平場の月のレビュー・感想・評価
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人生の終わりがチラ見えしてからの大人の恋は、それはそれでアリだと思う。
今日は寝不足で、もしもつまらない内容だったら途中で寝るんじゃないかと半分不安で観に行きました。ところがどすこい、上映開始すぐに堺雅人と自分の置かれた環境があまりにも似ている事にビックリして一気に眠気が吹っ飛んで、スクリーンの中に気持ちが吸い込まれていきました。
バツイチだし、印刷会社で働いていたことがあるし、告って断られた女の子(当然今はオバチャン)と月一でデートしているし、自分に子供はいるけど相手には子供がいないし、彼女が元気なこと以外、なんか自分のミニ自叙伝を堺雅人と井川遥に演じてもらっているような気がして、普通の恋愛映画の何倍も感動する事が出来ました。
原作未読なので予告映像を見た勝手なイメージで、青砥と須藤は入籍はしないものの「事実婚」っぽい生活に落ち着いてハッピーエンド♡、という結末を予想していました。でも須藤が大腸がんになった時点で悲しい結末が見え隠れして涙腺が緩んでしまい、最後は堺雅人と一緒に泣いていました。自分の彼女も「心が太い」人なので、「一緒になろう」とか言うとヘソを曲げる危険性があるので、一緒になるのは諦めて月一デートを楽しむことにしました。
月はどんなときも静かに市井の人々の日々の営みを見下ろしている
かねてから日本のエンタメ業界に足りないものは大人のラブストーリーだとずっと感じている。TVドラマの『最後から二番目の恋』あたりが例外かもしれないが…
アイドルが演じる高校生のラブストーリーや、20代から30代にかけての結婚をゴールに設定したようなものは掃いて捨てるほどあるのたが、恐らく日本社会全体として30代後半を過ぎたらもうみんな家庭に収まっているものだというステレオタイプな既成概念に囚われ過ぎているのであろう。その結果、30〜40代以上の恋愛ものは不倫でドロドロみたいなものばかりになっていく。
しかし、現在の日本では4割近くが一人世帯であるという現実があり、配偶者や子どもと一緒に暮らしていること自体、決して当たり前ではなくなっている。
だとすれば、40代や50代あるいはそれ以上の世代の人間が普通に恋愛をしていてもおかしくないはず。とはいえ、そのくらいになれば、人生山あり谷ありで、酸いも甘いも経験しているだけではなく、頭の方もいろいろ思い出せなくなったり、身体的にもあちこちガタがきたりもする。
本作冒頭で自転所に乗りながら堺雅人演じる青砥が口ずさんでいた歌を聴きながら「あれっ、これ何の曲だっけ?」と思っていたら(しばらく考えて、タイトルは出なかったが歌手名までは自力で思い出せた 笑)、劇中でもほとんど同じような場面が出てきて苦笑。ついでに、40代で胃潰瘍、60代で大腸のポリープを内視鏡で取った自分の経験まで重なった。
1980年代にノスタルジーを感じられる世代にとっては間違いなくいろいろ重ね合わせて鑑賞できる作品だ。
本作については、50代の主人公の恋愛話と、彼らの中学時代の初恋物語が入れ子になって構成される。それは単に甘酸っぱさを演出するというだけではなく、彼らのバックグラウンドを描くことで、子ども時代のトラウマがその後の生き方に与える影響まで立体的に見せてくれる。
楽しいこと、幸せなことばかりではなく、辛いこと、大変なことが人生の中で待ち受けていようとも、月はどんなときも静かに市井の人々の日々の営みを見下ろしている。そして、逆に人々はさまざまな思いを馳せながら月を見上げて過ごすのだ。
そして、薬師丸ひろ子の歌声が切ない。『メイン・テーマ』の「20年も生きてきたのにね」という歌詞を久しぶりに耳にしながら、ABBAが "Dancing Queen" という曲をヒットさせていた頃に 「"only 17" とか言ってんじゃねぇよ」と憤っていた13歳の自分を思い出していた。
若さの幻想を捨てた先に残る“愛のかたち” ──邦画が迎えた成熟の時代
近年、ハリウッドでは中年以降の恋愛映画が当たり前のように成立している。2010年代後半から2020年代前半にかけて、“多様性”の概念が年齢領域にまで拡張したことで、50〜60代が生々しく恋をする映画が増えた。成熟した観客層がメイン視聴者であることが可視化され、俳優たち自身がその年齢にふさわしい役柄を自然に獲得した結果、欧米では“老いの恋愛”がジャンルとして成立した。
その潮流がようやく邦画にも到達した。その象徴が本作であり、これは日本映画の価値観において静かだが大きな地殻変動を意味する作品であると感じた。本作が描いたのは、若さの美しさでも奇跡的な運命でもなく、傷を抱えた人間同士が“受容”を通じて寄り添う恋愛だ。大腸がん、人工肛門(ストーマ)、離婚歴、生活の摩耗、孤独と後悔、親、介護、お金──普通の恋愛映画なら“乗り越える壁”としてドラマ化されそうなものが、この作品ではあくまで自然な背景として扱われる。
そして、須藤葉子の死を知った青砥健将――堺雅人が見せた“作り物の笑顔”と、その裏から静かに崩れるように溢れた涙。この一瞬に、本作が描こうとした成熟の核心が凝縮されている。本来なら絶叫してもいい場面で、彼は笑おうとして笑えず、泣きたくないのに涙が出る。人は本当に深い喪失を前にしたとき、感情のボタンが壊れる。その“誤作動”のような表情は、人生の後半戦を生きてきた男の、痛みと諦念と優しさの全部だった。
終盤の展開は誰が観ても予想できる。しかし、裏切る必要はない。むしろ“読める未来がそのまま訪れる痛さ”こそが、この映画の真実性であり、中年以降の恋愛の構造そのものだ。派手なドラマを積み上げなくても、俳優の呼吸と沈黙だけで物語が成立する。これは邦画が成熟した証拠である。
そして今後、邦画は確実にこの方向へ舵を切る。観客の中心が40〜60代へ移り、配信プラットフォームが中年の恋愛を積極的に支える時代において、“傷を抱えた大人の恋”は邦画の新しい主要ジャンルになる。若さを前提とした恋愛映画の時代は終わりつつあり、これからは“受容としての愛”が物語の中心になるだろう。
本作はその転換点に位置する作品と感じた。恋愛は若者の特権ではなく、人生の重荷を背負った後でなお続いていく営みであることを、美しく、そして痛切に示してみせた。成熟した邦画の時代は、いよいよこれから始まる。
「いきどまり」の歌詞が胸にくる
原作が賞を取った時に気になっていたが読めておらず、映画化されて予告編が良かったので鑑賞。
とても良かった。
全く派手さはなく、どちらかというとしょんぼりした50代の話(でも大体みんなこんなものです)だが、俳優さん達の静かな演技と自宅や職場のリアルな感じに自然に引き込まれた。
予告編を見て想像したあらすじ通りの展開だったが、それを細やかに表情と風景で見せてもらえ、映画で見てよかったなと思った。
堺雅人さんの涙でもらい泣きしている時にさらにエンドロールで「いきどまり」が流れて追い打ちで本格的に泣いた、、ものすごく映画の世界観に合っている歌詞だった。
全体としては本当に良い映画だったが、井川遥さんの口調だけがちょっと気になった、いくら「芯が太い」女性でもあの言葉遣いはありですかね?
劇中に出てくるBGMが1980年代で懐かしい、幼なじみたちと観に来たい映画だった。
忘れられぬ呪いを今君にあげる。嘘。
感想
複雑で崩壊している家庭環境の中で育ち思春期を迎えそれでも必死で平静を取り繕い生きている須藤葉子。そんな須藤の事を中学時代から陰日向より見つめ続け好意を感じていた青砥健将。自己肯定感が低いまま成長し家族の考え方も受け入れられず、自身が選択し経験した人生さえも否定してしまう悲しく歪な心根を持って生きてきた須藤。30数年の年月が過ぎ去った後、壮年期に青砥と偶然の再会を経て次第に付き合いを深めていく2人。人に心開く事の出来ない今の須藤を優しく見守る青砥の深い思いやりと、青砥の昔からの気持ちを受け入れながらも病という重荷をも受け留めていく須藤のその当事者にしかわからない心の葛藤と、人生の奥深さを感じる行動が、その事に関わっていく人々の人生の人間心理に影響を及ぼし、痛恨とも言える不治の病であるのにもかかわらず更に他の人生をも一段と昇華する事となり忘れられない思い出となっていく物語の展開に涙し感動する。
監督:土井裕泰 脚本:向井康介
原作:朝倉かすみ
脚本は映画用に程よい改変があり平均以上の出来映えで素晴らしい。演出は安定の纏め方で安心して観る事が出来る。
配役
青砥健将:堺雅人
須藤葉子:井川遥
他 でんでん 中村ゆり 安藤玉恵 成田凌
塩見三省
星野源氏の挿入歌「いきどまり」がとても素晴らしい楽曲で心に染みすぎて泣けた。本作と共に忘れられない。この曲を聴くと私自身病を受ける者だかこの病をきっかけに関係者を巻き込みながら不思議な事に人生の喜びという昇華とも言える経験することも出来た。病は死を伴う悲しいものだが、その死の影響は人の人生感を変える事もある。心にのこるのだと信じたくなる。
⭐️4.5
50代以上の大人向け恋愛映画
原作はかなり前に読んでおり、好きな小説だったので概ねストーリーは覚えていた。ただ、映画には向かない物語だと思っていた。人工肛門の描写があるラブストーリーなんてどう映画にするのか。そもそもヒロインは普通のおばさんなので、映画化でどういうキャスティングにするのか、ある意味興味があった。今回の主役が堺雅人はともかく、井川遥と聞いて、きれいすぎて嘘くさくなるやろなと思い、観に行くかどうか迷ったが、結果は観て良かった。50代以上の大人向け恋愛映画でした。
病気・離婚・介護等を経験したり身近に見たことがある年代の人、ましてや中学時代に淡い恋愛経験がある人は、皆それぞれ身につまされながら浸るだろうと思う。何より、嘘くさくなると思っていた井川遥の演技が素晴らしかった。ほぼノーメイクで、本当に普通の中年女性っぽくてリアル、でもきちんと魅力あるヒロインとして成立していた。堺雅人の上手さは言うまでもなく、脇役も皆ひとくせある演技者ばかりで映画全体のアンサンブルが心地よく、随所に入る中学時代のシーンも奇をてらうことなく、最初から最後まで引き込まれた。
原作の良さを消すことなく、自転車二人乗りや夜空に浮かぶ月等、映画なりの描写が随所に挿入されていて、今年の実写の邦画では記憶に残る良作でした。エンディングの星野源の曲も、しっとりと浸る時間を与えてくれる良い曲だと思う。
運の月‼️❓
忘れてたことを全て教えてくれました
30代男性 泣きました
中高年が見てこそ心に刺さる映画
大人のリアルな恋愛映画
大人向け恋愛映画。主人公と同世代で経験値が高い人ほど共感できそう。
50代の男女のラブシーンや闘病とストーマ、地元に帰ってきた同級生の距離感など、描写がリアル。
過酷な家庭環境で育ちその後も波乱に満ちた人生を歩んできた須藤に、井川遥は華やかすぎる配役かなと思ったが、癒し系スマイル返上で感情表現の苦手な重い役柄を上手く演じていた。化粧っ気がなくとも男性が惹きつけられる美貌も説得力あり。
焼き鳥屋の店主役で塩見三省が出演。ご病気をされてもスパイスを効かせる役柄でコンスタントに様々な作品に出続けられているのは嬉しい。
坂元愛登は少年役青年役としていろんな作品で見かけるがここでもちゃんと役目を果たしており、今後も楽しみ。
星野源の主題歌がエンドロールで沁みる。
12月20日
二人乗り
全388件中、321~340件目を表示
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