて行くのだが・・・
【感想】
膨らみ切った期待に100%応えてくれたかと問われると、「そこまででもなかったかな」というのが正直な感想。
でも、ガッカリというほどではない。
良かった点から言うと、やはり井川遥が良かった。これは100%期待どおり。
俺が持っている彼女のイメージは柔らかい、優しい女性だが、本作の須藤は少し違う。作品中のセリフでは「太い」と表現されるが、どこか肝の据わった、強い女性だ。いや、弱さも内在しているが、強さを装っている女性と言うのが正確かも知れない。
そんな須藤を演じる井川遥がとても魅力的だった。
期待通りでなかった点は、「大人のラブストーリー」を期待したわけだが、宣伝のセリフなどからも大人だからこそ思いを伝えることに躊躇する、もどかしさみたいな展開なのかと思っていたが、くっつくまで意外とあっさり! それと前半のクライマックスとも言える“ラブシーン”が今ひとつだった。過激なラブシーンを期待していたという意味ではなく、逆にくどいと感じた。 端的に言うと、キレイに撮れてないというのが俺の感想。二人がもう若くないというのが現実かも知れないけれど、それならそれなりの撮り方が有るだろうと思うのだ、映画なんだから。
もう一つ、予告編で「吉瀬美智子も出てるんだ」と楽しみにしていたのに、「予告編が全て」くらいの出番しかなかったこと。これはホントにガッカリポイント!
それにしても、元妻が吉瀬美智子で今カノが井川遥って、イマイチさえない男なのに青砥は恵まれ過ぎ(笑)
ということで、不満なところも有ったけど、ラストの赤丸の付いたカレンダーにはぐっと来た。 40代以上の層なら、過大な期待をせずに観れば十分楽しめると思う。
相手を気遣うそっとした優しさに涙。
生き留まり…
主題歌について、堺雅人さんがインタビューで言ってました。YouTubeで「いきどまり」を改めて聴くと、確かにそう言うこと。星野源さん、凄い! 名曲ですが、歌詞がネタバレになるので、聴くのは映画鑑賞後がいいかも。
原作小説は未読。
妻と別れ、地元で再就職した青砥と、夫と死別し、地元に戻った須藤。二人の再会で始まる、大人の恋愛物語。日常に起きる「あるある」的な喜びと痛みが、丁寧に描かれています。
青砥の立場から言えば、“何故?”。
須藤の立場から言えば、中学時代から持ち続けている強い “信念” 。カレンダーの印は心の支えと思われ、とても切ない気持ちになります。
観終わったあと、隣の席に相方が居る。今の自分の幸せを再認識させてくれる、そんな余韻の残る作品でした。
恋した人が遠くに行ってしまったら
夢みたいなこと
平場の月
40〜50代あるある
「月」は満ち欠けや登ったり沈んだりするさまから、人生そのものと、恋愛ってダブルミーニングかな……
原作未読ですが、予告編からも併せて、そんな予想をしながら鑑賞。
40〜50代あるあるな日常が繰り広げられ、少し心がざわつく。
母親の認知症と介護、離婚、死別、転職などなど。
途中でヒロインの手術の話になってから、ラストまでの全展開が読めてしまい意外性はカケラもなかったが、自然にお互いを求め合ってしまうあたりの演出と演技はよかった。
特に焼き鳥屋のマスター(塩見三省)と主人公の、店のカウンターでのラストシーンは秀逸。
50代
もう少し歳を重ねれば
もう少し歳を重ねれば、深く刺さったんだろうなって思う。
堺雅人さんが独立して久しぶりの映画、それが観たかったから全然それはそれで、演劇でも観たいなぁ。
井川遥さんをすごく褒めてる方々が多い。
確かに魅力的です。
が、正直芸がないなって思いました。
内面の魅力の才能とルックスだけの演技が最大に活かされる時期は、10代〜20代前半までかなと。
今の若手俳優で、かっこいい、かわいいって言う要素が大きいという理由で仕事が来てる方々と演技のレベルが変わらない。
大人の魅力はあるにせよ。
最終的には人間力が問われる。
なんて言う言葉もあるし、もちろん間違ってないけど、それはやはり技術を積み重ねて深めてこそ、人間力が爆発的に伝染するんだと思う。
ルックスと内面的な魅力が、とある世代や男性たちに刺さった結果の評価なのかなと思います。
タレント俳優を超えられてないのは、日本の芸能界が俳優や映画・演劇を支配してきた結果なんだろうなと…
手を振ったら振り返してくれる相手がいる幸せ
平場の年代
ひょんなことから再会した中学の同級生。
初恋の彼女だ。自分と同じようにいろいろとあった末、数年前に地元に戻ったらしい。
あちこちに中学時代の思い出が残り、かつての同級生達もいる土地で2人のためのおつかれさま会を始めた。
堺雅人と井川遥の作り出す空気感がとてもいい。
お互いを苗字で呼び捨てにし合う中学生時代の延長感とそれなりに重ねた人生の年輪の重なり。50を過ぎたような2人が再会したからこそ逆に感じられる初々しさ。
この映画独特の雰囲気を2人が作り出している。
土井裕泰監督の過去二作「花束みたいな恋をした」、「片思い世界」からはガラリと変わった大人のラブストーリー。音楽で記憶が呼び起こされるという手法が本作でも効果的だった。
「平場」というのは特別なことのない、通常の場のことだ。
若く盛り上がる恋でも老境での最後の恋でもない、2人を見下ろすありふれた「平場の月」が見守る変哲のない「平場」の恋。
約束が出来る幸せ。
一緒にいてくれる幸せ。
それは明日もある保証はないんだよね。
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