平場の月のレビュー・感想・評価
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号泣する準備はすっかりできていた。
薬師丸ひろ子の「メイン・テーマ」は南佳孝の「スタンダード・ナンバー」と同じ曲である。南佳孝が自身として何年たってもいい曲と言われるスタンダードナンバーを作る為に取り組んだ楽曲だ。又両曲は歌詞の方が薬師丸ひろ子バージョンでは女性目線、南佳孝バージョンでは男性目線となっている(どちらも松本隆が作詞)。あのシーンで「愛ってよくわからないけど」の後、薬師丸ひろ子は「傷つく感じが素敵。笑っちゃう涙の止め方も知らない、20年も生きてきたのにね」と歌っていたが、南佳孝では「傷つく感じがいいね。泣くなんて馬鹿だな、肩をすくめながら、本気になりそうな俺なのさ」と歌っている。
深く沁みた映画なので、原作が読みたくなったのですぐに近くの書店で買った。すると、色んな事がわかってくる。須藤は下の名前が葉子なのでハコがあだ名だった。中学の時、階段の下で告白し振られたが何故か青砥が須藤に顔を近づけ頬をあてたシーンはちゃんとあった。青砥が自分の自転車に「乗るか?」と聞いて須藤が「やー、それはあまりに青春だし」のやり取りもあった。
須藤の三歳違いの妹のみっちゃんは夫婦でふじみ野に住んでいる(皆んな埼玉の同じような地域だ)とのことだ。須藤が入院した病室で青砥が会ったときに小太りの主婦とみっちゃんを表現していたので(映画での)中村ゆりでは可愛いすぎるなぁ。とか思った。あまり聞きたくない話だったが、須藤が美容室の子に対しどう貢いでしまい身包み剥がしていったかも詳しく書いてあったし、青砥の前妻(映画では吉瀬美智子)との馴れ初めとよくわからない妻の相談癖の話もあった。平場という表現はヤッソさん(映画ではでんでん)と話してる時に出てた。平場を「おれら、ひらたい地面でもぞもぞ動くザッツ・庶民」と書かれていた。青砥の年収は350万円で須藤の年収も200万円に及ばないの記述もあった。まさに平場の平場だ。服はユニクロ、生活用品は無印良品、ニトリ。日本のどこにでもいる庶民。いつも居酒屋じゃお金続かないんだからヤオコーで惣菜買って、家飲みでいいのだ。
原作のかなりの部分が須藤の闘病の物語である。大腸癌になってしまうのでストーマの取り扱いとその苦労がとても詳しく書いてあった。さらに抗がん剤治療の様子も辛いものがあった。ストーマのお世話にはなりたくないので、大腸の内視鏡検査を私は今年はちゃんとやろうと思う。
須藤の両親との確執が「ひとりで生きていく」と決めた最初の理由だったのだが、それでも2人はちゃんと一緒になればいいと観ている我々は願うが、須藤の人生により培われた「太さ」がそうさせない。プロポーズを拒否され、それでも1年後の温泉旅行の約束をとりつけた青砥だったが、、。呆気ない形で須藤を失ったことを知らされる。
そしてラストは映画オリジナルのシーンである居酒屋で流れた「メイン・テーマ」。号泣する準備はもう、すっかりできていた、。
今や日本が誇る大俳優の堺雅人は流石の演技で全てに好感がもてる。井川遥は直近の「見はらし世代」では短い出演でも強い印象を持ったが、この作品は彼女の為の映画と言えるほど素晴らしい。須藤の「太さ」は彼女にしか演じられないのでは?と思った、。土井監督流石です。「花束」より私はこちらの作品が好きです。
酸いも甘いも経験した中年男女のリアル
「大人の恋愛」
笑っちゃう、涙の止め方も知らない。50年以上生きてきたのにね
いい大人になってから、初恋相手と再会して、という展開で思い出す映画はやはり『コキーユ 貝殻』である。
しかも男性側は妻がいたし、俗に言う不倫であり、行き場がなく切なかった。
今回は2人とも独身。
50前後だと、それぞれいろいろあるのは当たり前だし、相手の気持ちを察することもできる。
配偶者がいない分、今回ハードルは低い‥
はずなのに、なぜかもどかしすぎる。
女性側はおもむくままに生きてきたはずなのに今回は躊躇い、
男性側はいともあっさりと女性側に従い距離をとる。
理解できない。
脚本とキャストがいいのか、
カップルの会話はリアルでテンポよく進んでいく。
ワンシーンだけの豪華キャストもいいが、
安藤玉恵さんや、中村ゆりさん、塩見さんあたりはいい味を出している。
ワンシーンの成田さんの関西弁もうまかったが。
と言うことで、自分の気持ちには素直でいてください。
にじみ出るオーラは一般人ではない!
50代以上は泣くね(笑)
名作「花束のような恋をした」の
土井裕泰監督が、今度は中年の
恋を魅せてくれる。
(彼のデビュー作「いま、会いに
ゆきます」は、僕の秘かな名画)
’
原作も読んでいたので、
映画的に省いた部分も想像で
補ったこともあり、余計に感じ入った。
’
とにかく井川遥がいい。
疲れた感じ、強い物言い、時折見せる色っぽさ
彼女の代表作だと思う。
’
二人は50歳、中学の同級生、病院で再開した
ところから物語は始まる。
この関係がどんなものか、いい文章があるので
原作から引きます。
’
「話しておきたい相手としては、青砥(堺雅人)は
もってこいだ」
距離感といい、なんといい、と須藤(井川遥)は
言葉を濁したが、青砥には届いた。
(中略)
晩年感がふとよぎる歳で再会した「異性」は、十五歳の
面影は残しているものの、虹色の好意を友情と呼ぶほどには
熟れていた。
’
現在絶賛上映中です。映画館でぜひどうぞ。
僕は二回観ました。
’
あの二本指はVサインじゃなかった
まず「平場」の解釈から。この作品(原作小説、映画)の舞台は埼玉県の朝霞、新座、志木あたりのようだが、同じ中学校に通い、そのへんで就職したり結婚して住みついている者たち、もしくは青砥や須藤のように事情があって舞い戻ってきた者たちのコミュニティをイメージする。まあ「地元」と同義なのだが大学生が出身地をそう呼称しているのではなく、50歳過ぎのオッサンやおばちゃんの群れだからそれなりに業が深い。
もともと平場というのは百貨店の定番売り場をそう呼んだ。ブランド売り場でもなく特売コーナーでもなく普通のハンドバックや財布やハンカチが並んでいる。だからまだ何者でもない中学生に値札をつけて並べている感じであり、青砥と須藤がお互いを苗字で呼び合うところは、それぞれがいわば商品だった頃を引きずっているわけで痛々しさを感じてしまう。平場からみた月は近くにあって手に届きそうに見える。中学生の青砥にとっての月は「普通に生きたくない」ことだったし、須藤のそれは「一人で生きていく」ことだった。二人ともそのことは果たせず、再び平場で出会うことになる。
追いかける男と、逃げ腰の女。離婚にアル中とまあ想定内の挫折者である男に比べ、女は略奪婚と夫の死、年下の男に全財産を貢ぐなど壮絶な過去を持つ。思うに彼女はリミッターが外れたときの自分の怖さをよく知っており愛情や親切を素直に受け入れられなくなっているのだろう。原作小説は各章のタイトルが須藤の発した言葉で成り立っている。「夢みたいなことをね。ちょっと」「痛恨だなぁ」「それ言っちゃあかんやつ」「合わせる顔がないんだよ」など。一つ一つが須藤の揺れ動くこころと願いの切実さを伝えていて実に哀切である。
映画は、この原作の雰囲気を全く損なうことなく、上手に取捨選択して構成されている。(先の須藤のセリフはもちろん全部取り込まれてる)ただ手術後の須藤の苦労、ストーマについてももちろんだし、収入のない彼女が生活保護を受けるかどうか迷った末青砥の家に一時は同居するところなどもカットされたのでそれでも青砥との縁を切ろうとする彼女の決断の重さが表現できていないかもしれない。
一方で青砥と須藤以外の登場人物はかなり薄く描かれている。大森南朋や中村ゆりなど手練れの役者を揃えているが彼や彼女の描写に踏み込まず点描として扱うことにより青砥と須藤の二人を浮かびあがらせている。安藤玉恵演じるところのウミちゃんだけは役柄上、あざとい演技をさせているが。ちなみに映画では彼女に「海野」という苗字を与えたが、原作ではウミウシ似なのでウミちゃんということになっている。それでは引き受ける女優さんがいなかったかもしれないね。
本レビューのタイトルの二本指だが、須藤がオムライスを作っているとき青砥に向けて示すもの。真意は映画では説明されないが重要なポイントです。ちゃんと知りたい人は原作読んでね。
切ないけれど、温かい気持ちになる作品
制作発表から、楽しみにしていた。
50代、同世代。
主人公や取り巻く人々の人生、
あるある、わかる。
レジのパートで、独り身の、
あまりお金を使えないから、家飲み。
青砥が宝飾店を覗き、「高い」と呟く。
成功した、キラキラではない。
庶民の現実だ。
みんな、精一杯生きている。
意地を張っても、
ひとりでは生きていけない。
繋がりに支えられ、世話になる。
焼き鳥屋の大将、塩見三省さん。
あんな人がいてくれたら、
会いに行きたい。名演でした。
中学時代の淡い恋、
堺雅人さんや井川遥さんと再会し、
あんな素敵な大人の恋愛ができるか。
映画だから。
誰れかを思い、大切にしたい気持ちは、
いくつになったっていい。
素敵ではないか。
堺雅人さん、井川遥さん、
周りの役者人、皆さんのお芝居が、
とても素敵でした。
月のやさしさ
タイトルなし(ネタバレ)
変を承知で言うならば、可もあり不可もあり、というような印象。
堺雅人の演技は好き嫌いが分かれそうなところ。安藤玉恵演じる海野の罪深さが程よくコミカルで嫌々しく、とても良い。
また中盤、寝たきりの須藤の部屋で妹とお茶をするシーン。ようやっと慣れ親しんできた須藤の部屋だが血縁者が加わった瞬間、まるで青砥がすっかり外様になってしまったようで、まったく別の部屋のようで、精神的に取り残されてしまう。あのショットはなかなか良かった。
イタい。との評価が散見されるが、土井さん或いは坂元さんが表現するのは、皆がいつも胸中に秘めているイタさと現実とのギャップ、その間の歯痒さだ。イタくて上等、そのリアリティがどの程度作中の表現で担保されているのか、個人的にはそういった見方が求められると感じた。
星3以上の評価は構わないけども、それより低い評価はして欲しくない、そんな作品。
気が付かなかった恋
他人事じゃない、平凡な場所?にもある事なんじゃないかと、平場の月を見て思った。
井川遥さんのサバサバした可愛い女性と同級生との再会、そして、思いもよらぬ健康診断の結果から回復からの再発、そして最後が切なくて。
早くからの定期的な検診がいかに大切であるかということと、50代くらいまでの年代は特に進行が早く、若ければ若いほどあっという間に間に合わなくなってしまうんだなと思った。
中年になれば分かる
泣けなかった…泣きたくて鑑賞したのに
井川遥の演技が、とても良かった!
ただ、それだけの映画。堺雅人が演技がくさすぎる…泣かせて欲しい所、肝心な所で泣かせてくれない。逆に笑わせようとしてるのか?と思いました。最後の号泣するシーンも泣いてると言うより笑ってるのかと思わせるほど。
シリアスな泣かせる映画にこの役者向いてない。
井川遥の熱演が良かっただけに、非常に残念でした。
ラストの余韻から逃れられない
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